速くて効率的だけではないDX
レジの多様化はサービス向上につながる?
最近、コンビニのセルフレジやホテルの自動チェックインマシンなど、レジの無人化、自動化を目にする機会が増えたのではないでしょうか。
私自身、コンビニのセルフレジは日常的に使いますし、最近スーパーのカート型レジ(専用端末や専用アプリを使い、手元でバーコードスキャンしながら買い物ができる仕組み)を使う機会もありました。
ホテルも自動チェックイン/チェックアウトが当たり前になりつつあるようですし、映画のチケットに関しては最後に窓口でチケットを買ったのはいつだったか思い出せないほどです。
ホテルも自動でチェックインする時代に
以前、ホテルのフロントで働いていたことがあるのですが、チェックインが長蛇の列になることも日常茶飯事でした。今はチェックインの自動化や無人化が進み、並ぶ時間は大幅に減ってきているのではないかと思います。
レジや受付を無人化したり自動化したりする背景は様々かと思いますが、人件費の削減や業務の効率化なども目的のひとつでしょう。
先日、同僚がとあるホテルに泊った際のチェックインマシンは、手続きを始めるとリモートでオペレーターとつながり、チェックインの案内をしてくれたそうです。
これなら、対面カウンターのようにいつ来るかわからないお客さんを待つ必要がないので、お客さんのいない時間は別の仕事に使えます。また、複数の店舗の対応を一か所でできるため、人件費の削減にもなっているのではないでしょうか。
効率を求めたいホテル側や、必要最低限の時間で目的を果たしたいと思っているお客さんにとっては便利な仕組みだと思います。
効率化の目的とは?
効率化を求める一方で、対面での会話や接客そのものに価値を感じている人にとっては少し物足りなくなっている側面もあるかもしれません。
ホテルを例にした場合、なるべく早くチェックインの手続きを済ませて部屋で休みたい人にとっては自動チェックイン/チェックアウトマシンは有効ですが、ホテルという空間で接客やフロントでの会話も込みで滞在時間を楽しみたいという人にとっては、物足りなさや、サービスの低下を感じる原因にもなると思います。
実際私が働いていたころ、行列を目の前にしてゆっくり接客なんてできない状況でしたが、一方でホテルなのに接客に時間をかけられないもどかしさもあり、当時の同僚と「時間優先の人の列とゆっくり接客されたい人の列を分けられたらいい」という会話をよくしていました。
実際、待ち時間に対するお叱りの声もあれば、丁寧な接客を求めるお客様の声もあり、両立が課題だと感じることも多かったです。
速さだけじゃない!「ゆっくり」もサービスに!
ホテル時代は混雑している状況を目の前にして、ゆっくり接客することをメインにしたサービスなんて無理だろうと思っていました。でも、それを形にしてしまった例がオランダにあるそうです。
オランダの「JUMBO」(ユンボと読みます。)というスーパーマーケットには、通常のレジとは別に、「おしゃべりレジ(kletskassa)」という、ゆっくりおしゃべりができるレジがあるそうです。
速さが重視されがちのレジで高齢の方が焦らずゆっくり支払ができるように、という思いで考案されたといいます。
実際、セルフレジのスーパーなどでは、精算方法に戸惑う高齢の方を目にすることもあります。オランダのスーパーのように、あえて「ゆっくり」対応するレジを導入することでより幅広いニーズに対応することが可能となり、結果として全体の顧客満足度の向上につながるのではないかと思いました。
ホテルでも会話込みの丁寧な接客を重視する人と、速さ重視の人の対応を分けられたら、どちらのお客様にとっても満足のいくサービスを提供することができるのではないでしょうか。
速さや効率だけではなく「ゆっくり」もまた、ひとつのサービスなんですね。
編集猫 KAURU memo
スーパーマーケットと社会課題というと、あまり結びつかないイメージがあるかもしれません。しかし、スーパーやドラッグストアは、「買い物難民」や「高齢者の生活支援」、「フードロス問題」といった社会課題と直結する空間になっています。
“安く良いものを売る”スーパーマーケット(売り場)から、“地域の人の困りごとを解消する”スーパーマーケット(売り場)へのシフトが日本でも進みそうです。お客様のご意見箱をはじめ、こうしたお店のシフトにDXを応用できると、お店と買うことの可能性が広がりますね。
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