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読書記録「国宝 青春篇」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、吉田修一さんの「国宝 青春篇」朝日新聞出版 (2021) です!

吉田修一「国宝 青春篇」朝日新聞出版

・あらすじ
1964年1月1日。立花組の新年会にて、歌舞伎舞踊『積恋雪関扉つもるこいゆきのせきのと』を見事に演じる若い男がおりました。

彼の名は立花喜久雄。侠客 立花組の一人息子であり、後に役者として「国の宝」と称される男でございます。

組頭の立花権五郎は、元々は戦後の愚連隊上がりでございます。長崎の名門侠家 宮地組とは、二分八の兄弟盃を交わした間柄です。

しかし、兄弟分とは言え抗争は十数年以上続いており、遂に宮地組の組員たちが、新年会に討ち入りする事件が勃発します。

ドスや日本刀相手に、襖を振り回して応戦する権五郎でしたが、最期は腹に鉛玉をくらって帰らぬ人となりました。

その一部始終を見ていたのは、兄弟分 愛甲会の辻村が連れてきた、関西歌舞伎の名家「丹波屋」の二代目 花井半二郎でございます。

権五郎亡き後の立花組は次第に勢力を衰えてゆき、奇妙な縁から、立花喜久雄は花井半次郎のもとで、芸の道を進むことになります。

果たして、立花喜久雄の芸の道やいかに。


東京読書倶楽部の読書会にて紹介された方がおり、気になっていた作品。

去年、上野公園は「池のほとりの本の道」にて。「ミュージックバー&カフェ "道"」さんのブースにて手に取り、店員さんの勧めもあって購入した次第。

私は歌舞伎についてド素人ではある。大学時代に1回、社会人に1回(ちなみに2回目は坂東彌十郎氏演じる『水戸黄門』であった)。

作中では、演目のあらすじや動きなども要所々々で説明されるため、歌舞伎ド素人の私でも楽しむことができた。

実際に歌舞伎座で観に行けば、もっと面白いと感じるだろうなと、すでに画策している自分もおります。

<幕間>

侠客同士の抗争、親父の死、仇討ちから始まる喜久雄の物語は、芸の道に進んでも、「血なまぐさい」争いは絶えない。

丹波屋の花井半二郎には、一人息子の俊介がいました。いずれ父の名を継ぎ、「三代目花井半二郎」と呼ばれるだろうと。

極道と堅気で「兄弟」が異なるように、実力で這い上がる世界を見てきた喜久雄にとって、「世襲」とはなんと厳しいものか。

此の世の名残 夜も名残
死にに行く身をたとうれば
あだしが原の道の霜
一足ずつに消えて行く
夢の夢こそあわれなれ

同著 236頁(『曽根崎心中』)より抜粋

時には世間から心無い言葉を受けたり、他の歌舞伎役者から苛めを受けたり。

それでも、芸の道を進んでいく喜久雄。

極道の親父を見てきたからか、何度でも這い上がれることを知っていたか。

そんな彼を支えるのは、後妻でありながら実の息子のように育ててきたマツ、幼い頃から兄貴分として見守ってきた徳次。

そして、二代目花井半二郎の願い。

どんなに悔しい思いしても芸で勝負や。ほんまもんの芸は刀や鉄砲よりも強いねん。おまえはおまえの芸で、いつか仇とったるんや、ええか?

同著 309頁より抜粋

侠客上がりの喜久雄だからこそ、彼なりに「道を極めよう」としている。

そんな喜久雄の姿を見ていると、思わず「頑張れ!」と言いたくなるほど、胸が熱くなります。

とは言え、まだ前半を読み終えたばかり。喜久雄と俊介の行く末は、ますます気になるところでございます。

物語は第二幕「花道篇」へ続く。それではまた次回!

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川口 竜也 / 川口市出身の自称読書家
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