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鉄道は時計やオルゴールに似ている?

こんにちは。交通技術ライターの川辺謙一です。

今回は、「鉄道は時計やオルゴールに似ている?」というテーマで書きます。

鉄道は、われわれにとって身近な乗り物の一種ですが、じつは時計やオルゴールに似た機能を持っているのです。

この記事は、先日noteに投稿した記事 科学の入口としての『鉄道の科学』 の一部を抜粋した記事です。もとの記事が長く、どこが要点か分かりにくいと感じる方もいると思うので、要点だけを切り抜いて1本の記事にしました。

この記事を読むと、「鉄道とは何か」という素朴な疑問に対する私なりの結論が分かります。


■3つの意外な共通点

まず結論から言います。鉄道は、「多くの要素が関係し合い、全体としてまとまった機能をしている」という点で時計と似ており、「その機能の動きがあらかじめ決められている」という点でオルゴールと似ています。

もう少しくわしく説明しますね。

ここでは分かりやすくするため、①時計→②オルゴール→③鉄道の順で説明します。

①時計

一般に「アナログ時計」と呼ばれる機械式時計には、内部で歯車をはじめとする多くの部品があります。また、それらはたがいに連動し、時を刻み、現在の時刻を針の動きで示すという「機能」を果たしています。

②オルゴール

アナログのオルゴールの代表例であるシリンダーオルゴールにも、機械式時計と同様に、多くの部品があり、それらが連動し、楽曲を演奏するという「機能」を果たしています。シリンダーオルゴールは、シリンダーと呼ばれる円筒についたピンが櫛形の金属板に当たると音が鳴る構造になっており、シリンダーが1回転すると1曲の演奏が終わるように設計されています。

シリンダーオルゴール(写真AC)

③鉄道

鉄道には、それを支える多くの施設や設備があるだけでなく、その運用やメンテナンスなどを行う人がいます。また、これらは、たがいに連携し、「列車ダイヤ」と呼ばれるあらかじめ定められた輸送の計画にしたがって列車を動かし、人や物を運ぶという「機能」を果たしています。

こう見ると、鉄道は、時計やオルゴールに似ていると思いませんか?

鉄道が果たす機能は、列車ダイヤにしたがって列車を動かして陸上輸送を実現することです。もちろん、列車ダイヤは、曜日や月などによって変わりますが、鉄道では基本的に列車が毎日ほぼ同じように規則正しく動くことで、日々の輸送を担っています。

これって、オルゴールが同じ曲を繰り返し演奏するのに似ていませんか?

オルゴールのシリンダーと、鉄道の列車ダイヤは、どちらもコンピュータにおけるプログラムのような働きをしています。つまり、機能を計画通りに実行するための重要な役割を果たしているのです。

■鉄道は「システム」である

鉄道が、時計やオルゴールと似た機能を発揮するのは、鉄道そのものが「システム」だからです。

と言っても、分かりづらいですよね。

システム」は技術用語ではありますが、「システムキッチン」や「バス(浴室)システム」などというように、家庭で使われている商品があるので、おそらく聞き覚えがある方が多いでしょう。

この「システム」という言葉の意味は、『広辞苑第七版』(岩波書店・2018年発行)に次のように記されています。

複数の要素が有機的に関係しあい、全体としてまとまった機能を発揮している要素の集合体。組織。系統。仕組み。

『広辞苑第七版』

そう、鉄道はまさにこれです。鉄道を支える施設や設備、そして人がそれぞれ関係し合い、全体として「陸上輸送」というまとまった機能を発揮しています。

このため、もし今「鉄道とは何か」と問われたら、私はこう答えます。

鉄道は列車ダイヤに従って陸上輸送を実現するシステムである

私は、独立から20年かけて取材や調査を重ね、「鉄道とは何か」という素朴な疑問に対する答えを探し求めてきました。先ほどの一文は、その経験に基づいて得られた現時点での結論であり、鉄道を自然科学の視点で見たときの私なりの答えです。


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川辺謙一@交通技術ライター
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