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夢の中のお別れの話って、意外と受け入れられるんだ
私自身だけでなく、家族も周りで親しくしている人も、霊感の強い人はいない。
そういった現象を信じている人もいない。やっぱり私も含めて。
義父の一周忌の頃に、夢の中に義父が現れた。
氷のケースに入っている設定で、海の中に沈められていっていた。怖い雰囲気はなく、儀式のようだった。たくさんの人たちがそうやって沈められていくのを、砂浜でさらに多くの人たちが見守る。
義父に対してイヤな思い出が少なくはない夫は、私の横に並んで黙って見守っていた。
起きてから詳細ではなかったけど夫に話すと、「もう良いって思えたんだろうなあ」と言っていた。意外と受け入れてもらえた返答に「今までは私たちを心配してたのかな?」と言ってみると、「僕のことが心配だったんだろうな」と言った。
実はそんな夢は二度目。
19年ほど前に、母方の祖父が亡くなった時にもあった。
4人の祖父母の中で、一番私を可愛がってくれた祖父だ。
可愛がってくれているんだと感じていたけど、思春期の頃は苦手でもあった。その後も苦手な時期を乗り越えられた気がしないまま、微妙な距離感を保っていた。ただ「やっぱり私を可愛がってくれている」気持ちは伝わっていた。
「娘の私には厳しかったおじいちゃんが、幼いかせみにはデレデレに優しくてびっくりした」と母はよくそんな風に言っていた。
私が大きくなってからも、アクセサリーをお土産に買ってきたり、着る服を褒めてくれたりした。
本当に結婚して良いのかどうか迷っていた結納の日の朝、「かせみちゃんは本当はどうしたいんだい?」と、気持ちの確認をしてくれた。
認知症の症状が強まってきても、「かせみだよ。わかる?」と言うとしばらく顔をのぞき込んだ後、「ああ、かせみちゃんか! よく来たね!」と嬉しそうにしてくれた。
大手企業に勤めたけど、目立たず、地味に働き、油絵が趣味。得意分野も考え方も理系で、授業でついていけない私に物理を教えてくれた。それでも私には結局よくわからなかったけど。
軽率なところも人に流されるところもなく、独自の感性を持ち、家の中でもベレー帽や毛糸の帽子をかぶっていた。
亡くなった時に、大好きな毛糸の帽子を棺に入れてもらっているのを見つけて、思わず「おじいちゃん」と呼びかけた自分の声を聴いてから、何も声が出なくなった。
数日実家にいたけど、在宅で世話をしていて疲れていただろう祖母や母を心配しつつ札幌に戻った。遠いから、その後も度々は宝塚に来れないなあと思っていた。一周忌とか。その後も。お供え物を贈るくらいになってしまうだろうか。
でもある日、祖父が私の夢に出てきた。
夢の中の祖父は、あまり見たことがない黒いスーツを着ている。
私が生まれた頃と、帰国した頃に住んだ家。祖母が書道教室を開いていた二間続きの和室で、黒い服を着た人たちがたくさん集まっていた。祖父が座布団にも座らずに、祖母と母を前に正座して両手をつき、
「大変お世話になりました。ありがとうございました」
そう言って頭を下げている。
祖母と母は何も言わず、並んでやはり正座をし、静かに頭を下げていた。
ああ。お別れだ。
泣きながら目がさめた。
しばらく気持ちを消化するのに時間がかかり、翌週、母に電話をした。
すると前の週、祖父の四十九日だったのだと知った。
そして母が言った。
「かせみのところにおじいちゃんはやってきてくれたのね。おばあちゃんと、夢に出ないね~なんて話していたのよ」
私のそんな嘘みたいな話を、母が受け入れてくれたのが嬉しかった。
義父も祖父も、亡くなってからも皆の中に生き続け、夢の中だけでも「会う」を大切に思うんだなと、人の思いを知った出来事。
祖父が亡くなった翌年、祖父の誕生日近くに理系頭の息子が生まれた。ただ単に夫に似ているんだろうけども。
息子には、祖父の話をよくしている。
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