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2年前の自分への助言

この文章を,既に学部卒業後は今いる大学の大学院に進むつもりでいる2年前(大学3年8月)の自分に送る。

君がそのような選択(同じ大学の院に進む)に至るのはよくわかる。
先輩の多くがその選択をしている。
尊敬する優秀な先輩がその選択をしている。
その選択が楽で楽しそうに見える。
研究というものに興味がある。
いつの間にか同期が就活を始めていて,今から動き出しても納得の行く企業に入れない気がする。
技術職で働くには修士の方が有利という噂を聞く。
大方そんなところだろう。君がその選択に至った経緯は。

君のそれらの考えについて,君より2年先を生きる私から見解を述べさせてほしい。

まず,「先輩の多くがその選択をしている」ことについて。君と同じようなことを,先輩も考えていたはずだ。そして,君も先輩を見て同じことを思っている。この連鎖は,氷河期や隕石落下などの天変地異が起こらない限り生態系が続いていくのと同様,入学定員変更や院のスキャンダルなど大きな変化が起こらない限りきっと続いていく。君がそう思うのは,自然なことだ。これが自然であると認識した上で,自分はどうするかを考えなければならない。

次に「尊敬する優秀な先輩がその選択をしている」ことについて。あの方々がその選択をした理由は,私にもわからない。君と同じかもしれないし,違う理由かもしれない。気になるなら,聞いてみればいいじゃない。今LINEして聞きなさい。

「その選択が楽で楽しそうに見える」について。
楽かどうかは,実際,楽だと思う。院試は,筆記試験と面接を受けるだけ。就職は,色々ある。倍率も多分就職の方が高い。さらに,同じ大学の院を受ける場合,試験の対策がかなりしやすい。勉強していてわからない問題に出会ったときに相談できる友人がいる。違う大学院を受ける場合,相談相手はいない。仲間を探してもいいが,労力を要するだろう。相談するのもだいぶ気を使う気がする。
楽しいかどうかは,人によるぞ。サークルを過信するなよ。6年意欲が続くのはある種の才能だぞ。今は楽しいだろうが,何があるかわからんぞ。

「研究というものに興味がある」について。
君は,ちゃんと研究したいなら大学院に行くべきという考えなんだろう。でもね,学部4年でも研究するのよ。それはあなたも知ってるでしょ?1年間やるの。「研究がどんなものか」「研究室がどんなものか」は,なんとなくだったらその1年でわかるの。1年で満足しちゃう可能性もあるでしょ?そのときのための選択肢も用意しておいた方がいいと思わない?あとね,院進するにしても「他の大学の院に進む」という道もあるの。東京の大学院に行って一人暮らしする,なんてのもあり。君の学部は結構珍しいところだけど,似た研究ができる研究室は他の院にもある。興味がある研究テーマの先生か先輩に聞いてみんさい。ある本には「同じ研究室に長居するのはおすすめしない」「違う研究室の文化を経験すべき」とまで書いてあるの。どの本に書いてたかは忘れちゃったけど。早よ教えてくれやって感じだよね。自分はそれを4年生の4月に読んで,どうすることもできなかったよ。まあ,今は同じ研究室で同じ研究テーマと長く付き合うのも面白いと思えているけどね。
ついでに,その選択をしたら君はもう2年実家暮らしだけど,大丈夫?君はたまたま実家暮らしのストレスを忘れられているのだろうけど,ちゃんと思い出してみ?私は最近色々あって,noteで親への憎悪と何もできない自分への憎悪について二千字くらい書いて勢いで投稿して,翌朝に我に返って非公開にするということがあったよ。今はなんとかなってるけど。あと単純に,学生のうちに一人暮らししといた方がいいと思うよ。私は今,一人暮らしデビューと会社員デビューがダブルで来ることに怯えているよ。

「今から動き出しても納得の行く企業に入れない気がする」について。まだ間に合う。これに関しては,私も就活を終えていない身だからなんとも言えないが,3年8月ならできることは確実にある。夏のインターンは有名どころはほぼ終わっているだろうが,秋冬にもイベントがたくさんある。「院進するかもしれないけど就活もやってみる」は大いにあり。デメリットが一つもない。サークルはなんとかなるから。どうせ就活はするんだし,今から調べておきなよ。YouTubeに動画がたくさんあるし,大学の就職相談室もある。

「技術職で働くには修士の方が有利という噂」については,私もよくわからない。調べたけど色んな意見があった。わからないから,学士で就活してみて,ダメだったら修士でしてみる,でいいんじゃない。

ここまで,君の考えについて見解を述べてきた。最後に,私は結局その選択をしたわけだけど,してみてどうだったかについて述べる。私は,その選択をして,正解だったと思う。でも,そうなったのはたまたまである。こんな形で同じ大学の院に進学したことを感謝することになるなんて思ってもみなかった。

君がいるのは2019年の夏だよね。信じられないと思うけど,約半年後に,君は突然一人になりたくなって,SNSを全て消去して,他人との連絡を最小限に抑えて読書とYouTube視聴とラジオ聴取と散歩にふけり始める。さらに,今の君からすれば異常に思えるその生活が簡単にできる世の中になる。サークルがなくなる。授業はオンラインになる(4年生だからそもそも少ないけど)。
そしてしばらくして,本や動画やラジオの影響で,自分の考えを外に出すという趣味に出会う。文章や喋りで。働きながらや,外部の大学院で一から人間関係を構築しながらこれに打ち込むのは難しかったと思う。要するに,色々あって,熱中できることに出会えた。だから,今の刺激の少ない環境でも楽しくやれている。

今はこの環境で良かったと思うけど,もし今の自分が大学3年生なら,そんなの予想できないから間違いなく,就活をして,外部の大学院も受験すると思う。就職したい。金を稼ぎたい。経済的に自立したい。それが無理なら,せめて一人暮らししたい。そう思って行動する。最終的に今と同じ結果になったとしても,考えられる選択肢をやり尽くして得た結果だからかなり違う。後悔がなくて素晴らしい。今の環境が効果的に作用しているのは,ただの偶然でしかない。こうなった保証はどこにもない。2年前の自分にはもっとちゃんと考えて,周りに流されず,短期的な楽に流されず,能動的に動いて欲しかった。

じゃあね。頑張ってね。

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