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山内朋樹
2021年8月29日 10:37
*以下は2021年7月28日の『京都新聞』夕刊「人文知のフロンティア」に掲載された記事です。 勝手口のドアを開けると小さなグミの木があった——四歳から十三歳の秋まで住んでいた、子どもながらに狭く古ぼけたように感じていた長屋状に連なった社宅の庭の話だ。 暑い夏の日にゆらゆらと赤い実が揺れるその木に登って梢に手を伸ばし、渋いばかりでたいして旨くもない果実を口に含んだ。グミの木の隣には小さな家庭