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ノーベル賞受賞者を約40人輩出した都市

今年もノーベル賞が話題になる時期がやってきましたね。現在は、ネットやテレビなどのニュースで、ノーベル賞の話題が頻繁に扱われています。

そこで今回は、これにちなんでノーベル賞の受賞者を多数輩出したある都市を紹介します。

■ ドイツにある科学の街

結論から言うと、そのような都市の一つにベルリンがあります。ご存知の通り、ベルリンは、ドイツで最多の人口を誇る都市であり、同国の首都です。

ベルリンは、科学の街でもあります。ここでは大学などの教育機関や研究機関が集中しており、6万人以上の研究者がいます。また、DWIH TOKYOの記事によると、科学や研究に携わる女性の割合がドイツでもっとも多いことから、「女性科学者の首都」とも呼ばれているそうです。

私にとっては、ベルリンは憧れの地でした。大学で化学を学んだときに目にした元素事典が、ベルリンで書かれたものだったからです。

この元素事典は、第二次世界大戦前に発行された古い書籍です。

ただし、内容の充実度や情報量の多さは驚くものでした。これは、厚さは5cm以上の書籍が約100冊セットになったシリーズ。各元素の性質や特徴をそれぞれ1冊ずつにまとめてあり、日本語や英語の資料にはほとんど載っていない金属結晶の構造パターンが詳細に記されていました。

「分析装置が今ほど充実していなかった戦前に、ここまで分かっていたの?」。30年ほど前大学院生だった私は、その完成度の高さに驚きました。と同時に「これが書かれたベルリンに行ってみたい」と感じました。

■ ドイツ技術博物館の展示

幸いその夢は、大学院修了から約20年後にかないました。

時は今から10年前の2014年。私は初めてベルリンの地に立ち、お目当ての一つだったドイツ技術博物館に向かいました。

この博物館には、技術だけでなく、科学に関する展示も多数あります。その一つである化学の展示室には、下の写真のような展示がありました。

ドイツ技術博物館の展示

この展示は、「ノーベル賞受賞者とベルリンとの関係」と題したもので、受賞の年と名前、所属する研究機関のリストが書かれていました。受賞者の数は約40人(2014年6月時点)。その多くは、1945年の終戦よりも前に受賞しています。

ちなみに日本人全体のノーベル賞受賞者の数は、アメリカ国籍の人をふくめて28人(2024年10月10日時点)。ベルリンという一都市を拠点とした受賞者の数に及びません。

私はこの展示を見て、日本とは圧倒的に異なるものを感じました。

■ 日本から世界をリードする人物は現れるか

もちろん、学術賞はノーベル賞だけはないので、その受賞者数だけで国や都市の学術的水準の高さを計ることはできません。ただ、ドイツ技術博物館の展示のレベルの高さや、女性研究者の割合が大きいという事実から、私は「日本が超えられないハードル」を感じました。

残念ながら近年の日本では、科学者や技術者を取り巻く環境が、長らく改善されていないようです。国立大学法人の関係者からは、「研究費が足りない」という声をたびたび聞きます。また、企業の技術者からは、「忙しい」「休みがほしい」「雑用が多すぎる」という声を聞きます。

このような状況が根本的に改善されないと、日本から世界をリードする人物がもう現れないかもしれない。私は元技術者としてそう感じ、危機感を覚えています。

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