ゲームの進化にチャレンジは必要
この夏大学生に協力してもらったアンケートの中に、なぜ日本にはオープンワールド(プレイヤーが自由に行動できる空間)のゲームが少ないのか、という質問があった。
2001年北米で『グランド・セフト・オートⅢ』(ロックスター・ゲームス/2001年)がプレイステーション2のタイトルとして発売され海外で大ヒットした。
一方国内では海外ほど話題にならなかった。世界観の問題もあったと思う。
その後海外ではオープンワールドのタイトルが増えていく。
日本では 『シェンムー』(セガ/1999年)がオープンワールド的というか、箱庭的な空間でゲームが展開するタイプのゲームだった。『龍が如く』 (セガ/2005年)がその流れを受け継いでいく。
『グランド・セフト・オートⅢ』と『シェンムー』を同列に語るつもりはないが、多くの開発スタッフと多額の開発費が必要になることは変わらない。ちなみに『シェンムー』は開発費が70億円ともいわれている。こうしたリスクを冒してもオープンワールドという新たな分野にチャレンジしたわけだ。
振り返ってみると、セガはチャレンジ精神のあるゲーム会社だった。
例えば、1990年国内のインターネット環境が整備される前に、電話回線を利用してゲームや情報配信のサービスを始めたり、いつも時代を先取りしていた。
しかし、ドリームキャストの販売不振により3期連続で連結純損失を計上。2001年3月ドリームキャスト事業およびゲーム機ビジネスからの撤退を公表した。
セガほど目立ってはいないが、ゲーム業界でもう1社ビジネスにチャレンジしている会社がある。任天堂だ。
例えば、1995年スーパーファミコン専用周辺機器として衛星データ放送の受信機サテラビューを発売。オリジナルや体験版ゲームのデータ配信を行っていた。同年バーチャルボーイというVR(バーチャル・リアリティ)対応のゲーム機を発売している。どちらも当時の技術や社会環境の問題で、ビジネスは成功しなかった。
バーチャルボーイ発売の翌年、新宿のデパートに立ち寄ったところ、玩具売場でバーチャルボーイのゲームソフトが500円均一でワゴンで売られていた。
こうしたゲーム会社のチャレンジは、残念ながらビジネス上失敗したが、何らかのビジョンあっての結果だった。実際技術がビジョンに追いついた現在、上記のすべてはビジネス上実現している。
国内主要ゲーム会社の大半は上場企業だ。こうした企業は、売上や利益、予算の管理が、経営において重要なテーマになる。新規事業への投資は、成功の確実性がポイントになる。
今年はゲーム市場の状況がよくない。赤字決算だった会社も多い。ビジネス上チャレンジしにくい環境になっている。
とはいえ、現状維持の状態が続く停滞化は産業の退化にもつながりかねない。こうした中、目新しい独創性のあるゲームが求められている。開発コストのかかるものである必要はない。
ゲームビジネスの進化にチャレンジは必要だ。新たに業界に参入したインディーゲームの会社や個人に停滞する業界へ新風を吹き込んでもらいたいものだ。