映画「空白」を見ました。

疲れたなぁ。

充が呟くように言った時、充は攻撃という鎧(攻撃にも程があるけど)を脱いだんだと思う。
娘を万引き事件の事故で亡くしたこの充というお父さん見ていたら、心が締め付けられるように苦しい。
何も知らない何も知らない事すら知らなかった自分を認めたくなくてただひたすらに空回り、人を傷つけてまわる。
小さな子どもならまだしも、おじさんがやってるんだからどうしようもない。
部下のお兄さんがただ寄り添ってくれる。
しかし、それにも牙を剥く。
どうしていいか、どうするべきなのか分からないんだと思う。
充の娘を追いかけて死なせてしまったスーパーの店長青柳もどうしていいかわからない。
謝罪しても報道番組で変な切り取り方をされたり、職場にいるボランティアおばちゃんに振り回されたりどんどん追い詰められていく。

私はこれは充の話だと思う。
充は本当にどうしようもない男で娘が死んでからもどうしようもなくて、身体中にトゲトゲがいっぱいついた鎧を着てないとダメで、物語後半もう遅いけど、充は死んだ娘に寄り添おうとする。娘の画材で絵を描いたり、漫画を読んだり娘の世界を知ろうとするが、根気はない。
感動しない。
充は娘を大切には思っていた。けど、伝えなかったし向き合わなかった怠惰だった父親だ。
娘の潰れた遺体を見たときに声をあげて泣いたし、やり方は違うが(大間違い)娘の無念を晴らそうとしていた。

この2人を等しく追い詰めていくのは、世間。背景がある。誰だって1から10まで人に説明して回らない。憶測が生まれ、ない事ない事言われ正義を盾になんでもする。
知らない私たちは口を慎むべきだ。
目の前にあるこれは真実か疑うべきだ。

充は多分優しいんだけど、だめが勝ってる。
娘が死なないと、娘にも元奥さんにも寄り添わなかった。大きな大切を失ってもう手遅れなんだけど、そこからそれでも生きていかなきゃいけなかった。

誰かに弱さを見せて、助けてという事も才能だと思う。2人は言えず追い詰められていく、充は外に刃が向き、青柳は内に刃が向く。

本当の意味で救われるにはまだまだかかるんだろうけど、もしかしたら救われないかもしれないけど、人は人のおかげで生きているんだなぁと思った。

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