「帝国主義の時代」に日本は餌食になる―ユヴァル・ハラリの予言から読み解く―川上高司(Dr.Takashi Kawakami)
イスラエルのヘブライ大学の歴史学教授のユヴァル・ハラリが「ザ・エコノミスト」で、ロシアがウクライナで勝利し帝国主義の時代がやってくると予言している。ユヴァル・ノア・ハラリ氏は歴史家・思想家で、ベストセラー本『サピエンス全史』『ホモ・デウス』のほか、子ども向け『人類の物語』の著者である。
「帝国主義」は、ローマやイギリス、帝政ロシアが代表例にあげられるが、他国を征服して自国領土に組み入れた強国に対して使われてきた。しかし、第2次大戦後、紛争は絶えなかったが、国際的に認知された独立国が強国に征服され、地図上から消し去られるケースは皆無だった。ところが、ロシアのプーチン大統領は「ロシア軍が占領した地域はロシア領土に編入される」という帝国主義原理に従っている。
プーチンは、「ソ連崩壊は20世紀最大の地政学的悲劇」とし、「ウクライナという国は存在しない。ロシアはウクライナ全土を領有する権利を持っている」と言い切っている。もしロシアがウクライナ征服に成功すれば、帝国主義の新時代が訪れるとハラリは与点する。そうなれば、ベネズエラが隣国ガイアナを征服、イランがアラブ首長国連邦(UAE)を征服、ロシアがエストニアやカザフスタンを征服事態となり、そのドミノ現象に誰がストップをかけるのか。帝国主義の時代に突入すれば、、国家の独立と国境線を守るため、諸国家は軍拡・軍事同盟に目を向け始める。
ハラリは、ウクライナが試金石となるとする。帝国主義の時代の到来を防ぐためにウクライナをヨーロッパ諸国のみならずブラジルやインド、インドネシアなど非ヨーロッパ世界が団結し支援し、今の国際秩序を守らねばならいと力説する。それが、21世紀の軍事紛争や気候変動、AIの分野などでの人類を脅かすリスク対するモデルケースとなるとする。しかし、その趨勢を止めることはできるのであろうか。
アメリカがアメリカンファーストを優先するトランプ大統領となりアメリカが「帝国化」することもありえよう。また、ドイツなどのヨーロッパ諸国でも右派勢力の台頭が目覚ましく利己的な国家は帝国化する可能性も否定できない。そうなれば、世界には、ロシア、中国、イラン、北朝鮮となれび、帝国化したアメリカ、ドイツ、イタリアなどの国家が競い合う全くあらたな帝国主義の時代がやってくるかもしれない。
ハラリはすでに『サピエンス前史』の中で、帝国はかつての後期のローマ帝国のように、多民族のエリート層により支配され、共通の文化と共通の利益にありまとまる。そしてグローバル帝国は世界中の有力な起業家やエンジニア、専門家、学者、法律家たちにこの帝国に参加するよう呼びかけ、帝国を選ぶ人は、増加の一途をたどるとする。
そういった帝国主義の時代において日本は強者の餌食になるのではないか。帝国主義日本はもはやない。