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冤罪から始まった悲劇~『幻夏』(太田愛)
以前、書評を書いた『犯罪者』の続編に当たる小説です。今回もおもしろくて一気読みでした。太田愛さんの『幻夏』。
1、内容・あらすじ
前作で活躍した3人が再び主人公です。刑事の相馬、テレビ局を辞めて興信所を始めた鑓水、その助手を務める修司。
話は23年前に遡ります。
小学生時代、相馬には「尚」という親友がいました。
尚の弟の「拓」も一緒にいつも仲良く遊んでいたのですが、ある日尚が川岸にランドセルを置いたまま、失踪してしまいます。それっきり尚の行方は分からずじまい。
しかし、23年経った今になって、尚の母親が鑓水に「尚を探してください」という依頼をしてきます。
別の少女失踪事件の捜査中だった相馬はそれを知って驚きます。これは一体何の偶然なのか?
そして、23年前の尚の失踪と、現在捜査している少女失踪事件に繋がりがあることに、3人は気づきます。そこには驚きの真相が隠されていました──。
2、私の感想
『犯罪者』の続編ではありますが、話が繋がっているわけではないので、この『幻夏』から読み始めても十分に楽しめると思います。
登場人物が共通しているので、前作を読めば彼らの人物像がよりはっきりします。
謎が謎を呼び、糸が複雑に絡み合い、それが徐々に解きほぐされていく、スピード感ある展開は健在です。
「そういうことか!」「そうなのか?」「そうなるのか!」「と思ったらそういうことか!」「なんだと!」
と、ずっとこんな感じで驚きながらぐいぐいと先を読み進めてしまいます。
途中、新しいキャラクターが出てくるのですが、「えー!!」と驚き。とにかく驚いてばかりです。
今回のテーマははっきりと「冤罪」で、これが全ての始まりとなります。冤罪の名作「それでもボクはやってない」を連想しました。この映画もきつかった……。
胸くそ悪くなるような悪役もまた健在です。
最後の回想シーンが美しく、なんとも切ないです。思わず表紙を見てしまいました。
映画化してほしい作品です。
3、こんな人にオススメ
・現実を忘れたい人
優れた物語は、いっとき現実を忘れさせてくれます。
・冤罪に興味がある人
冤罪が生まれる構造がよくわかります。冤罪を生み出した側の本音も。
・『相棒』シリーズが好きな人
前作同様、物語の運び方がいい意味でテレビ的です。『相棒』などが好きな人は面白く読めるでしょう。