アナログとデジタルなゲームが合体した本の話
ゲームというとコンピュータゲーム。一般にだいたいそんな認識だ。
広義のゲームのカテゴリーには、コンピュータを使わない形態のカードゲームやテーブルトークRPG(TRPG)、プレイバイメール(PBM)なども含まれる。
TRPGは、紙、鉛筆、サイコロなどを使って仲間同士会話をしながらルールに沿って進行するRPGのこと。テーブルでトークしながらプレイするRPGというわけだが、デジタル版は人気のゲームジャンルになっている。
PBMは、郵便を利用して、運営者が世界観を設定し、プレイヤーはその世界でキャラクター登録して行動を起こし、郵便でその報告を運営者に送り、それを繰り返しながらゲームが進行していく。1990年頃はそうだった。
あるとき会社の営業部から『RPG幻想事典』続編の要望があった。
PCゲーム『ウィザードリィ』にサムライ、ハタモト等日本のキャラクターが登場したり、国産RPGでは日本の妖怪や怪物など登場するタイトルもあったので、日本編を企画して会社に提案したところ即決で承認された。
だが、問題は原稿だ。誰に頼んだらいいか迷っていたところ、知人のアドバイスがあり冒険企画局の近藤功司さんを紹介された。TRPGを提唱した人だといわれているが、富士見書房からRPGに関係する本を出している。
彼に相談したところ、スケジュールと原稿量の問題で、ある程度なら協力できるということになり、門倉直人さんを紹介された。彼もTRPGでは名の知れた人だった。
早速門倉さんに相談したが、やはり同じような事情である程度なら対応可能ということになり、慶応大学のサークルの後輩を紹介された。柳川房彦さんと高井夏生さんだ。
柳川さんは、その後遊演体で『蓬萊学園の冒険!(以下、蓬莱学園)』を手がけ、現在小説家新城カズマとして活躍している。高井さんは現在德川記念財団の理事長だ。
ちなみに、この縁で有限会社遊演体の社長足立さんと知り合った。相模原で不動産業をされていた。『蓬萊学園』を家庭用ゲームにしたいという相談もされた。何度かお話しするうちに、足立さんの熱意が『蓬萊学園』継続の原動力だということがわかった。
メンバーはある程度揃ったが、テーマが多岐にわたっていたので執筆者がもう1人必要だった。
知り合いだった飯島健男さんがPCゲーム『抜忍伝説』(ブレイングレイ/1987年)を手がけていたことを思い出した。このタイトルは戦国時代を背景にしている。
彼は光栄に入社したのちブレイングレイを立ち上げている。同社はPCゲーム『ラストハルマゲドン』(1988年)で有名になった。
飯島さんにお願いしたところ原稿を引き受けてもらった。やっとのことで『RPG幻想事典 日本編』が完成し発売された。思った以上に売れた。人の縁が頼りでてきた書籍なので今でも思い入れがある。
その後とっくに忘れていたが、数年前に読者の感想を掲載しているサイト『読書メーター』でこの本の感想を見つけた。そして思い返してみて、わかったことがある。
この本は、奇しくもTRPGとPBM、コンピュータゲームが合体した本だったのではないか。制作してい当時なぜそんなことがわからなかったのか。36年後の後悔である。