内装工事を発注する(開業3ヶ月前)
こんにちは、瓦.Tokyoの西田です。
無事融資が受けられる事が確定したら、もう後には引けませんから、勤め先の上司に改めて退職の旨を伝えるとともに、内装工事を発注します。
相見積もりの結果
相見積もりの金額については、以下でご紹介した通り、一番良いご提案でもなければ、一番安いご提案でもない業者さんに決めています。
決め手は、”内装工事以外”のところでした。
私は飲食業界のツテが殆ど無く、例えば食材やお酒などを卸してくれる業者さんとの付き合いも全くない状態で創業しているのですが、最終的に決めた内装業者さんは、そういうツテを紹介してくれるだけでなく、例えば酒屋であればビールメーカーの協賛に関する交渉なども、強気に行ってくれました。
システム開発の仕事をしていた時も感じていましたが、上流を握ると強いですね。どんな飲食店であれ、初めて開業する人は不動産→内装→食材仕入れという順で業者を探す人が多いと思うので、内装業者の立場で、飲食店オーナーが食材仕入れに困っていれば、そういう食品卸の会社を紹介する機会は多いのだろうと思います。
酒屋や食品卸の会社からしたら、内装業者に如何に紹介してもらうかは重要で、下手な対応は出来ない訳です。実際に、私のケースでは、ビール会社の協賛に納得出来ない内装業者の担当の方が、交渉(というか鶴の一声?)の末、酒屋としての協賛を追加で勝ち取って頂きました。
『その程度(の協賛)だったら、他の酒屋に頼むからもう良いよ!』
と電話で言っているのを横で聞きましたが、これは私の案件だけでなく、今後の案件を失う可能性がある訳で、酒屋さんからしても、変な対応は出来ないでしょう。※協賛については、後日詳細をご紹介予定です。
ちなみに時系列としては、相見積もり取得した段階では、どの業者さんに発注するか決めてませんので、一旦見積額が一番高かった見積をベースに、融資準備に取り掛かりました。だいたいどの業者さんも、厨房機器も含めて見積をくれますので、一旦はその内容をベースにして良いと思います。
内装屋さんの見積もりスタンス
一言で内装屋と言っても、見積を出す時のスタンスは様々です。
私はこれまで、4店舗、3社とお取引をして来ましたが、特に「設計」と「施工」を分けて考えるか、一緒に考えるかで大きくスタンスが違います。
一般的に、内装工事に限らず何かを製造・制作する時は、①「設計書」を作ってから、②設計に基づいて「製造・制作する」と思うのですが、「設計」という作業もその作業粒度に応じて、何段階か存在します。
内装工事の費用見積を出すにあたって、ざっくり店内のレイアウトイメージ(厨房の場所や広さ、テーブルや椅子の数)も見積もりと一緒に出てきますが、ここの設計書は、「超粗々の基本設計」レベルです。
この概算見積の提示時点で、「設計〜施工」まで全部含めて「◯◯万円くらいです!」という業者さんと、「設計費用はXX万円で、施工費用は設計内容次第です」という業者さんがいます。
普通に考えれば、後者の業者さんが言ってる事が理に適っています。これから細かい設計をしていく段階で、正確な施工費用が算出来る訳が無いのです。それでも、発注する側からしたら、前者の方が安心出来る訳です。実際、私は最初の3店舗は前者寄りの業者さんに発注しています。
私の個人的な印象としては、前者は商売上手。後者は(言い方悪いですが)バカ正直な職人さん。という感じでしょうか。
後者においては、施工費用は設計が終わらないと出せません!では、流石にプロとして失格な気もします。概算でも出して頂かないと、事業計画も立てられず、融資の手続きも進みません。
ただ、もし逆の立場だったら、どうでしょうか。契約後、発注側からどんなリクエストが来るかも分からない中で、総額をある程度握らなければならない場合、見積には相応のバッファを積みませんか?それは余計なコストになってしまう可能性もあります。また、そのバッファすら超えるようなリクエストに関しては、お断りするような対応を取るしかないかもしれません。
なので、結論としてはその辺のバランスの取れた業者さんをオススメします。「総額は"概算で"◯◯万円、デザイン・設計費用はXX万円。総額が◯◯万円に収まるように、これから要件を整理していきましょう」と言ってくれると、安心して発注出来ますね。
発注前に要件を整理する
各内装業者さん、ご提案の内容は様々ですが、施工まで含めた概算見積の精度を少しでも高める為に、見積もり時点の「超粗々の基本設計」段階の要件を少しでも整理しておく事は大事です。要件が不明確であればあるほど、"バッファ"は積まれてしまいます。これは仕方の無い事です。
実際に私が茅場町本店創業時、工事を発注するギリギリまで悩んでいたポイントは、以下の通りです。
①厨房の床を上げるか?(下げるか?)
居抜きで契約した物件の厨房スペースは、床に防水のタイルが貼ってあるだけの状態でした。客席と厨房の床が繋がっているというのは、スタッフが行き来する際に転倒のリスクが少ないというメリットがありますが、一方で床に水を流したりする事が出来ません。
蕎麦屋をやるにあたっては、茹で麺機からあげた麺の水を切ったりしますし、清掃時にも水を流して厨房内を清潔に保ちたいと考えていたので、『床を斫る(はつる)』、つまり床を掘って、コンクリートで配管を埋め直すつもりでいました。
ところが、これは私の確認不足だったのですが、契約した物件(1階テナント)の地下には貯水タンクがあり、床を掘っていくと、貯水タンクを破損してしまう懸念から、ビル側から床を削る作業がNGと言われてしまったのです。床を掘り、コンクリートで配管を埋めることで、客席との段差を極力減らしたレイアウトにしたかったのですが、それが出来ないとなると、厨房側の床を上げて、その中に配管設備を埋設する事しか出来ません。
結果的には、この程度段差を作り、コンクリートで固めています。
営業開始して約8年、今のところ転倒事故は発生していません。高温の瓦を持ち運ぶ作業がある為、安全第一で日々の業務を行う様、従業員には指導徹底したいと思います。
また、これは業者の施工不良だと思っており、今となっては当時の業者さんは「安かろう悪かろう」だったなと不満に思うポイントの一つですが、厨房内の傾斜が不十分で水が排水溝に流れていかず、溜まってしまう箇所があります。こういう点も、厨房機器を搬入してからだと修正が大変なので、コンクリートが固まった段階で、よくチェックしましょう。
②グリストラップは置き型か、埋め込み型か?
さて、飲食店にはグリストラップの設置が義務付けられていますが、これには床に据え置くタイプと、床下に埋設するタイプの2種類があります。居抜き前の設備は置き型で、結果的には新しい置き型のグリストラップを導入していますが、当初は清掃の容易な埋設型を導入したいと考えていました。
これも、①に関連して、床を斫る事が出来れば、深く掘って埋設していたと思いますが、グリストラップを埋設するとなるとそれなりの高さが必要になり、床を上げる高さに影響します。私の場合は、従業員の安全を優先し、床を上げる高さは最低限に抑えたかった為、グリストラップの埋設は断念しました。
考慮不足だったポイント
また、悩んだ点ではなく、考慮不足だった点としては、以下のようなポイントが挙げられます。
①吸気/排気について
「内見と確認ポイント」でもご紹介しましたが、吸気/排気、換気扇のパワーなど、空気の流れに関する考慮が圧倒的に欠けていたと思います。
まず、既設の換気扇のパワー自体が圧倒的に不足していました。この辺の設計は、「(厨房)設備屋」というプロが存在します。こうした設備屋さんに設計のチェックをして頂くとなると追加のコストがかかるので、個人が最初に開業する規模の飲食店であれば、そこはコストカットして良い気はしますが、内装屋さんとよくコミュニケーションを取ることをお勧めします。
また、その貧弱な排気に対して、吸気ポイントが無いのです。本来排気する客席のファンが逆回転して吸気してしまっているような状況で、店舗出入口のドア、ビルと繋がっているドアなどからのすきま風が強く、冬は店内の空調に非常に神経を使う羽目になってしまいました。
②店内のレイアウトについて
テーブルのレイアウトは、4席×2卓、2席×4卓、カウンター8席、計24席という設計を内装業者のデザイナーさんからご提案いただきましたが、結果としては、詰め込み過ぎたなと思っています。
2席×4卓は、1卓を独立して使うにはテーブルが小さすぎるのと、テーブル間の間隔が狭すぎる(出入りできない)ので、4席×2卓とするのが現実的でした。
また、カウンターも幅190cmを4人横並びで使うには狭すぎる為、これも片面3人がけのカウンターとして使用しているのと、もう片面は、手前に人が座ると奥の人が出入り出来ない状態になる為、客席としての稼働は諦め、物置きスペースとして使用していました。
つまり、4席×4卓+カウンター3席の、全19席のお店として営業しているのです。2名様でも、テーブルご希望であれば、4人席に通すしかなく、席の回転率からしても、効率が悪い状態になってしまいました。
また、従業員スペースが無く、特に女性スタッフの着替えなどの問題が発生しました。契約した内装業者さんには、トイレで着替えさせれば良いよ!と言われ、当初は小さな店なんて、どこもそんなもんかな?と思い、提案内容にGOを出しましたが、今では違うなと思っています。
※結果的には、ランニングコストはかかっていますが、近くに着替えスペースを借りる事になりました。
素人であっても、経験者であっても、多かれ少なかれ考慮が足りなかったりする事はあると思います。想定通りに行かない事も多いです。なので、最初からガッツリ初期投資するよりは、徐々に手直ししていく、というやり方でも良いのかもしれません。
実際私も、オープン半年以内に2回、追加工事をしていますので。。
次回は、工事の過程を写真付でご紹介したいと思います。
瓦.Tokyo 西田