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お母さんたちだって、それぞれにがんばってるよね

 自分の子供に何かをさせるとかさせないとか、親が決めていくのっておかしな話だよなと思っていた。でも子供に何かしらの期待をしてしまうことってあるみたいだ。
 それはすっごく小さなことから。ほぼ無意識に。いつの間にか。気づいたら。
 できるだけ子供に親の意向なんか感じさせてはいけないと強く思うのに、肝に銘じていたのに、いつの間にかアドバイスめいた言葉をかけてしまう。自分はこんな風に対処したとか。こうやって乗り越えられたとか。自分だってこんなに大変だったとか。自分や知っている人の話をしてしまう。それが子供の心を傷つける。
 そんなことが聞きたいんじゃないよね。自分のそのままを受け止めてほしいだろうにと反省する。「またやっちゃってるよ私」と頭を抱えたくなる。
 
 で、自分が子供の側として、親に「こうあってほしい」と思ってしまうのもまた自然な気持ち。でもそうはならない。親の側からだと、そうじゃない親でごめんねと思う。

 親に対する子供。子供に対する親。

 親側が自分自身をコントロールして子供の気持ちに応えてやることが、子供の心の安定を保つのだけど、時々それができない。

 親同士で自分たちの子供について話すことはよくあるけれど、互いに本当に親身になって話せる間柄なんてそんなにいなくて、だから貴重。
 それでも私が、息子について話した時に、友人の一人は「自分の子はうまくいっていないから」と話さない内容があったとわかった。うまく対応できない自分について話すと初めて「実は私も」と打ち明けてくれて、もっと早く言ってくれたら良かったのにと思う。私が聞くにふさわしい態度をしてこなかったのかもしれないと省みる。

 その友人には、男の子と女の子がいて、娘さんとは順調だったのだけど、「親子関係を学びたいからおススメの本を教えて」と言ってきた。急に離れたように感じて寂しいらしい。ついついコントロールしたがる自分に少し気付いてきたのだと言う。
 順調だった娘さんはもう20歳超えていて、すっかり成長してうらやましくさえ思う母娘関係だった。それでもやっぱりそうやって母親として悩むんだな。

 「(娘に対して)本当はそう言わない方が良いんだろうけど、どうしても言っちゃった」という言葉は、確かに「言わない方が良いんだろうけど」と思う内容だった。それでも言っちゃう気持ちもまったくわからなくはない。 その本が彼女に合うかどうかはわからないから「これを糸口に他に自分に合う本を探すのが良いと思う」と勧めるのは一冊だけにした。

 みんな葛藤している。

 私たちは、子供が生まれたら突然母親として、様々に母親「らしい」ことが要求される。

 母親なら。母親なのに。母親だから。

 でも友達同士で話していたら、母親業をやっているってだけで、若い頃からの延長上にいる。私たちは私たちのままなのだ。
 どんなことをして暮らして。
 あんなことやこんなことを感じて。
 考えて。
 何が好きで。何に夢中になって。
 こんな性格で。
 どんな人間関係を築いていて。

 でも子供がいるから、母親として責任を負って頑張らなくてはいけない。
 そりゃあ時には、わがままも言いたくなるし、自制が効かない時だってあるし、一人になりたい時だってあるし、泣いて後悔するようなことだってある。子供のことをどんなに考えていても保身に走りたくなることもあるし、感情が爆発することだってある。

 そんな自分が母親「らしく」ないと悲しんで苦しんで、うまくやれない自分がイヤになる。
 
 子供にとってはたった一人の母親だからね。できるだけ私たちは母親を演じていなければならない。
 自分の子供を想う気持ちは他人ではなかなかカバーできない。もちろん子供にとって母親の役割や父親の役割が他の人だってかまわないと思っている。それに周りに助けてもらうのもまた親なのだし。
 今は、母性を周りに押し付けられて突然母親の役割を与えられ、演じ続けている母親に対しての話ね。


 親だって不器用なんだ。人生一周目なのだから、何もかも初めて。正解もないから対処などわかっているわけじゃない。完全に感情をコントロールできるなんてロボットじゃないんだし不可能。自分の性格もあれば、子供の性格もちがう。どこかが似ているからって自分に当てはめても、子供には子供の気質も性格も意志もあって自分とはちがう。いやだと思うタイミングもちがう。
 わからないことだらけじゃないか。
 上手じゃなくたって、うまくいかなくたって、子供が幸せになってほしい気持ちで私たちはがんばっているのだよね。
 
 周りの母親を見ていてつくづく思う。
 本当にみんなよくやっているよ。私もね。



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かわせみ かせみ
読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。