続・京葉線快速縮小問題②快速のあるべき姿を再検討する
京葉線通勤快速の廃止、快速の大幅縮小に端を発した本問題。京葉線において「快速」はどうあるべきなのか、根本的なところを考えてみたい。
JRが考える「京葉線快速」の姿
2024年3月ダイヤ改正において(当初は)「快速」は10~15時台の日中時間帯のみとされた。この残された快速と、廃止となった快速を比較すると性質が異なることが分かる。
【日中の快速】
・大幅な混雑は見られない時間帯
・東京~海浜幕張間各駅停車と組み合わせた設定
【朝夕の快速】
・快速に旅客が集中し混雑する
・各停は東京~蘇我間の運転であり雁行する
日中においては快速が混雑せず、かつ東京~海浜幕張間各停と組み合わせることで海浜幕張以遠の速達性を保っていた。これがJRの考える「京葉線快速」のあるべき姿と理解できる。
一方で、朝夕の快速においては各停と機能が重複しているにも関わらず旅客集中で混雑が見られ、これを各停化することでその解消を図った、とするのがJRの説明であった。このロジックに「速達性への配慮が足りなかった」とするのがその後のダイヤ修正経緯となる。すなわち、混雑を許容しつつ速達性に配慮するのが朝夕の快速に求められる姿と考える。
通勤快速は復活しないのか
2024年3月のダイヤ改正発表後、噴出した意見が「通勤快速の復活」であった。その後の9月1日のダイヤ変更においては「通勤快速並みの快速設定」とされ、停車駅ありきではなく速達性確保の観点でダイヤ設定を行う姿勢を示し、通勤快速の復元や海浜幕張等への追加停車についてJR側は否定的な見解を取っている。速達性確保により自治体側も矛を収めており、朝上りの通勤快速問題は決着したように見える。
下り通勤快速については当初からあまり問題視されず、9月1日ダイヤ変更後の自治体要望においても「夕方下りの快速復活」とされており、通勤快速の復活とはされていない。
京葉線内需要を見ても、新浦安や検見川浜〜千葉みなと利用が多く停車本数の確保が求められる状況にあり、蘇我以遠に特化した通勤快速的列車の復活は望み薄と解している。
快速停車駅の見直しはあるのか
本noteでも様々な停車パターンの検討を従前行ってきた。新浦安や海浜幕張に追加停車した通勤快速的列車を主張する在野意見も見られるが、上記整理のとおり、京葉線の実態を反映した意見とは言えない状況にある。
一方で、9月1日ダイヤ変更で追加設定された快速4本(上り7時台2本、下り20時台2本)は、新浦安以西で平行ダイヤとなっており所要時間も長い。この状況から越中島・潮見・葛西臨海公園への追加停車が考えられ、快速通過駅の利便性向上を主張するJR意向にも沿う形になる。本noteでも区間快速として整理検討しており、平日朝夕に限った追加停車のメリットは理解できる。
ただし、ここまで問題がこじれた状況下で停車駅という新たな火種を持ち込むこと自体がデメリットとなり得る。また、速達性維持の観点から追加停車困難な新習志野あたりの反発も予想される。
結局のところ、都内方拠点となる八丁堀、新木場、近距離需要の大きい舞浜、新浦安、速達需要が求められる海浜幕張以東の利用を満たす現状の快速設定が理に適っており、ベターな形と考えている。
京葉線快速の本数推移をみる
ここで改めて近年の京葉線快速の本数推移を見てみたい。
報道ではしばしば2023年ダイヤでの本数との比較が伝えられていたが、快速の本数が充実していた2021年と比較すると、2023年時点で2/3、そこからさらに半減の惨状になっている。コロナ禍による需要減退もあり、段階的に快速が削減されていたことが分かる。
大幅削減前後の時間帯別の本数も記載しておく。
京葉線快速の設定条件を整理する
従来検討の再掲となるが、JR千葉支社長記者会見等で示されている課題認識は下記2点。
・新木場駅で混雑が集中し危険な状態となり、ピークの時間帯に快速の設定ができない
・快速通過駅の利便性に課題
言い換えると、新木場駅の混雑解消・快速通過駅の利便性配慮が叶うことが快速の設定条件になる。
また、快速自体の旅客集中への配慮も必要になる。9月1日に追加設定された快速を見ると、快速の前後に比較的短い間隔で各駅停車(京葉線・武蔵野線は問わない)が設定され、快速への旅客集中・快速通過駅への配慮がなされていることが分かる。
快速はどこまで復元できるか
JRは「沿線の自治体や関係の方々と意見交換をして、今後とも柔軟に対応していきたい」との見解を示しており、今後の快速追加設定についてゼロ回答ということはないと思うが、実際には相反する要望があり全てを満たすことはできない。たとえば、千葉市以遠各市が要望するさらなる速達性確保と習志野市の停車本数確保は両立しえないし、仮に「快速純増」であれば両立もしうるがそれはJR側の人員・車両等の制約からそれも難しい。
快速復元の落としどころについては、下記にて検証している。
下りは現行の快速運行時間帯である9~20時台、上りは旧ダイヤでの快速運行時間帯である6~18時台で概ね2本の快速運行が落としどころと整理しており、これが理想形と考えている。
一方で、JRの課題認識として「快速通過駅の利便性」に言及しており、快速通過駅の利便性確保の観点から快速復元(各駅停車の快速化)が進まない可能性も懸念しており、改めて別パターンも検討してみたい。
◇下り予想1:旧通勤快速のみ快速として復元
旧通勤快速(東京1814・1918→蘇我1851・1955)を踏襲した快速を18時台・19時台に各1本のみ快速として走らせるパターン。
2024年3月の早朝快速復元、9月の朝夜快速復元は外房線・内房線がセットにで行われてきた経緯もあり、18時台が外房線直通・19時台が内房線直通となる点も現実味がある。
ただし、18時台は下り混雑ピークにもあたり、快速設定が難しいと判断される可能性もある。この場合、19時台に2本の快速設定(旧19:18君津行き、旧19:39上総一ノ宮行き)とする整理も考えられる。
◇下り予想2:予想1に加えて16~17時台の快速復元
パターン1に加えて、混雑面の課題が少ないと考えられる16~17時台に快速設定(2本/h)する予想。
日中の快速運行時間帯を9~17時台まで延長し、朝上り・夜下りにピークタイムを外しつつも追加設定するパターンで理解しやすい設定と考える。
◇上り予想1:16時台前半に快速1本設定
上りについては朝の通勤時間帯が設定済みということもあり、現行から変更なしもあり得ると考えている。が、それでは予想にならないので最低限の設定として、16時台の上総一ノ宮直通各停(蘇我16:19)の快速格上げを予想した。むしろ、9月1日のダイヤ変更でこの直通のみが何故各停存置されたのか、意図を掴みかねている。
◇上り予想2: 9時台~17時台まで快速復元
「下り予想2」の裏返しになるが、日中パターンの延長として9~17時台まで快速設定(2本/h)するパターン。上り17時台は現行ダイヤにおいても、波動需要と下りラッシュへの送り込みを兼ねた海浜幕張始発が多数設定されており、これとセットでの快速は設定しやすいと考えている。
朝についても、10時前に都内に到達する9時台前半の快速は休日のみ設定(復元)されており、平日においても期待したいところとなる。
上下で予想2が叶えば合計44本、2023年ダイヤの59本には及ばないものの、2024年ダイヤの26本比ではほぼ中間、言い換えれば半数復元となりひとつの妥協点として理解できる。
◇その他
下り21時台や上り8時台においても、混雑面の課題は少なく快速設定は可能な印象を受ける。ここまでの経緯を踏まえて設定予想からは外したが、復元されれば利用者視点では歓迎で、答え合わせを待ちたい。
次回以降、さらに具体的なダイヤ予想を行ってみたい。