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願いを込めた紅花を使う「千代紅『手毬』」

帯祝い、誕生、お宮参り、七五三、婚礼、還暦……。人生の節目を振り返ってみると、そこには“赤(紅)色”の存在があることをご存知でしょうか。川越氷川神社では、神職や巫女が丹精込めて栽培する紅花の花に祈りを込め、「紅」を作っていただいています。


“赤(紅)色”は願いと慶びの色

お宮参りには紅染めの産着を着せ、七五三には紅をさした女児が紅染めの晴れ着をまとい、婚礼衣装や角隠しの裏には鮮やかな紅絹(もみ)が使われ、還暦には赤い頭巾やちゃんちゃんこでお祝いする……。

さまざまな人生儀礼を改めて思い起こしてみると、そこに赤(紅)の存在があることに気が付きます。

これは、日本で太陽、炎、血などを連想させる“赤色”を、生命の象徴や呪術的・祭祀的に扱ってきたことに由来します。

たとえば、古くは『古事記』に魔除けの意味合いを持たせた赤土が登場しています。また江戸時代に疱瘡や天然痘が大流行した際、決定的な治療法がなかった当時にあって、人々は災難よけの効力があるとされる赤色で刷られた「赤絵」を買い求めて平癒を願いました。

現代においてもなお、人生の節目節目で登場する赤色は、健やかな成長を願うとともに、慶び祝う気持ちが託されています。

当社からも祈りの気持ちを込めた紅

川越氷川神社の境内や儀式、おわかちしているお守りや授与品の中にも数多くの赤色が存在しています。

紅(赤)を象徴するもののひとつとして、川越氷川神社より始められた嫁ぎの儀式に「嫁ぎの紅」があります。挙式当日、花嫁支度の仕上げとして、ご両親や身近な人が新婦の唇に紅をさすことで、今日まで慈しんで育てたお嬢様を親御さんご自身の手で「花嫁」にする儀式です。

嫁ぎの紅で使っているのが、玉虫色の輝きをはなつ日本伝統の口紅。「伊勢半本店」の「小町紅」です。

創業者の澤田半右衛門氏は川越の裕福な農家の次男に生まれ、日本橋の紅屋で修行したのち、文政8年(1825)、現在の東京・日本橋小舟町に店を構えました。以来、今日に至るまで江戸時代から続く伝統の製法を守り、熟練の職人が何十工程もかけて手作業で紅を作り上げています。

明治期の伊勢半本店
(出典:『東京商工博覧絵』 明治18年(1885)刊行 国立国会図書館蔵)

以前ご紹介させていただいたように、この赤色を生み出す元となる紅花を、川越氷川神社では神職・巫女が敷地内の畑で栽培しています。苗から大切に育て、手で摘み取った花びらの一部を使用して、伊勢半本店さんにご協力いただきながら、七五三を祝う紅「千代紅『手毬』」を作りました。

昔から手毬には、「子供の無病息災を願う」親の想いが込められているとされます。当社からも、お子様の健やかな成長を願い、節目を慶び、今後の無事をお祈りする気持ちを、紅に込めさせていただいております。

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