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そこそこがんばっているのね

 リモート画面で見える息子の肌が荒れまくっていて、話が頭に入ってこない。
 
 「ごめん。肌が心配すぎて雑情報になってる」
 
 息子は肌が弱くて。マスクのせいもあるのかな。いや幼いころから、疲れて免疫力落ちてくるとまぶたも含めて顔全体がガサガサになってくる。
 この後、体調くずすんだろうなあ。

 心配だ。やっぱり話が入ってこない。

 試験期間が一段落したと言っているので、多分勉強したしないに関わらず、息子にとってストレスだったのだろう。昔からいつもそう。

 でもさ、一人暮らししているんだ。
 テスト期間中だろうが、そんなストレスかかろうが、なにか適当なご飯食べて、お風呂入って、自分で起きて、自分で使う物を補充するために買い物して。
 話しながら時々立ち上がってウロウロすると、足元をひょいひょいと動かし何かをまたいでいるのがわかるので「なるほど。床には色々落ちているんだね」と言う。それに対しての返答はないので、その通りなのだろう。
 でもパソコンの前からいなくなったと思ったら、洗濯物を持ってきて「今から干すね」と言ってまた画面から見えなくなる。

 いやあ。エライよー。大学生の頃、家事を時には手伝ったりしたけど、気まぐれだったもんなあ。息子はやらなければならないからやってるんだよね。
 エライエライ。よくがんばってる。いろんな物も食べてるんでしょ。

 と言うと、急に無言。で、首を横に振る。

 アラ。
 そう。
 同じような物食べてる?

 と聞くと、首を縦に振る。

 そっか。
 じゃあ同じような物を食べて、よくがんばってるよ。

 と笑うと、また横に振る。まだ違うらしい。

 ええと。同じような物を食べて全然がんばってない?

 今度は「心外だ!」と言った風に首をブンブン勢いつけて横に振っている。

 えええ……。難しいなあ。全然ではないのか。そこそこがんばってる?

 うむうむ。と縦に振る。

 なんだよ。じゃあ同じ物を食べてそこそこがんばってるのか。
 息子クンは、同じような物を食べてそこそこがんばってるよ。

 と言うと、ウーンと首をかしげる。

 まだちがうんかい。
 微妙なところね。もっと本当はがんばらないといけないなあ。がんばれるのになあ。やらないといけないけどやらないなあ。……って感じ? と聞く。
 まあまあまあといった表情でうなずいている。

 じゃあそれで良いよ。息子クンは日々同じような物を食べてそこそこがんばってるね。エライエライ。

 ……。
 なんだこのやり取り。

 でもだいぶ正確なのだろう。息子がうまくできようとできなかろうと、母さんは見守るよ。ずっとそうだった。心がけなくてもそうするしかなかった。息子は根が生真面目だからね。失敗したってうまくいかなくたって良いんだよ。笑ってまたやり直したり、あきらめたりするのも今後につながる。息子が今後を自分の足で歩む時に、少しでも気持ちがラクなようにね。悩ましい将来なのだろうけれど、楽しいことだっていっぱいあるはずだから。

 「まあそれでいいんだよ」と伝えながら笑う。

 肌のことだけはちょっとうるさく言っちゃった。だって画面から見える情報が大きいからね。痛々しくて。



読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。