大河「光る君へ」(43)輝きののちに
気がつけばもう今年もあとわずかなんですねえ。大河もいよいよ終盤に向けてのクライマックス感満々。望月が来週か……嘘だと言って(泣)。
それはともかくとして「源氏物語アカデミーレポ」はゆるゆる続きます!忘れてないからね!(←当たり前)
※「源氏物語を読みたい80代母」のための企画です。最終回までこの形式で続ける所存。思いっきりネタバレ全開なのでご注意くださいまし。
お喋り役の平安女房ズは以下:
右近(右)、侍従(侍)、王命婦(王)、少納言(少)
王「ねえ右近ちゃん?」
右「なあに侍従ちゃ……んじゃない、王命婦さん!珍しいわね、どうしたの?」
王「だって……ねえ?(モジモジ)今回の道長くんと行成くんさ……!これはもう、語らずにいられなくって私……!」
右「(いつもの王命婦さんらしくない乙女なリアクション)ど、どうぞ存分に語って?」
王「まず行成くんの『大宰府行きたい』おねだりね。そろそろ蓄財したいから、なんて大嘘でしょ。そんなキャラじゃない。道長くんも重々承知の上で(行成がそう決めたなら仕方ない)と大人の判断して『考えてみる』と答えたわけ。だけどその瞬間の行成くんの寂しげな目……!私は見逃さなかったわ」
侍「わっかるーーー!!!アレ、ちょっと亀裂が入ったカップルの『しばらく私たち離れた方がいいと思うの』なセリフよね!」
右「(侍従ちゃんいつの間に!)」
王「そうそうそう、それよ侍従ちゃん、さすが。道長くんと三条天皇との不仲をどうにもできない自分が歯がゆい行成くんなんだけど、一番キツイのは立場上道長くんへ苦言を呈さざるを得なくなったことなのよね。一をいえば十を知るくらいの絶妙な呼吸でともに動いてた二人はもう噛み合わない。この先もズレていくばかり……なら自分から離れてしまおうっていう悲痛な決断」
侍「行成くん乙女だよねえ(うっとり)。なのに隆家っちが横から大宰府行きかっさらっちゃって!いや眼が悪いのは気の毒だし気持ちわかるけど!」
右「(突然の隆家っち呼び)」
王「私、道長くんはかなりホっとしたと思うのね。隆家くんの訴えは心情的にも理解できるものだったし、よーしこれで晴れて行成を引き止められる!って内心ガッツポーズだったに違いないわ。そこからのあのセリフよ。
『行成は……俺の傍にいろ』
もうね、直後の行成くんの表情含めご飯三杯いけるエピだったわ……(頬を染める)」
侍「ダヨネダヨネ!!!アタシ、TVの前で叫んじゃったもん!!そういうことだってどゆことーーーー!!!破壊力ありすぎイ!!!」
右「アッハイ(耳痛い)」
少「(コソっ)そろそろ参加してよろしいでしょうか。どうにも入るタイミングが見つからなくて」
右「もちろんよ少納言さん。えーと、もういいかしら二人とも。なんか大宰府大人気の回だったわね、左遷の地とか言われてたのに」
少「亡き伊周さまは泣いて嫌がっておいででしたものね……結局一年もせず帰還されましたし」
王「そういう最果ての地扱いだったからこそ行成くんが希望したんだろうけど、隆家くんの方が性に合ってる感じね。彼にはむしろ都より居心地よさそう。きっと大宰府で活躍するわよ(←史実)」
侍「ねーねー、目の病を治してくれる薬師ってさあやっぱりあの人ー?イケメン薬師再登場ー?!」
右「周明くんだっけ。まさか、そんな偶然。少女漫画じゃあるまいし」
少「あら、まひろさんと三郎さんの出会いも、賢子さんと双寿丸さんの出会いも少女漫画そのものですし、あり得るかもですわ今大河なら」
王「そういえば双寿丸くんの『妹』発言!中々だったわね。賢子ちゃんを家族同様大事に思っていて、だからこそ線引きしなきゃいけないところはキッチリ引いてみせた。そこにあるのが恋なのかどうかは問題じゃないの。賢子ちゃんのことを第一に考えてのあの断り方、さすがはあのいとさんをも懐柔した人間力の高さよ。お見事。学問の素養は関係ない、真に賢い若者ね。是非とも無事に帰還して、イケメン薬師の話をまひろちゃんにも聞かせてあげてほしいものだけど……」
右「ヤダそこで止めないでよ王命婦さん。双寿丸くんに関してはどうしても信秀くんと重なっちゃうしフラグ立ちまくりだしで辛いんだけどさ……ともかく私が思ったのは、誰かさんの若い頃よりずーーっと大人だってことね。聞いてるか道長ア!」
侍「突然の道長くんdisりイ!(定期)」
少「基本的に道長さまはお変わりない気がいたしますわね。若い頃の情熱そのまま、思いもそのまま身の内に持っていらっしゃる。それ故に実資さまのような理詰めの実務家には危うく見えてしまうんでしょうね」
王「ビシバシ突っ込まれてたわね。そりゃ道長くんレベルの地位にいる貴族に下々の民の姿が見えるかっていったら見えないわよ。とはいえ、トップならば些事にかかずらわってないで大局的にものを考えてほしいし、動いてほしいわね私は。民の幸せのため~とか高邁な理想に目が眩んで、足元おろそかにしたら本末転倒もいいとこ。だいたい『幸せ』なんて実資サンの言う通り曖昧な言葉よ。絶対化も定量化もできないんだから。結局具体的には何をするの?って話。
『志を追いかける者が力を持つと、志そのものが変わっていく』
は蓋し名言よね。道長くんにどこまで響いたかはわかんないけどね」
右「そういや、倫子さまが遂に明かしたわね道長くんに。まさかあんな、お内裏様とお雛様みたいな並びの絵面でサラっと
『わたくしは殿に愛されてはいない』
『他に女がいるのかと疑って苦しいこともありましたけれど』
『今はどうでもいい』
『わたくしもいろいろ考えてはおりますのよ、だからたまにはわたくしの方もご覧くださいませ♡』
超絶攻撃力高い連射砲をキメてくるとは」
侍「最後のトドメのウフフフ、の威力ヤバかった!道長、再起不能?!ってかんじー!」
少「つくづく倫子さまが北の方で正解でしたね……器が違いすぎますわ、何もかも」
王「倫子さま好きだわ。いや好きだなんて畏れ多い、最上級リスペクトに値する。もはや神レベル。道長くんの『志』とやらも実はここに鍵があるんじゃない?まひろちゃんじゃなくさ」
右「次回予告がまたまた不穏だものね……」
侍「いやいや!騙されないわアタシ。次回どうなるのキャーとか思わせといて、サラーっとスルー!うん、きっとそれ!」
少「そうですわね侍従さん。大したことないんですわ……多分」
侍「(なんか不安になってきた)で、では来週をお楽しみにー!!!まったねーーー!!!」
いやはや今回もてんこ盛り過ぎて、女房ズのお喋りも当社比1.5倍増で止まりませんでした。来週の「望月」に向けていよいよ加速してるんですかね。ああ、寂しさがこの身を貫きまする。
それはともかく置いといて、道長と実資の議論には考えさせられましたね。「民を幸せにする」とはなんぞや。貴族階級として生まれ育った道長にしても色々考えた末の「政治安定化」に特化した動きなんだろうけど、そこに知らず知らず己の欲とか意地みたいなものとか、雑念入ってないか?そこちゃんと確認してる?幸せとか、フワッフワなワードに惑わされてんじゃねえぞというのは素晴らしいツッコミだと思います。
それに対してまひろの「上に立つ者」への理解の深さ。これは宮仕え経験以上に「源氏物語」という小説を書いたことが大きかったんではないでしょうか。世界を組み上げ人を生み出し、ものを語ることで、ただ観察しているだけでは得られないものを得たのでは。登場人物の存在や感覚ごと彼女の血肉になったと考えると「源氏物語・光源氏編」後の「宇治十帖」がとんでもなくリアルに寄ってるのも必然だな、とドラマを観て改めて実感した次第。
そして清少納言、ききょうが未だチラホラと出てくるのいいですね。前回は彰子の前で毒を吐いた清少納言が、憑き物が落ちたように穏やかに。脩子内親王という定子の忘れ形見に仕えていること、あの敦康親王も今や妻帯し平穏な暮らしを送っていること、それと何より時間薬なのかもしれませんが、何だかホッとしました。史実からみても、特に道長が定子の一族を後々まで冷遇したわけでもないんですよね。隆家の努力もあったとは思いますが。ドラマの中ではまたまひろと楽しく!絡んでくれないかなあ。今予定になくても、ファーストサマーウイカさんのキャラならいける!ショートでねじ込み希望♡スピンオフでもイイヨ!(超希望)
そうそう、女房ズの会話中にもありましたが賢子と双寿丸。まひろと道長もそうだったんですが、得てして身分が上の方が現実見えてないんですよね。賢子(中流貴族)が双寿丸に「一緒に連れて行って」とせがんだように、若き道長(上流貴族)もまひろに「一緒に逃げてくれ」と頼んだ。即座に「無理」と判断したのはまひろ(中流貴族)と双寿丸(武者)。見事に対比になってるし、これからの時代の流れ(=武士の世に向かう)をも微かに窺わせる、実にクールな組立てだと思いました。
はーーーー平安時代、イイですね。全然余裕でドラマチックじゃないですか。今大河はもはや大成功体験と見做し、他の平安期、奈良時代、飛鳥時代と幅を広げていってほしい。そしたらまた毎週感想記事書くし!ほんとだな?うん絶対!
というわけでまた来週。リアルでも望月を観られますように。
<つづく>
「文字として何かを残していくこと」の意味を考えつつ日々書いています。