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川端堂おすすめの書籍

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東京・神保町のシェア型書店「SOLIDA」の棚主「川端堂」です。気に入った本をこちらのマガジンでご紹介します。随時更新していきます。既に売れてしまった本や、手放すのが惜しく販売し…
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#旅行

100年前の痛快な温泉ガイド 田山花袋『温泉めぐり』

田山花袋の『温泉めぐり』は、そのありきたりなタイトルからは想像できない、痛快な旅行ガイド本です。大正時代に出版され、読みやすい表記で岩波文庫に入っています。 まず情報量がすごい。北海道から九州まで、各地の温泉を訪ねています。温泉宿や接客の様子、泉質、周辺の町や村の様子、風景などを細かく記しています。当時の有名な温泉地はだいたい網羅しているのではないでしょうか。 そして温泉に対する評価が率直です。「伊香保は東京附近では、箱根についで、好い温泉場だ」という感じで勝手にランキン

【書籍紹介】『手仕事をめぐる大人旅ノート』(著:堀川波)

工芸作家・イラストレーターとして活躍する著者が3週間にわたりロンドン、バルト三国などを巡った旅の記録です。12年ぶりに再取得したパスポート、新調したスーツケース、息子に借りたリュックサック…。海外旅行には不慣れで英語も苦手という著者が、Google翻訳を駆使して歩き回ります。 インスタで知り合ったロンドンの毛糸店に依頼されてワークショップを開き、ラトビアの「森の民芸市」で白樺細工を買い込む。アクティブな旅の様子と現地の手工芸品を、ほんわかした挿絵で紹介しています。 それに

カメラ目線の写真に魅かれた『旅をひとさじ』

私たち「川端堂」の最近のおすすめ本は『旅をひとさじ』(文・写真:松本智秋)です。 この本は写真が多くて、いっそ「写真集」と言ってもいいと思うんですが、被写体の人たちがしっかりこちらを見ているのが素晴らしいです。 内容はというと、ユーラシア大陸各地のイスラム系の街を訪ねた一人旅の記録なんですね。 コロナ前の数年間に中国、中央アジア、イラン、レバノン、シリア、ブルガリア、ロシアなどを巡っています。政情不安な地域も多いので、いまでは行きづらい場所も。 現地を散歩し、現地の人と会話