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『売ること』のこれから #3



■課題は売り場にあり。

この数年、小売店頭における「人手不足」の問題が非常に大きな影響を及ぼし始めています。
スーパーもドラッグストアも人の確保が悩みのタネで店舗運営の最重要課題となっています。

セルフレジや自動発注といった、DXのアプローチも行われていますが、「人手不足」解決の打開策にまでは至っていません。さらに、人手不足は「物流の24年問題」にもつながっています。
「物流問題」というとトラックドライバーの労働環境問題として取り上げられ、一見、売り場の課題とは関係ないように思われますが、お店に来るトラック配送の便数が減り、店舗側は極力品揃えを抑えて、単品の在庫を多めに持つような動きが増えることで「品揃えの減少」が起こる可能性があります。
売場陳列などの店頭作業にも人手は必要であり、店舗運営の効率化という理由で、品揃えの減少は加速するかもしれません。

この「品揃えの減少」は、流通業界全体にとって大きな問題になってくる可能性があります。


■「品揃えの減少」が予測される時、メーカーと売り場は、なにができるか?

「品揃えが減る」ことで、商品力や交渉力の強いメーカーが有利になり、置いてもらえないアイテムが増えて、苦しくなるメーカーが増えてしまいます。
さらに、このような事態は、メーカーだけでなく、お客様が欲しい商品を届けることができないという、”店舗の魅力低下”という大きな問題につながっていきます。

国内経済では、デフレからインフレへの移行
世界経済の中では、原材料価格の高騰
が並行して起こることで、価格競争の意味が失われつつあります。

つまり、小売企業とメーカーの関係は、これまでの
価格設定を中心としたものから、価格以外の要素も含めてお客様の”信頼”に応えられること
に重心が移っていきます。

ここでは”信頼”と書いていますが、お客様からの”要望”と書く方がわかりやすいかもしれません。お客様の要望を一般的なアンケートで訊ねると「価格を少し下げて」といった回答が少なくありません。
こういった要望には、企業の内部や取引企業、または自然環境などに負荷を転嫁する形で応えてしまうこともできます。
しかし、その先にあるのは「持続性の喪失」「中長期での衰退」です。

「持続性の喪失」「中長期での衰退」の逆となる、「持続的な発展」「中長期での発展」のためには、原点に戻って考えることが重要です。

売り場にとっての原点、それは、お客様に喜んでもらうことではないでしょうか。
今だけではなく、ずっと、お客様に喜んでもらうことが、前述した「信頼に応える」ということと言えます。


■「信頼」を構築するアプローチと空白のピース

メーカー企業にはキャンペーンなどでお客様の声を集める機会がありますが、継続的に、熱心に分析しているということは多くありません。流通企業がPOSデータの分析を充分にできていない状況にも似ています。

お客様との信頼関係は、ただ聴くことだけではつくることはできません。
「信頼」は、伝えることと、聴くことの両方を継続的に行うことから構築することができます。

「人手不足」によって、売り場づくり、メンテナンスが困難になるだけでなく、商品アイテムが棚に並ばない状況も予想されており、この状態が続くと売り場の魅力が低下して、店舗への信頼は落ちていきます。

店頭現場において、買いやすい・選びやすい売場づくり、ワクワクする体験といった「買い物の価値」の構築は、小売企業とメーカー企業との協働が基礎となります。
この基礎からお客様との信頼関係を増やしていくことができます。
小売企業とメーカー企業の協業の基礎づくりが「人手不足」から生じる諸課題に向き合うための一つの道筋なのではないかと私達は考えています。

そして、店頭における「買い物の価値」づくりを成功させるために重要な要素でありながら、空白となっている要素があります。
それは、お客様との信頼関係を構築する、作り手・売り手・買い手をつなぐ要素です。

ここまで述べてきたことが売り場の課題であり、解決の方向性と考えています。
冒頭で売り場の課題は「人手不足」と述べましたが、その先を見据えた具体的な施策についても次回以降で、お伝えしていきたいと思います。

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