アニメ×コスメのコラボ構造-#2
安定している化粧品市場。
だから、どれを選べばいいかわからない!
前回、コスメとアニメのコラボレーションについてご紹介しましたが、なぜこんなにもアニメとコスメのコラボが多く行われて、増えているのでしょうか?
アニメとコスメのコラボが行われる背景には、アニメ・コスメそれぞれの事情が大きく影響しています。今回は、コスメの事情と市場環境についてお話していきたいと思います。
まずは、現在の化粧品市場について。
日本国内の化粧品市場規模は、新型コロナウイルスの影響を受け、2年連続で減少し、2021年度で1兆3529億円となり、翌年の2022年度では、1兆3721億円と僅かながら回復基調が見え始めています。
それまで拡大基調であった化粧品市場が、2020年、2021年と連続して減少傾向となった理由は、コロナ渦により国内外問わず人々の行動・生活様式が変化し、テレワークの推奨や外出自粛により、メイクする機会が減り、化粧品や衣料品などへの関心が下がってしまったためです。また、商品の売れ方も変化し、ファンデーションや口紅は、マスク着用により口元が隠れたり、メイクが崩れたりしてしまうので需要は大きく減少したと考えられています。
コロナの影響を受けてしまいましたが、生活必需品ということもあり、長らく国内の景気動向に大きく影響を受けずに、確実に市場規模が拡大してきたため、化粧品市場は安定した成長市場と見られています。
中長期的に見ると、国内の化粧品市場規模は、安定して微増を続けています。しかし、安定した市場ということは、言い換えれば日本の化粧品市場は、人口減少や少子・高齢化社会の中にあって大きな成長が見込みづらい成熟市場となっています。
確実な需要はありつつ、巨大な新規需要が生まれているわけではないため、どの商品も似たりよったりになってしまい、商品の差別化が難しくなると、いわゆる「コモディティー化」に陥ります。
その結果、化粧品売り場は、何を買って良いのか判りにくい売り場(店頭だけでなく通販なども含め)となっています。機能以外で、他の商品と差別化するための「買う理由」や「買うきっかけ」が重要なカギになっているのが、化粧品市場です。
化粧品市場は乱戦状態
さらに化粧品市場は、少数の大企業と数え切れない中小企業によって構成されている乱戦市場です。
2005年の改正薬事法の施行(リンクから厚生労働省による概要を読めます。)で、工場を持たない企業が外部委託の形で商品をつくれるようになり、大規模な設備投資を行わずに、化粧品市場に参入できるようになったことが、異業種や新規企業の市場参入を加速させています。
ネット通販の一般化で、販売チャネルも多様化も進み、韓国をはじめ国外メーカーも日本市場に参入しやすくなっています。(越境ECも化粧品の有力は販路のひとつとなっています。)
こうしたことから、「買う理由」や「買うきっかけ」の重要性がとても高いのです。
コスメ男子、増える!(でも、何を買えばいいの状態。)
近年、化粧品メーカーやファッションブランドから男性向けコスメが続々とリリースされています。
以前は、周囲の目もあり男性がコスメを購入して普段からメイクをすることの心理的ハードルは高いものでした。しかし、メンズコスメに関するCMやSNSの話題が目立つようになったことで美容に興味を持つ男性はZ世代を中心に増えています。
若い世代以外でも、コロナ渦のオンライン会議の普及とマスク生活により、オンライン会議でモニターに映る自分の顔を目にしてシミやシワが気になったり、マスクによって目元のクマが目立つように感じたりと肌の悩みに直面する男性が増加しました。それにより、30代~50代のビジネスマンの美容への意識も、特にアンチエイジングのアプローチから変化しています。
とはいえ、化粧品といえば基本的に女性の市場です。たとえば皮膚用化粧品の中で、男性用の化粧品占める割合は、全体の10%以下です。
メンズコスメの市場規模については、いくつかの調査があります。ある調査では400億円程度で急速に拡大基調にある、別の調査では2024年に1600億円規模の市場になるといった発表がされていますが、どの調査にも共通するのは、急速に市場規模が拡大するという見方です。
メイクする男性が増えており、メンズコスメ市場は成長市場ではありますが、市場における絶対的なリーダーがいまだ不在な状況です。
とりあえずこれを買っておこう!という商品がないため、メンズコスメに挑戦してみようという人はどの商品を買ったら良いか迷ってしまい、「買う理由」や「買うきっかけ」を求めています。
メンズコスメを「買う理由」や「買うきっかけ」として、アニメとのコラボは効果的と考えられます。
化粧品市場での「買う理由」や「買うきっかけ」の意味
化粧品市場での「買う理由」や「買うきっかけ」の意味は、買ってほしいお客様に認知され、買ってもらうためのサインです。サインがないと、他の商品と価格や機能、パッケージデザインなどで終わりのない比較競争を続けなければなりませんが、サインがあると、競争の仕方を変えることができます。
それは一時的なものかもしれませんが、タイミングと頻度さえ間違えなければ、選ばれ続けるブランド力の構築に繋がります。
では、コラボするもう一方のアニメにはどんな変化があり、コラボで機能する存在になっているのでしょうか? 次回は、コスメとコラボするアニメの現在についてお話しします。