「マーケティング」の定義が見直されたことから考える
今年、2024年の1月に日本マーケティング協会からマーケティングの定義の見直しが発表されました。それがこちらです。
マーケティングの定義(2024)
実に、34年ぶりの全面改訂。
いままでのマーケティングの定義とは大きく変化しています。
ここで34年前、1990年の定義を振り返ってみましょう。
以前のマーケティングの定義(1990)
2つの変化-34年間で変わったこと-
こうして比較して、読み比べてみると
2つの変化が読み取れると思います。
1つは、マーケティングの目的。
もう1つは、顧客との関係です。
これまでの(1990年版)では、マーケティングの目的は市場創造のためとされていました。
これが、新しい(2024年版)では、より豊かで持続可能な社会を実現するためとなっています。
バブル景気の終わりは1991年です。古い定義からは当時の空気ー経済活動をすれば市場は拡大して、より儲かり、豊かになるーという認識を感じることができます。
しかし、ご存知の通り、市場は行き詰まり、バブル崩壊後の「失われた30年」の期間に突入してゆきます。(といっても最初の10年弱は、そんなに悲観的な空気はなかったという記憶があります。)
商品やサービスを売ること=セールスとマーケティングを頑張っても、土台である社会が行き詰まってしまっては、どうしようもないわけです。
そうなると、重要になるのは社会です。
おそらくは、そういう振り返りも行われたなかで、物やサービスを売れるようにすることに加え、その先にある「社会」をより豊かで持続可能にするという目的が定義されたのだと読み取れます。
もう1つの、顧客との関係を読み比べてみてください。
これまでの(1990年版)で、顧客は、相互理解の対象でした。
これが、新しい(2024年版)で、顧客は、共に価値を創る存在になっています。
相互理解からさらに踏み込んで、価値を共創するパートナーとも言えそうな存在です。
この2つの変化の変化を踏まえて、新しいマーケティングの定義を読み解くと、
マーケティングとは
社会を豊かにするための信頼構築
と言えるのではないでしょうか。
たくさん売ること、利益を上げること、お得な商品を選んでもらうこと、いずれも、マーケティング活動に包括されますが、その目的は、より豊かで持続可能な社会です。
ここから逆説的に言えることは、社会への視点がなく、ただ売ればいい、利益が上がればいい、安ければいいという売り方、買わせ方は、マーケティングになっていない程度の低い活動とも言えそうです。
昨年、日本広報学会が「広報」の定義を発表したことを記事、
「広報」が定義されたことから考える で紹介しています。
この定義で広報は、”社会的に望ましい関係を構築・維持するための経営機能“と示されています。
社会的に望ましい関係という言葉と、より豊かで持続可能な社会は、とても近い関係にある、あるいは、つながっていると解釈できそうです。
また、最近の記事、
『売ること』のこれから #3 課題は売り場にあり では、お客様との信頼関係を構築する、作り手・売り手・買い手をつなぐことの重要性、可能性に触れています。
広報や売り場の現状を踏まえて、この新しいマーケティングの定義を読み解くと、今行われているマーケティング活動と呼ばれるものが必ずしも、この定義を満たしているというわけではなく、むしろ、いまはまだスタンダードになっていない、これから在るべきマーケティングの姿と言えるものだということも浮かび上がってきます。
一緒に考えてみませんか?
あの商品や、あのサービス、進行中のプロジェクトなどを、この新しいマーケティングの定義に照らし合わせてみた時に何かギャップがあれば、それは対応すべき新しい可能性があるということを意味するはずです。
編集猫 KAURU memo
実は、豊かで持続可能な社会を考える時に不可欠である、それぞれの商品カテゴリーがどうなったらいいか、どういう状態を目指すかというビジョンがないという問題があるニャ。
日本の水産業はどう在るべきか?から、鮮魚売り場や缶詰産業の在り方を戦略的に考えることができますし、同じく、日本の酪農はどう在るべきか?と牛乳やチーズやバター、デザート売り場は直結していますニャ。
日本型の新しいマーケティングをつくりたいですニャね。