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ネオリベ植民地 大阪報告書/スーツケースのすゝめ


スーツケースを見かける機会がとみに増えた。
インバウンドの増加もあってスーツケースやキャリーケースを転がす人が増加している。
本来スーツケースはものを運ぶものだが、それ以外にも優れた使い道があった。

「街の評価装置」としてのスーツケースだ。


インバウンドと住みたい街ランキング

外国人滞在者のことをインバウンドという。
インバウンドは押し並べてスーツケースを持ち歩いている。
それを踏まえて彼らの行動を見ていると面白い発見があった。

インバウンドの面白いところ。

それは「住みたい街ランキング」上位の街にしか出没しないということだ。
では、なぜインバウンドは住みたい街ランキング上位の街にしか出没しないのだろうか?

筆者はこの問いに答えを見出すため、ある仮説を立ててみた。

「住みたい街ランキング上位の街は歩行インフラ整備が行き届いているため、スーツケースを転がしての移動が容易である。そのためインバウンドが滞在しやすいのだ」

これが筆者のうったてた仮説である。
そして、この仮説を立証するために筆者もスーツケースなるものを携えて行動するようになったのだ。



五千円で買えるインフラ評価装置

筆者のスーツケース 評価装置として頼もしい相方だ。 中之島図書館にて


あまり知られていないが、
筆者は25年前にネパールを訪れた。
その際にクーデターという言葉を知った。
身をもって知った。
それ以来、海外旅行は禁忌となっている。

だから、およそスーツケースとは無縁の生活をしていたが、今回上述した仮説を立証するためスーツケースを購入した。

安い。

25年前よりも遥かに安くなっていた。
さすが失われた30年奪われた30年は伊達ではない。



地質調査開始

街の評価やら地質調査やらといっても大したことは一切しない。
というか、筆者は難しいことが大っ嫌い。
ただ、スーツケースをもって優雅に歩くだけだ。
それだけで、歩道の整備具合がよくわかる。

地面の切れ目がどうなっているか?
片手だけでの行動限界はどこにあるか?
エレベーターの整備具合は?
インバウンドのきもちは?

普段歩いている時はまったく意識しないことが、自ずと意識できる。
セレブインバウンドの仮想体験。
優雅な気分に浸りながら、尚且つ街の評価を行えて一石二鳥だ。




ヤバい大阪


結論から言うと大阪は「ヤバい」。

筆者は大阪府と兵庫県のスキマ人間なので、必然的にまず両者を比較することになった。
結果、大阪の歩行インフラは圧倒的に兵庫県のそれを上回っていた。
兵庫県だって人口数や財政規模で全国指折りの都道府県であり、相当に高い水準が担保さているはずだ。
だがそれでも、大阪は別格だった。

たいへん大雑把にいえば、
兵庫県は駅から5分歩くとスーツケースでの移動が困難になる。
大阪府は駅から10分歩いてもスーツケースでの移動はまだ容易だ。

それくらい歩行インフラに差がついていた。

大阪ではスーツケース人間の動線をしっかり読み切った上での街設計がなされている。
インバウンドが先か、インフラ整備が先かはわからないが、
インバウンドが多く訪れる街だからこそ歩行インフラがよく整備されているのだ。
インバウンドにスーツケースはつきもの。
だからスーツケース人間の立場にたったインフラ整備を行えば、インバウンドを呼び寄せる
下地ができる。
これを実行しているのが大阪なのだ。



駅前再開発の難しさ

駅前再開発がどの自治体でも進行している。
コンパクトシティの呼び声のもと、駅前の再整備が急務だからだ。

ここまでの文脈流から言えば、当然「歩行インフラを整備するべき」となるはずだ。
だが、筆者の想いは違うベクトルを向いている。

歩行インフラはむやみに整備してはならない。


これが暫定的ながら筆者の結論だ。



歩行インフラは混乱の防波堤

歩行インフラはむやみに整備してはならない。
どういうことだろうか?
説明しよう。

インバウンドは色々なものをもってくる。
一つはカネ。
もう一つが混沌ないし混乱だ。

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