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夏の空を見上げたか

列島を台風が通過する季節になった。
近年夏は早々にやって来て、なかなか終わらない気がするのに、
気付けばセミが肩身狭そうに鳴き、スズムシが主役を変わろうとしている。
こんな今だって変わらず暦どおりなのだ。

先日仕事帰りの通勤電車で、偶然ボックスシートの車両に乗り合わせた。
進行方向に向かって腰掛けた独り占めの4人席、右側には大きな車窓。
一度もちゃんと見たことのなかった、働く街の空が広がる。
入道雲がぽっかり青空に浮かぶ、夏らしい風景。
ぼーっと空を眺めたのはいつぶりだろうと考えた。

子どもの頃はもっと空を見上げていたはずだ。
絵日記の宿題ではむくむくした雲と夏の空をスケッチして描いていたし、
家族旅行では黒く静かな森で満天の星空を口を開けて見つめた。
美しくてどこか物哀しい、セピア色の大輪の花火が瞬く空や、
とんぼが飛び交うとても大きなひまわり越しの透き通る青空だって知っている。
どれも最近めっきり見なくなった。

建物の隙間から見るそれはいつも歪な四角で、
雲も月も星も見つけられない。
日傘を差して過ごす夏は、気づけばアスファルトばかり見ている。

決めた。
次の休みはだだっ広い青空に抱かれよう。
無限に広がる青に、ほんのちっぽけな自分。
人間ひとりの小ささに愕然としながら、どこか諦めもつく。
果てしなく広がる天は、私がどこにいても見守ってくれている。
壮大なる俯瞰による現在地の確認。

できれば四季が移ろうごとに、これをしたい。
その場所にともにある、暦どおりの風景を感じながら。

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