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『売ること』のこれから #2 訪日客で変わる人流、注目すべき対応で売上をつくる小売


インバウンド需要がふたたび注目を集めています

2023年5月のコロナ5類移行後、人々の動き=人流が変わり、訪日観光客によるインバウンド需要がふたたび注目を集めています。
2023年10月、回復傾向にあった訪⽇外客数は2019年同月比100.8%の251万6,500人まで増え、新型コロナウイルス感染症拡大以降、はじめてコロナ前の2019年を上回りました。

コロナ禍以降は日本国内、国外両方の人流が変化していますが、今回はインバウンド需要にフォーカスし、国外からの人流について考えていきたいと思います。

コロナ前後で人流に変化アリ! 
訪日観光客がもっとも多かった国は?

コロナ以前、訪日観光客といえば『中国』からの観光客が多いというイメージを持つ方が多いのではないでしょうか?
しかし、コロナ以降の2023年10月、最も多い訪日観光客は『韓国』です。
現在のインバウンド需要と2019年までのインバウンド需要とは実は中身が変わっているのです。

昨今、訪日観光客の買い物状況がニュースとして取り上げられています。
その背景にあるのは、買い方です。
観光客は一度の購入額が大きく、買い方も高級品だけでなく私達が日常的に接しているものをダイナミックに買うことが少なくありません。
つまり、小売店にとって、インバウンド需要は店舗の売上をつくっていくためにも見逃せない要素のひとつとなっています。

インバウンド需要に応えた店づくり
~なぜドン・キホーテが選ばれるのか?

この人流の変化に対応し、訪日観光客に人気の流通といえばドン・キホーテです。
韓国の大手ポータルサイト『NEVER』では、日本旅行で買うべきもの(おみやげリスト)がリストアップされていますが、買物先としてドン・キホーテの店舗画像が挙げられています。また韓国の個人ブログなどでも日本でのショッピング記事が紹介されているようです。

では、多くの観光客でにぎわう店頭では、
どのような工夫が行われているのでしょうか。

①主要駅まわりの好立地で夜のショッピングに対応!

ドン・キホーテの店舗は、池袋、新宿、大阪、京都など、主要駅周辺に配置されています。
観光客が多いエリアに店舗を構え、アクセスしやすい立地です。ドン・キホーテは24時間営業のため、観光客は日中には観光名所をめぐり、夜間は買い出しを行うなど、観光のスケジュールにあわせて柔軟に買い物を楽しむことができます。

②来店客の需要にあわせた売り場づくり

韓国では「ハイボール」がブーム!
その影響で、ウイスキーが「爆買い」対象商品になっています。韓国からの訪日観光客がウイスキーを大量に購入する光景も珍しくありません。
ドン・キホーテ渋谷店では訪日観光客向けのウイスキーの特設売場(免税)を展開していました。

私達マックスのラウンダー活動で得た知見として、訪日観光客の需要の高さによって店頭の品出しが追いつかず、折角、売り場まで買いに来たお客様が品切れと勘違いして帰ってしまったり、他の商品を買ってしまう=チャンスロスになっている場面もあったようです。

コロナ以前はいわゆる爆買い対策として重点的に品出しスタッフを配置しているメーカー企業もありましたが、今後の対応には多くの需要に応えるだけの定期的な店舗フォロー(売場づくり、メンテナンスなどの各店舗へのサポート)が有効かもしれません。

その理由は、小売企業の本部と個々の店舗の関係にあります。
売場展開の実施は、最終的にはそれぞれの店舗の裁量にゆだねられています。
たとえ、メーカー営業と本部の小売バイヤーとの商談で決定した施策であっても、全ての店舗で売場展開が行われることはほとんどなく、どの商品を売場づくりの前面に押し出すかは店舗担当者の意向と裁量によって決定されます。

そのため、重要な施策を本部で決定することに加えて、個々の店舗の事情に合わせた店舗フォローを行うことが、売上の最大化につながるのです。

③全店舗免税対応×柔軟なアイテムの品揃え

最大化につながる2023年8月現在、ドン・キホーテは全店で免税対応*を行っています。
日本国内で免税対応を行っている小売業は多くありますが、基本的に免税サービスは一部の店舗に限られています。
品ぞろえも、お菓子から化粧品、医薬品まで幅広くそろえているため、他の免税対応の小売業と比較して「一度の買い物でまとめて購入しやすい」のです。

*ドン・キホーテ公式ホームページより。情熱職人業態をのぞく

ドン・キホーテの場合、品揃えに関して、お店によっては定番の取り扱い商品の枠を超えた、多種の製品の取り扱いがあるケースが見られることがあることから、個店裁量の大きさが判ります。

弊社でドン・キホーテの店頭支援を強化しているチームの担当者の話では、あるメーカーの商品Aは一部店舗でインバウンドの来店客に売れていたものの、インバウンドの人流の多いはずの別店舗には配荷のない状態だったようです。

しかし、ラウンダーが巡回している店舗に対して商品Aの案内を行ったところ、未配荷だった店舗で商品Aが配荷され、最終的に商品Aの売上トップ店舗となりました。

『まとめ』

今回は、人流の変化にともなう小売業の変化について、ドン・キホーテを一例に挙げて紹介いたしました。人の動きの変化に対応するには、影響を直接受ける店舗という現場をフォローすることが不可欠です。
ドン・キホーテは変化に対し、訪日観光客に向けた評判形成、店舗ごとの柔軟な対応によってインバウンド需要の影響を売上につなげることに最も成功しているチェーンであるといえます。

しかし、これらの変化はすべての小売業で可能なわけではありません。
インバウンド需要はもちろん、人の動きに店舗が対応してゆくには、現在の小売業界全体の課題である『人手不足』が深く関わってきます。

・本部で決定した売場の展開を行うことができない

・売り場の動きに発注が追いつけない

・プラスαの売場づくりなど、店舗ごとの工夫ができない

上記をはじめ『人手不足』がボトルネックになる状況に小売業、各店舗が対応してゆくことは限界を迎えており困難です。この状況に対応した売り場づくり、そして個店対応には、商品を扱うメーカー側から店舗へのフォローが最も有効かつ効果的です。
メーカーは売場のポテンシャルを最大化でき、小売は最小のリソースで売場づくりを行えるので、双方にとってメリットがあります。
そして、質の高い売り場は、お客さまに商品をより良く届けることができます。

人流の変化をとらえながら適切な店舗フォローを行い、自社の売上の最大化へ繋げていきたいですね。

次回もお楽しみに。


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