読書日記: この年齢だった!
高校生の頃初めて観た、イタリア映画「ニューシネマパラダイス」。ストーリーも、思わずため息がもれるほど美しい音楽も魅力的だったけど、何より忘れられなかったのは、主人公トトが何十年かぶりに故郷に帰ってくる場面だった。いつか私も自分が育った町を出るのだろう。まだ自分の将来も未来も分からなかったけど、そう予想したのはこの時だ。
そしてその後監督のジュゼッペ・トルナトーレが撮影当時32歳だったということを知り、死ぬほど驚いたのを覚えてる。それこそ「何十年ぶりに故郷に帰った」トトのように、50歳を過ぎた監督だと思っていたから。彼の人生には一体どんな出会いがあり、どんな決断があって32歳であの映画を撮ったのだろう・・・。
この本を読み終えた時、久しぶりにそのことを思い出した。「この年齢だった!」(酒井順子)は昨年一時帰国した時に購入した本で、女性27人の転機となった年齢に焦点を当てたエッセイ。この時彼女は○○歳だった、という事実は今の時代Wikipediaでも調べられるけど、当時の時代背景や彼女たち一人一人の性格なども分析されていて、彼女たちの人生をまた違った視点から知ることができる。
紹介されている人も、作家、歌手、首相、物理学者とラインナップ豊富。日本人だけではなく、アメリカ人、ポーランド人、イギリス人も紹介され、特に印象的だったのは、宇野千代、キュリー夫人、レディーガガ、ビクトリアスポター、そして岡本かの子だ。ページをめくる度に、たった480円+税で27人分の人生を読めるとはなんてラッキー、と思う本でもある。
いつ、どこで、どんな風に待ち受けているかなんて、誰にも分からないのが転機。人の数だけ、いや人の数以上に転機となる瞬間があるはず。並外れた情熱を持ち、全ての出来事を転機としてより美しくなっていく宇野千代。「女子高育ちであったバックグラウンドが、彼女の生き方に影響を与えたのでは」という分析があったレディーガガ。そして「豊穣なる人生でした」と表現されている与謝野晶子。
ネタバレになるのは嫌なので、詳細は割愛するけれど、27人の人生を読みながら「自分だったらこの時どうしてただろう」とずっと想像力を膨らませて読み進めた。こうやっての偉人の転機を読むのが楽しいのは、自分の人生と照らし合わせてヒントをもらったり、勇気をもらったり、インスピレーションを得られるからなのだろう。
小3で学校で習った民舞に夢中になったこと、小4で友達のバレエの発表会を観に行ったこと、小5で初めてドイツ映画を観たこと、英語の授業に力を入れた高校に入学したこと、大学卒業後は予備校で働き出したこと・・・。全く違う人生を歩んでいる彼女たちの人生と自分の人生に共通点はほとんどないけれど、今の私を形成した時期や出来事を思い出し、私の人生も小さな「転機」によって作られていることに気が付いた。
では、私の人生を作った人には、どんな転機があったのだろう。
ジュゼッペ・トルナトーレ
米原万里
エーリッヒ・エストナー
寺山修司
東村アキコ
ココ・シャネル
IU
アストリッド・リンドグレーン
いつか、私も書いてみよう。 私の世界を広げてくれた、彼らの人生を。
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