チューニングの技術
これは表面的な話ではない。
チューニングはインドアであってもバカにできない。
疎かにした時点で負けを認めたの同然である。
何故ならチューニングこそがまさに印象でありチューニングこそ一つの表現であり、大会であれば点数に確実に直結するからである。
チューニングには沢山の落とし穴がある。
今回は日本の全てのドラムラインが見直せるいくつかのチューニングについて話を進めたい。
貴方のチームはチューニングルームで何をしているだろうか?
貴方は他のチームがチューニングルームで何をしているかご存知だろうか?
さて、このチューニングの話は大きく分けて5つある。
少し長くなるが、ついてきて欲しい。
1 チューニングの始まり
先ずチューニングとは何処から始まっているだろうか?
チューニングとはチューニングキーを持ったところから始まるものではない。
これは既に楽器を買うところから始まっている。
(いや、それはムリだろと言わず…。)
勿論団体だとしたら楽器から!なんてのはムリな話なので、知っておくだけでも知っておいて欲しい。
自分がもし個人で楽器を買うときや、団体で楽器を総入れ替えする時に必ず役に立つ。
楽器が鳴らせる音色や音の幅はもう楽器で決まっているからである。
だから、楽器を選ぶところから貴方の好きな音創りは始まっているのである。
先程も言ったが楽器を買う時にチューニングが可能な幅と楽器が持つ音色をチェックすると良い。
例えばスネアドラムをチームが5台持っていて、今年は3台しか使わないということが稀にある。
そういう場合は必ず楽器の木の音(胴の部分を叩いて)確認してピッチや響きが一番近いもの同士を使うと良い。
それをするだけでも根本的なところを解決できる可能性があるので、よくある何度やっても全く合わない、何か違う、みたいなことがなくなるかもしれない。
2 チューニングを大きく左右するヘッドとスティック
ヘッドの知識もよく持てると良い。
ただ素材をどれだけ知っていてもそれがその体育館でどのように鳴るのかという特性を一番知る必要がある。
これは本当に予測が不可能だ。
日本のインドアはここが一番厄介であるのは言うまでもない。
場所の話はあとでするとして、自分が好きなヘッドがどのように鳴るのか、そのヘッドの最大限のポテンシャルを引き出せているのかをまず理解しておいた方が良い。
必ず、ヘッドにはチューニングのレンジがあって、最大にポテンシャルを発揮するテンションがある。
勿論そのテンションを真ん中とし、それ以上に張るのか又は張らないのかを決めることができる。
(勿論テンションは日々変わり一定ではないので音色でも確認する)
ただ、耳(音色)だけ確認せずに、必ず目でテンションを気にしていくこともポイントである。
何故ならヘッドによって微量ながら個体差があるということと、張り具合こそがドラムの音色を創っているからであり、更にテンションの日々の変化で一定のテンションをかけたことで、ヘッドの伸びを瞬時に判断できなければ、劣化に気付くことも難しくなる。
チューニングの知識というものは正しいというインプットではなく、常に小さく変化するものに対して五感で感じて対応しよう。
とにかく数をこなして熟知していくことが最も大切である。
ここから更に踏み込んでいきたい。
チューニングをする際に使用するスティックである。
とにかく良いスティックを使うのは当たり前である。
そして、複数人でチューニングする場合は必ずスティックのピッチが同じかどうかをチューニングする前に確認し合う必要がある。
とにかく完璧を目指すのであれば、試し叩きする際のスティックでさえ適当に選んではいけない。
なぜならスティックもチューニングに影響する大切なものであり、演奏に直に影響するものだからだ。
3 スナッピーのチューニング
スネアドラムでは最も重要なチューニングポイント、スナッピーのチューニングである。
一本一本丁寧にチューニングして欲しい。
意外にもこのスナッピーのチューニングを疎かにしているチームは多いし、そもそも知らないチームも少なくない。
スナッピーの重要性は響きは勿論だが、ここで点数が出るか出ないかが決まっていると言っても過言ではない。
は?と想ったそこの貴方。
ジャッジの近くに座ってスネアの音を聴くといい。
良い音悪い音ではなく、先ず「読めるスネア、読めないスネア」に確実に分かれるのだ。
自分はアメリカで8年間ジャッジの横で500ショー以上を観劇してきて想うが、チューニングが上手いチームは勝っているし、事実音の抜け感と明確、明瞭、明白さが別格なのである。
勿論、楽譜やパフォーマーにも課題があるかもしれないが、殆どがここで点数が決まる。
読めないチューニングには適当な点数が付くのは当たり前で、技術なんて観てもらえない。(というか読めないから観れない)
だから、スネアのチューニングができないと点数は出ないのである。
だから、このスナッピーのチューニングは本気でやらなければならない。
何度も何度も繰り返し、基本の鳴り方を習得し好きな音を創り、クリアなチューニングができるような技術を習得して欲しい。
4 細かいバンドチューニング
スネア、テナー、ベースと単体でチューニングを行った後、安心してはいけない。
特にあなたがキャプションヘッド、もしくはセクションリーダーであれば尚更だ。
そう、忘れてはならない全体でのチューニングである。
バッテリーでよくあるのが、パートごとで良い音を作っても、セクションになったときの音が良い音になるとは限らない。
だから、必ずチューニングする前にどのような音作りをするかを話合うか、もしくは一人で全て軸になる音を決めてアンサンブルした時の音をイメージしておかなければならない。
三つのパートが(勿論シンバルも入るのであれば四パート分考えて)重なる音を理解しチューニングをしなければならない。
そして更に、セクションだけでなくフルバンド全体でも考え、観れると更に良い。
ここまでできればセクションでのアンサンブル感は勿論、バンドとの相性が良くなるから少々技術が間に合わなくても、めちゃくちゃ上手く聴こえるということだ。
この逆を言えば、技術が上手くてもチューニングがダメであれば、全く歯が立たないし、下手に聴こえるから順位が全く上がらないのである。
単体でチューニングした後、全体で叩いて気になるところは直していこう。
この作業をするだけで断然音はまとまって聴こえる。
これをやらないチームが多いから、やたらスネアがうるさく聴こえたり、ベースが低すぎたり、テナーが埋もれていたりする。
必ずチューニングの最後は全体で調整するところまでがチューニングなので手を抜かないように。
5 場所について
2でも少し話したが、場所についてが一番厄介である。
これは予測がつかないし、そもそもパフォーマンス場所と初めましてが多い日本ではなかなか予測が難しい。
だからと言ってスナッピーにテープをベタベタに貼るようなチューニングは海外であってもあまりない。
ただ、インドアは響きの調整が一番難しいのは事実で、その響きと音程の高低調整こそが、聴きやすく、ハマるハマらないを左右するのは間違いない。
リハーサル前や本番前にちゃんとチューニングをする際、できれば屋外でチューニングできるのが良い。
何故かというと本来の響きなのか、体育館(部屋)の響きなのか正直最初は分かりにくい。
何度も屋外やって屋中でチューニングしているのであればある程度予測ができるから良いが、屋外の方が素人でも確実なチューニングができる。
だから、チューニングは屋外で行い、その際に聴こえる微妙なニュアンスを聴き分けよう。
屋外で響きが良いと屋内で響き過ぎる可能性があるので、響きを殺し過ぎない絶妙なタイトさに調整しよう。
タイト過ぎるとこれもダメ。
タイト過ぎると逆に読まれ過ぎてちょっとした微妙なズレまでも届いてしまうからマイナスだ。
だから、絶妙な響きが必ずあるからそこを探そう。
音程が低い場合はスナッピーはタイトめにしテープで微調整、逆に高い場合はスナッピーは少し鳴らす感覚がベスト。
鳴らし過ぎは絶対に注意。
絶妙なポイント、ポテンシャルを確実に探ろう。
スネアが上手くチューニングできていればスナッピーのレスポンスがロールをした時の粒一つ一つに確実に反応しているのが分かるはずだ。
あとは、好みでテープやバズキラーミュートで補強するかで微調整すると良い。
決して最初からミュートに頼らないようにすることは大前提である。
補足として、ヘッドチェンジのタイミングだ。
スネアはリハーサルがあると仮定して2〜3日前。(1.5でも十分)
テナーの場合はリハーサルがあると仮定して3〜4日前、ベースはリハーサルがあると仮定して 2.5〜3.5日前がヘッド変えるベストタイミングだと想う。
ヘッドが一番鳴る期間はおおよそ、スネアはそこから2週間。テナーは1週間、ベースは1週間半〜2週間がポテンシャルが最大限発揮される期間だと想う。
ヘッドも生き物なので、新鮮な時間は割と短い。
予算の関係もあるが、新鮮な時期を知っていると年に二回、大会シーズンに入る前と、最後の大会で変えることをお勧めしたい。
まだチューニングに必要な知識はこれだけではないが、先ずはこれだけ理解できているだけでも大会で大きく結果を変えることができるのは言うまでもない。
チューニングひとつでどれだけ印象が変わるかを理解して欲しいし、チューニング自体が貴方の表現の一つということを心に留めて置いて欲しい。
最後に、
貴方のチームはチューニングルームで何をしているだろうか?
他のチームはチューニングルームで何をしているかご存知だろうか?
本番直前のチューニングルーム。
貴方のチームはチューニングルームで何をしていますか?
勿論、叩いて身体を解してウォームアップをするのは勿論だが、肝心のチューニングの最終調整ができる時間だということを忘れてはならない。
もしかしたら、移動中にチューニングが狂っているかもしれないし、移動中にスナッピーが歪んでヘッドに当たってないかもしれない。
チューニングルームではチューニングをすることが大前提であることを絶対に忘れてはいけない。
これを書こうと想ったきっかけは日本の技術は確実に上がってきているのに、根本的な部分(チューニング)がすっぽり抜け落ちているような気がしたので、改めて共有したいと想った。
審査をした時も想ったが、ここが本当に大切だから絶対に適当にならないで欲しい。
チューニングなら誰もが今日からできることで、これで点数が爆上がりするなら、やらない手はない。
整えるのはメンタルやテクニックだけではなく、基本的なこと、自分の扱う楽器にあるかもしれない。
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