![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/53264053/rectangle_large_type_2_1ce7de9a364fb5a6ab80c0686ab31e41.jpeg?width=1200)
ハンターカブを買った日
今日は朝から雨。
「止むつもりはありませんよ」という確かな意思を感じる本格的な雨。
前々から、この日はSR(バイク)を見に行こう、
と言っていた日なのに。
念の為、
「今日は雨やなぁ」
雨だけど行くのかしら?と暗に問うたけど、雨くらいで夫の信念は揺るがない。
だよねー。
午前に仕事のミーティングを入れてしまった、うっかりすぎるわたし。
いささか夫の機嫌はナナメだったので、こんなときは何も言わず帯同するべし。
というわけで、
傘をさしながら、SRに会いにいこう。
・・・
わたしはあんまりバイクに詳しくないので、
ワクワク具合がわからないのですが、わたしでいうところの梅干し屋さんではないかなと脳内変換しました。
夫:わぁ〜、このバイクのデザインいいっすね。
(この梅干し、いい形ですね)
夫:ちょっと乗ってみてもいいですか?
(ちょっと試食させてもらってもいいですか)
夫:おぉ、やっぱりキックスタートがしぶいですよね。
(梅干しって、しそ漬けがたまらないですよね)
SRにまたがる夫は、とてもうれしそうだった。
こりゃぁ、ほかに検討しているバイクB、バイクCとは差がついたなぁ。
夫:ライトがハロゲンなのもクラシカルでいいっすね。
(梅干しのはいってる壺もセンスいいですね)
ピッカピカに磨き上げられているSRに目を細めていた。
ひとしきりSRをほめちぎり、
ホクホクした気分でバイク屋さんを後にした。
ちょうどお昼時なので、
近くにあった焼肉屋さんへお肉のランチ。
お肉を一枚ずつ焼きながら、
バイクの印象や乗った感じ、値段などを整理する。
ホクホクのついでに買う前に、
十分検討して、総合的判断をくだしてほしい。
SRは、かっこいい。
それはわたしも同感。
でも、ある一抹の不安がよぎる。
交差点のど真ん中で、エンストしたらどうしよう・・・
SRはキックスタート式のバイクなので、
文字通り、足でグンっと踏み込んでエンジンをかける。
その方式も、音の感じも、きっと感触も、
バイカー憧れの対象になるにちがいない。
しかし、うちの夫は・・・
「とっても気にしぃ」なのだ。
わたしは心配になった。
「よりによってこんなときにエンスト?!」にさいなまれないだろうか。
店員さんも、
「ゆっくり走って、景色を楽しむようなライフスタイルの方に向いてますね」
って言ってたじゃないか。
引き寄せの法則とかいうくらいだし、
一抹の不安も積み重なれば、リアルな不安をまねきそうだ。
ロースを一枚一枚焼きながら、
SRはかっこいい。SRはキックスタートだからいい。SRは・・・
SR×焼き肉。いい組み合わせ。
お会計時にもらったハッカ飴で口をさわやかにしながら、
さて、信号を渡ろうかと目線を先にやると、
バイク屋さんが。
店頭に出してある赤いバイクに吸い寄せられるように、近づいた。
夫:ハ、ハンターカブや!!!!
地域に根ざしているような、街のバイク屋さん。
「はい!どうもー」
奥から、この道40年でも足りないかもしれない、おじさんとおじいさんの両方の雰囲気を持つ店員さんが出てきた。
夫:この赤いハンターカブって売ったはるんですか??
店主:いやぁ、これは従業員のやつですわ
頭をかきかき、
夫:あー、やっぱりそうですよねー。これなかなか今売ってないですよね。
(焼き肉を食べた夫は饒舌)
店主:ハンターカブ、お探しですか?!
じつは、1台だけ、入ってきましてん。
(なんだか店主の人が、時代劇の商人に見えてきた・・・)
本来、夫はこのハンターカブをねらっていた。
でも、ハンターカブは、いま大変人気で、なかなかお目にかかることもできない。
以前も、バイク屋さんに見にいったら、現物もなかった。
入荷は未定。予定は未定。いつになるかハッキリ答えられないという。
そんな蜃気楼のようなハンターカブが、いま目の前にある。
夫:このカラーがよかったんすよねー、
(色までビンゴだ)
夫:これまたがっていいですか。
(顔のニヤニヤがマスクからこぼれ落ちる)
10分ほど、またがったり
写真撮ったり、店主さんとやりとりして、
「ほな・・・
ちょっと家で考えますー・・・いつものパターンやな、
・・・これ買いますわ」
(エッ?!買いますわ????買うの????買っちゃうの???)
どこにいったのSR、
やっと会えたねハンターカブ。
あんまり口にはしてなかったけど、
ものすごーーーーく深いハンターカブへの愛があったらしい。
憧れのSRに心はゆらいだけれど、
やっぱり、これだよねハンターカブ。
しっくりもきているようだ。
わたしは、夫がゴキゲンならば、That’s OK!
たまには仕事場に送ってもらおう。
ちょっと行きにくいパン屋さんとか、カフェとかに連れてってもらおう。
今日みたいな雨の日はお休みしよう。
こんどの晴れた日には、風を感じに行こう。
ハンターカブのある毎日が、これからはじまる。
いいなと思ったら応援しよう!
![家族ノート](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/28569737/profile_e8a4af2bbdb3428df7dbd23b886199f8.jpg?width=600&crop=1:1,smart)