知らなかったことを教えてもらえてありがとうの気持ちになった~ネクストゴールウィンズ~
「ネクスト・ゴール・ウィンズ」の予告の段階で、コメディ要素が多いようだから気楽そうで良いなと思っていた。夫も「がんばれ! ベアーズ」みたいなスポーツものは面白いに決まっていると乗り気。「がんばれ! ベアーズ」は、弱小少年野球チームが強くなっていく1970年代の映画。ドラマもある。
「ジョジョラビット」や「マイティ・ソー バトルロイヤル」の監督をしたタイカ・ワイティティの監督作品だし是非とも映画館に足を運ぼうと思った。
*多少ストーリーを追ったネタバレあります
米国領サモアのチームは世界最弱で、1ゴールすら取れなかった。
そこに、アメリカのチームで監督をしていたトーマス・ロンゲンが監督兼コーチとして再建をまかされることに。
たった1ゴール、そして1勝を目指してトレーニングを始めるわけだけど、コメディだしまあきっと上手いこといくとか悠長に観ていた。
プレーの下手さとかより会話にコメディ要素が多くて、タイカ・ワイティティが楽しみながら作ったんだなあと笑うけど、中身は人権を意識して丁寧に作っているのではと何度も感じた。
トーマスが白人であることから、選手たちとの壁があったのが一番大きな問題。そんなところからも白人の監督が皆に尊敬されるような存在に見えないよう気を使っていると感じる。
彼はサッカー連盟からクビか、サモアでの監督かとせまられ、単身で渡ったものだから孤独でもあった。
娘からの留守電が心のよりどころなんだなと思っていたけど。
とにかくね、サモアの「ファファフィネ」の存在にびっくりする。第三の性として、そういう単語がずっとあったことに。それはつまりずっとその存在を受けいれられていたわけで。
LGBTQを認めていこうなんて、これからの世界の話じゃなくて、すでに存在していた。これが一番の衝撃だった。文明の発達ってなんなんだ。
島の人たちののんびりさ加減とか欲が少ない感じとか、こんなで大丈夫かと最初は観ている側も思ってしまう。だけど彼らにだってゴールを入れてみたい、勝ちたい気持ちはある。卑屈になることに慣れきった気持ちを変えていくことが監督の役割で、「ファファフィネ」の存在を受けいれるのもまた監督の役割。サモアの暮らし方、考え方を受けいれて尊重していかないと、監督の言うことだって信頼しきれないよね。信頼し合ってからようやくチームが一つにまとまっていくわけだから。
「信頼」は試合でも大事だとわかっていく。
こういう映画って心のどこかで「そんなうまいこといくわけないやん。ファンタジーだよね」と思いがちなのだけど、実話を基にしている。1ゴールすら取れなかった過去も含めて。
ずっとあったかくて、終盤に胸がギュッと苦しくなる。救われるのはチームじゃあないんだよね。
「米国領サモア」の事情や人々のリアルな感情。そしてファファフィネの存在。私にとって知らないことだらけだった。
最後に家族みたいなチームの中で、実際に監督をまかされた彼のいきいきとした表情が映し出されると、心の底から温かくうれしい気持ちになった。