お菓子作りを試行錯誤したくなる〜ブリティッシュベイクオフ〜
料理を作る時、どれほどレシピを見て作るだろう。
縫物をする時、どれくらい作り方を参考にするだろう。
昔なら本や雑誌を買い、広げながらその通りにする。今ならネットがあって本当に便利よね。何を作るにしてもバリエーションが豊富で、料理など勝手にレパートリーが増えた気分になって楽しい。
服を作るのは家庭科の時間に機会があるくらいで、あまり好きではなかった。手芸も、人目を気にしないガサツな縫い目だったし。
20代半ば頃から縫い物が好きになった。パッチワークや簡単な刺繍で色の組み合わせを考えたりチクチク手先で縫ったりは楽しく心が休まる作業。最近すっかり遠ざかっているからまた楽しみたいなあ。
お菓子作りは10代の頃に好きでよく作ったけど、うまくでき上がるコツは「書いてある通りに作ればうまくいく」のだった。
書かれてある通りに正確に測り、写真が載っていれば同じような状態にする。
料理はいい塩梅に自分で勝手にアレンジしてしまっても、それでなんとかなるからね。そんなに抜群に素晴らしいものを求めなければそこそこ美味しい物ができあがる。
でもお菓子ってあからさまに納得いかないことがある。
それは私にとって、「書いてある通りに」しなかった時。
で、その「書いてある」がおおざっぱなものしかなく、腕を競うのが「ブリティッシュベイクオフ」というイギリスの番組。
私はEテレで毎週木曜10時から30分観ている。
実はずっと好きで観ているのだけど、なかなかその熱量を書き伝える機会がなかった。
日本では1シーズン10週ずつで、集まった完全なアマチュアの12人の中からトップに輝く人を審査で決めていく。
ファーストチャレンジ、テクニカルチャレンジ、ファイナルチャレンジの3回の課題を1つのお菓子で挑戦。1つ1つ審査はあれど、3回終えるごとに1人が脱落していく。
今はシーズン4が放送されているけれど、現地ではシーズン14まで来ているんですって。
私が特に好きなのは、番組をドラマチックに仕上げていないところ。
伝わるのは悲壮感だとか必死さとかではなく、その作品自体の出来だから、観ている側も気楽。
同じくイギリスのコンテスト番組「ソーイングビー」についても少し書いておく。「ソーイング」というだけあって、出来上がるのは服。洋裁の腕を競う。
今は同じくらい好きな番組だけど、最初はこちらの方が好きで熱心に観ていた。
最低限のヒントから、ルールの範囲内で独創性のある服を作り上げていく。
だいたい時間はギリギリで、皆が必死に作っていると伝わる。焦ったり失敗したりしつつ、ポイントを抑えるようがんばる。未完成なものは一番評価が低い。
でも時間内にそれぞれの服が仕上がっていく様子は楽しい。
ファッション好きな方は是非観てほしい! 途中で「この人はこんな風に仕上がるのを想像して作っているのですよ~」のイラストも素敵。仕上がりをワクワク楽しみにさせられる。
「ソーイングビー」の1シーズン分が終わると別の番組が何週かあって、その後「ブリティッシュベイクオフ」。と、交互に放送される。
どちらも出てくる人たちの個性は少しは紹介されていくけど、回を重ねて様子を観ていればこちらに伝わってくる。
男女入り混じり、年齢も様々。個人個人の家庭も、仕事の有無、背景はそれぞれで、LGBTQや人種にも配慮があるように思われる。ことさら何かにスポットを当てることもなく、普段の生活などの紹介は、ごく簡単。その辺りも過剰な演出もなく、湿っぽくないのが観ていて心地良い。誰かの子供だったり、誰かの親だったり、誰かの友人だったり、誰かの恋人だったり、誰かのパートナーだったり。
感動がほしいわけでも、過度にヒリついた空気感を期待しているわけでもないのだから、これで良いなあとつくづく思う。
和やかな雰囲気はあるけれど、時間内にどうにか仕上げなくちゃの緊張感や焦りは伝わってくるし、審査もフレンドリーでありながらなかなか厳しい。
そして「ベイクオフ」でも「こんな風に仕上がるはずですよ~」のイラストがいつもとても可愛くておいしそう!
初めて観た時は、「アマチュアにしても、何故上手にできないのか」と思っていたけど、細かな分量やタイミングが書かれていないと知って「そりゃあ難しいわ!」とうなった。
どのタイミングで粉を入れるか。
どの程度混ぜるか。こねるか。
硬さや柔らかさは。
どの大きさが一番適しているか。
オーブンを何度で設定し、何分焼くか。
どの程度冷ますか。
そしてどんな見栄えに仕上げるか。
出来上がるまでの時間がギリギリなので、時間配分を間違えると膨らみきらなかったり、ねり足りなかったり。とにかく皆焦って、普段通りにすらいかない時もあるようだ。
それぞれのアイディアで、何を入れて仕上げるかで焼き加減がちがうし、かかる時間もちがう。
見た目の独創性も求められる。あまりに無難なものだと評価も高くない。でも見た目だけにとらわれて焼き方や味が今一つだと、厳しく言われる。
その辺りのセンスが問われる。美味しそうに見えるか。基本のレシピに、考えたアイディアが合うか。フルーツを入れるとして、そのフルーツから出る水分も、自分で考慮に入れながら作る。それによってスポンジの膨らみ方や食感も変わってくる。
皆、頭を抱えながら自分なりの考えで挑戦してみる。
それにしてもケーキやパンの種類がたくさんある。日本ではあまりなじみのない物も知る。そういった物が当たり前にあるんだと知れるのも面白いし、それぞれの歴史についても番組内で教えてくれて興味深い。
挑戦する人によって得意不得意もある。ずっと上位の人もいれば、最下位にならないように気をつけながら、回数を重ねていくうちに腕が上がっていく人もいる。
ところでウチでは吹替えで聴いていて、「ベイクオフ」ではポールの「味は悪くない」と、「ソーイングビー」ではエヅメの「私は好き」が、夫と私のモノマネポイント。
日常の思わぬシーンで使うと楽しい。
私も最近挑戦したみたケーキがあった。noterさんの紹介していた記事からで、分量以外は大ざっぱな記述。簡単だし、どう作っても大失敗にはならない物だった。
でも出来上がったものが「大成功!」なのかどうかがわからず、何度も挑戦する羽目に。それは多分、「細やかに書いてある通りにすれば」必ず正しく美しく出来るようにしか作ってこなかったからなのよなあ。独創性を追求したこともないければ、良い塩梅を試してみたこともなくて。
それほど細やかな見本がないまま何度も作ってみると、一回一回、出来上がりが違って面白い。いつかレポートを書けると良いなあ。
雑多に課題を与えられ、様々なジャンルのケーキやパンに挑戦しているベイクオフの人たちを、改めてすごいなあと思う。
時には厳しいことも言われるけれど、ベイクは苦しく厳しい修業ではなく、楽しくて大好きなのだと皆から伝わってくる。
Hulu、Amazonプライムなどで観れるようだけど、木曜の10時、私はお風呂など寝る前の支度をできるだけ全部済ませて、テレビの前にすわる。
オリンピックは終わったけど、こちらは今晩、約1ヶ月ぶりに再開。今シーズンは残り4人で準決勝。