7月21日 また会う日まで元気でね
金曜の夜、ひょんなことから10歳下の元同僚を家に泊めた。23時前に合流して、1時過ぎまでラーメン屋で飲んでから「ほんと狭いよ〜」と招き入れた。
悪意がなくて無知なだけ、そして酔っているだけとはわかっていても、彼女が自分の恋愛の話をたっぷりした後、わたしの話を少しだけ聞いて「ねー!早く良くなるといっすねー!じゃ寝ますかー!おやすみなさーい!」と眠りについたのには、さすがに閉口してしまった。まあ若いからなぁとは思ったけれど、若いからといってわざわざ自分が傷つきにいく必要もないんだよなと苦笑いした。つまりは、泊めたことを軽く後悔した。
この日の夜は、彼女と会う前に「痛みレベル」を用いたコミュニケーションについて書いた。けれど、このコミュニケーションは「苦しんでいる人がいたら当然労わるでしょ」という互いの共通認識の上で成り立っているため、その考え方が通用しないとき(余裕がないとき、酔っているときなど)や、そもそも通用しない人相手には成り立たない……ということに、彼女の寝息を聞きながら初めて気がついた。なしなし!わたしが言ったこと、全部嘘でーす!嘘でした〜!
だいたいの人がそうであるように、わたしも深い関係値の友人より、ライトな関係の友人や知り合い、そしてなんとも名前をつけがたい関係性の人との付き合いのほうが多い。「今回こうだったから次もこうなるだろう」という認知の歪みを起こしたくはないけれど、後者の友人たちと会った際に、またこういう思いをする可能性があることだけは覚えておこうと思った。
今は癌になったことで、今までストレスに感じていたはずのすべて、本当にすべてが心からどうでもよくなって、おかげさまで非常にストレスフリーな生活を送らせてもらっている。生存に全振りしている今だからこそ、穏やかな日常を脅かす要素はできる限り排除したい。わたしと彼女は、かつては同じ船に乗り合わせていて、でも今は違う。ただ、航海の幸運を願っている。
てことで、元同僚よ!
もう会うことはないけど元気でね!じゃ👋
〜完〜
……なんてできたら楽だったのかもしれませんが。
土曜の朝に起きてそれぞれ化粧をしながら「まみさんが元気でいてくれたらなんでもいいです!」とか「昨日教えてくれた本読みたいです!借りパクとかありえないので絶対に返します!」とかとか、嬉しいことを言ってくれちゃったりするんですよね。ずるいって。
え、本?貸しましたとも。2回までは濁したけれど「本とか全然読まないんですけど、まみさんのおすすめなら読んでみたいです!」などと食い下がられて心が動かない人なんているの?そう、かわむらは年下に弱いのです。そしてアホほど単純でお人好しなのです。本当に。
明らかに間違っている(とわたしが思う)ことに対してはスパッと言えたり、あるいはノールックで距離を置いたりできるけれど、こういうさまざまな捉え方ができるシーンでどう対応したらいいのかは、この歳になってもよくわからない。こんなわたしが来年不惑?無理無理、惑う。四十にして全然惑う。未だに地図すら満足に読めないのに。
でも、また会うとしても「今」じゃないことだけはわかる。彼女を見送ってから届いた「昨日今日はほんとありがとうございました💖🙏😭」のメッセージに対して、実は若干つらさを感じていたことと、お互いに悪くないこと、なので次に会えるとしたら治療後かな〜という内容のメッセージを返しておいた。しばらく経って、すごく文面を考えたことが感じられる丁寧な謝罪があった。心苦しく思いながらも、わたしが元気になったらきっと会おうね(つまり今会うべきではない)という旨を返して、LINEを閉じた。消してはいない。我ながら呆れるけれど、この期に及んで、わたしは彼女のユニークさが好きなのだと思う。
難しいね、病人の人間関係。これも一つの学びでした。わー、疲れた!終わり終わり!
昨晩は気分転換に、先週土曜に会った友人が飲んでいるという近所のコリアンバーへ行った。マスターも友人も、もう一人カウンターにいた常連の女の子も、みんな韓国人だった。女の子とは以前一緒に飲んだことがあって、わたしの事情を又聞きしていたらしく、バッグにつけていたヘルプマークにそっと手を添えて「可愛いマークだね」と優しい声で伝えてくれた。
素直に嬉しかったし、なんだかんだ言っても、わたしは人が好きなんだよなぁと思った。飲みながら女の子に「今度ワイン飲みに行きましょ〜!」と誘われて「え、行きたい」と即答しながら、自分はこれからもまた似たようなことを繰り返すだろうと予感した。同時に、なんとかうまくやっていけるような気もした。困ったときは、自分を第一に考える。これが今回の学び。一人で生きている以上、わたしを守れるのってわたししかいないもんな。癌になってから、なんとなく、考えるのをやめたら死ぬような気がしている。わたしはすべてから学んで成長し続けなければならない。
本は、最近読了した、金原ひとみさんの『アンソーシャルディスタンス』を貸しました。わたしは本当にこの人の小説が好き。読んでくれたらいいな。