小過を赦し賢才をあげよ?!/斎藤元彦知事のケース
筆者のお膝元たる兵庫県にて知事が炎上しているらしい。
どうやら職権濫用などの疑いで知事の座を追われそうな状況にあるようだ。
確かに袖の下をもらうことはよろしくない。
だが、どうだろうか。
もし仮に、とてつもなく功績が大きければ、少しの過ちには目をつぶることも時に必要だろう。
では、兵庫県の斎藤元彦知事の場合はどうか。
その功績を調べてみよう。
巧言公約、仁少なし
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上記記事から抜粋させてもらうと、斎藤知事の功績は次のようなもの。
典型的な「ネオリベ政策」※ではあるが、公約を高い確率で達成したという事実はなかなかのものである。
※ネオリベ政策とは、国家の安全保障より企業利益を優先する政策のこと※
公約の達成。 これはプラス評価に値するべき側面だ。
職権濫用。これはマイナス評価に値するべき側面だ。
そしてプラスもマイナスもどちらも非常に小ぶりである。
さざなみのようにプラスとマイナスが織り混ざっている。
これが斎藤元彦知事の通信簿だ。
ところで冒頭に挙げた、
「小過を赦し賢才をあげよ」とは孔の言。
少しの過ちは許して、賢い才能であれば取り立てよという含意だ。
斎藤元彦知事の場合、
今回やったことは「小過」ではある。
だが残念ながら「賢才」ではなさそうだ。
ネオリベ政策という劇薬
公約の達成は良いことだ。
しかし、公約の内容は先ほど述べたベタの「ネオリベ政策」である。
ネオリベ政策とは、国家や共同体を脆弱化させて、グローバル企業の利益を最大化させる政策のこと。
例えば「県職員OBの天下りを規制」。
これは一見素晴らしいことに思えるが、さにあらずだ。
ここ20年の日本では。
県職員に限らず公務員の天下りを規制することで、有能な人材の「官」からの離脱を促進させてきた。
高い所得が保証されるグローバルIT企業などに有能な人材が流れてしまったのだ。
結果、現下日本において国家中枢をになう官僚の知的水準は頽落してしまっている。
これでは日本の安全保障は覚束ない。
その上、民間企業わけても外資系企業に有能な人材を掻っ攫われたことにより、グローバル企業の利益が最大化方向に向かっている。
こうした理路で「天下りの規制」はネオリベ政策の「国家の安全保障よりグローバル企業利益を優先する」に該当するわけだ。
天下りの規制以外にも、耳障りの良い公約が目立つ。
だが実のところ、すべて「国家の安全保障より企業利益を優先する政策」に該当するものだ。
「政治家や公務員の給料を削減したら、財政がマシになる」という言い分なのだろう。
だが、この言い分は自分たち以降の未来を考えてはいない。
カネにならない官職などに就けるのは「1%」の金持ちだけではないか。
この「カネにならない官職をつくる」作業がこの20年間日本全体で行われているのだ。
結果、1%の金持ちだけが政治中枢に参加できる未来が待つことになる。
1%の金持ちというのは、まず間違いなくグローバル企業にゆかりのある人物だろう。
早晩、グローバル企業にゆかりのある人物が「官」を独占する。
かくして、
「国家の安全保障よりグローバル企業の利益を優先する」ネオリベ政策は完成を見るのだ。
つまり、斎藤元彦知事がやったことを突き詰めればー
日本という国家の脆弱化・兵庫県という共同体の脆弱化、
そしてグローバル企業の利益促進であった。
ネオリベ政策は「いまだけの射程」で見れば素晴らしい政策だ。
しかし、10年後から100年後の時間射程で見れば最悪の政策だ。
言い換えれば、ネオリベ政策は自分たちだけ主義の人にオススメ。
10年後100年後の日本が気にかかる人にとっては空念仏にしか聞こえない。
このネオリベ政策という劇薬を使ってしまった段階で、
斎藤元彦知事の前に良い未来は失われていた。
それが今回の一件で早めに表出しただけに過ぎない。
中米のパワーバランス反転
斎藤元彦知事の一件は、中米のパワーバランス反転という文脈で語ることも可能だ。
13億人の「サンプル」を国内に抱える中国はAI開発が著しい。
中国の開発加速度は猛烈で、アメリカを捉えようとしている。
AIこそが現代戦における要諦である以上、人口わずか3億人しかサンプルを持たないアメリカに勝機は薄くなっていく一方だ。
もはや米中ではなく、中米と書くべき時宜であろう。
ところで、
斎藤元彦・兵庫県知事は「維新の会」推薦の人物だった。
維新の会は、わたしの解釈によればアメリカ寄りのネオリベ政党だ。
中国が前進し、アメリカが後退する現下世界。
アメリカ頼みのネオリベ政党が権勢を失っていくのは理の必然。
アメリカが衰えを隠す力すらなくなり、中国覇権の時代が始まる。
その兆しとして、斎藤元彦知事の茶番劇を捉えるのが適当だろう。