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第51回「ラオス山村における生存基盤研究―日常と非日常の世帯間ネットワークー」(福島直樹さん)

第51回かわきゅう研究会(@キャンパスプラザ京都)は2024年2月6日(火)、「ラオス山村における生存基盤研究―日常と非日常の世帯間ネットワーク―」のタイトルで、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科の福島直樹さんに発表を頂きました。

参加者は会場が9人(報告者含む)、オンラインが2人で、報告とその後のディスカッションを計2時間ほど行いました。

発表は、ラオス山村部民族モンを事例に、日常/非日常の生存基盤維持のための具体的なフィールドデータに基づき、モノ、食料等の世帯間貸借の特徴を述べるものでした。

移動を基本とする調査対象は、従来の生存基盤研究およびネットワーク研究では汲み取ることが難しい、生業、生活空間、自然資源上の条件があります。こうした諸条件を詳細に説明された上で、主食とする米に関わる生活用具や労働力の日常的な貸借のみならず、世帯構成員の死や養育の必要性、飢餓といった非日常的な出来事に遭遇した際の世帯間ネットワークの在り方を、頻度、地域的な分布から鮮やかにデータ化されていました。

とりわけ、経済、氏族、世帯構成員で分類を試みたところ、ネットワークの多寡や頻度に一定の傾向がみられたことは、村落研究だけでなく、当該地域研究として重要な一次データでした。

議論とデータのバランスがよく、さらに明瞭で明解な発表によって、会場での質疑も、予定時間を超過するほどのたいへん充実したものとなりました。

会場からは、主に移動民、クラン、規範といった文脈から、提示されたネットワークの解釈が可能かといった意見が寄せられました。また、土地利用と分配の在り方、栽培米の種類、食事体系、近代国家の介入など、当該地域の農全般に関する質問も多数挙がり、それぞれの質問に対して有意義な回答を頂きました。

今回の発表内容は、すでに博士論文に纏められた内容でありましたが、村落研究においてたいへん発展性があり、関心が高いものであったことは、疑う余地がありません。

文:深谷拓未

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