見出し画像

マイボトルで規格外青果スムージー運動


はじめに

2017年12月(白鳥,3回生),白鳥は「廃棄野菜・果物のスムージー提供とマイボトルのさらなる推進」というテーマでサステイナブルキャンパス・アイデア・コンテスト2017最優秀賞をいただいた.

最優秀賞のアイデアは大学の資金援助を受けて実現されることになっていた.

2018年(白鳥,4回生)になって,白鳥は立命館大学地球環境委員会(財務部管財課)と実現プロセスについて話し合いを始めた.

スムージーとマイボトル

Sustainable Week(以下,SW)2017実行委員長であったBさんがスウェーデン視察に行った際に発見した,形が崩れていて販売できない規格外野菜や果物を使ったスムージーを販売する活動について教えてくれた.

研究室の先輩らとラーメンばかりを食べていた白鳥は,オシャレでヘルシーな「スムージー」に関心を寄せ始めていた(レーザー分光物理学研究室についての記事は現在執筆中).

白鳥がびわこ・くさつキャンパス(以下,BKC)の学生(321名)に対して実施した「食,環境に関する意識2018アンケート」では,約7割の学生が「率直に言って,野菜不足である」と考えており,野菜不足を感じている学生は白鳥だけではないという確信を得た.

「食,環境に関する意識2018アンケート」結果1.

さらに,BさんとUさんは前年2016最優秀賞でマイボトルの配布を実施しており,マイボトルのニーズがまだまだあることも教えてくれた.

白鳥はプラスチックゴミの問題をインド現地で見てきたにもかかわらず,ペットボトル飲料を買うことをなかなかやめられずにいた.

アンケートでは,約9割の学生が1週間平均でペットボトル飲料を少なくとも1本は購入していることがわかった.

「食,環境に関する意識2018アンケート」結果2.

このデータをもとに,BKCを2万人規模のキャンパス,空のペットボトル1本15gと仮定して,全員が毎週1本ペットボトル飲料を使用した場合,BKC全体で毎月1.2トンのペットボトル排出量となり,毎週2本の場合は毎月2.4トンとなる.

2017年度のBKC内での実際のペットボトル排出量は毎月少なくとも1~2トンなので,大雑把に「BKC全体で毎週1~2本ペットボトルを廃棄している」と言うことができる.

2017年度のキャンパス内のゴミ箱に捨てられたペットボトル量.

そこで,白鳥は「野菜不足解消」と「脱ペットボトル飲料」を一気に解決する方法はスムージーをマイボトルと一緒に配布するイベントの実施であるという結論に至った.

SDGsによる「お墨付き感」

白鳥は,2017年10月に開催したSW2017を通して,SDGsに落とし込むことにより活動に「世界のお墨付き感」を与えることができることを学んでいた.

野菜不足解消は「3.すべての人に健康と福祉を」,そして脱ペットボトル飲料は「12.つくる責任つかう責任」と「14.海の豊かさを守ろう」に関連している.

さらに,そのスムージーを「形は不揃いだが味や安全性には問題がない規格外野菜や果物」で,しかも地元の草津産の野菜や果物を使って提供することで,「15.陸の豊かさも守ろう」に繋げることができると考えた.

最後に,できる限り多くのステークホルダーを巻き込むことで,「17.パートナーシップで目標を達成しよう」につなげようと試みた.

このように,活動の意義をSDGsを通して考えてみることで,別の親和性の高い要素を組み合わせる着眼点を得ることができるかもしれない.

マイボトルの中身も考える

マイボトルを配布するだけではなく,規格外野菜や果物を使ったスムージーも一緒に提供するという点が,2016年最優秀賞「ペットボトルの削減を促すマイボトル+R」との差別化のポイントであった.

さらに,マイボトルの使用を継続してもらえるようにマイボトルの中身を供給し続ける仕組みも考えていた.

そこで,注目したのが「リフィル(汲み直し)」であり,マイボトルを使用するインセンティブとして,カフェなどでの割引や無料で水を補充することができる仕組みを整えることを提案した.

大学生活協同組合,生協学生委員会,「知るカフェ+」という学内のカフェ,そして2016年に完成したばかりのスポーツ健康コモンズに協力を要請した.

今回の主要な協力者たち.

後の2018年夏,白鳥は研究インターンでテキサス州ヒューストンにあるRice Universityに滞在していた.

アメリカのジムや空港によく設置されているウォーターサーバーなど「リフィルシステム」を発見して,多くの人が日常的にマイボトルを使用している様子に驚いた.

このウォーターサーバーの右上の小さいディスプレイには「Helped eliminate waste from 00015505 disposable plastic bottles」と表示されている.

Rice Universityのウォーターサーバー.
Rice Coffee Houseの$1リフィルコーヒー.

また,Riceに進学し,UIUCに転学した2024年に開拓した大学内のカフェでは,リフィル1回$0.88という破格の安さを記録した.

企画実行のプロセス

規格外草津青果の調達

まず,白鳥自身が草津野菜や果物を知る必要がある.

そこで,草津農家である小笹農園横江ファームにアポをとって,企画趣旨等のプレゼンや農場見学のために何度か訪問させていただいた.

5月19日に訪問した小笹農園では,ビニールハウスに案内していただき,「そこのほうれん草,作りすぎちゃったから好きに持っていって」というお言葉に甘え,一袋いただいたことを覚えている.

農家さん側でも市場価値によって出荷量を調整されているようで,廃棄されるのは決して規格外野菜だけではないのかもしれないと思った.

「作りすぎちゃったほうれん草のビニールハウス」の様子.

さらに,メロンの直売開始直前の6月12日に再び訪問し,ひびが入った規格外メロンを何玉かいただいた.

いただいた規格外メロン.

6月19日に訪問した横江ファームでは形が崩れて出荷できない人参をいただいた.

形が崩れて出荷できない規格外人参.結構卑猥.

これらの野菜はスープに調理し,メロンはダメージを受けている部分をカットすることで,美味しく召し上がることができた.

小笹農園から規格外メロン10玉を格安の4200円で,横江ファームからは育ちすぎてしまった小松菜を無料で譲っていただいた.

スムージーマイボトルを配布する直前の7月27日に,白鳥は原付でメロンと小松菜をピックアップしに行った.

何のコネクションもない大学生に対しても,真摯に対応し,協力していただいたことに感謝である.

残念ながら,草津特産品の一つである「あおばな」は農家さんとコンタクトを取ることができなかったため,農協で購入した.

スムージーレシピの開発

次に,スムージーをどのようなレシピで調理するかである.

草津農家さんから事前にメロンや小松菜のサンプルをいただいており,友人に借りたスムーザーで試行錯誤しながらスムージーを調理していたが,うまくいかなかった.

白鳥のスムージーの調理経験は皆無であり,なんで1人でできると思ってしまったのだろうか.

そこで,SOIL&SOULボドゲ交流会の常連であった草津市民のママさん方に,レシピ開発のお手伝いをしていただいた.

ママさん方は,草津おみやげ隊(現,草津おみやげラボ)に所属されており,市民活動にとても協力的な方々であった.

試行錯誤の結果,ママさん方も認めたレシピを開発することができた.

開発したメロン小松菜スムージーレシピ.

スムージー調理とリフィルシステム

次なる課題は大学のどこでスムージーの調理をするかである.

スムージーマイボトル企画は夏のため,野菜や果物が傷んでしまう恐れなどの食品衛生上の課題も浮き彫りになった.

そこで,場所と衛生面の問題をクリアするために,大学生活協同組合,特にセントラルアークに位置しているドリームクロスカフェに調理加工保存をお願いした.

さらに,大学構内にある知るカフェ+では,本イベントで配布したマイボトルを持参すると,持ち帰りドリンクが50円も安くなるようにしてもらった.

SOIL&SOULに登壇してもらった友人がちょうど知るカフェの学生店長をしていたおかげで,交渉はとてもスムーズであった.

さらに,熱中症対策も兼ねて,スポーツ健康コモンズのウォーターサーバーからマイボトルへの給水を促すポスターも製作した.

「大迫半端ないって」が当時も流行っていた.

白鳥からスムージーマイボトルの手渡し

7月13日にドリームクロスカフェ前で,白鳥による草津野菜の説明とスムージーボトルの手渡し販売が実施された.

スムージーボトルの配布現場.

SDGsと知るカフェデザインのオリジナルステッカーを貼ったマイボトル100本を,先着で事前に募集し,使用頻度をモニターすることを考えた.

LINE@をイベント広報やアンケート催促に使用し,企画実施時アンケートを82名から,1ヶ月後のマイボトル使用状況アンケートを56名から回収することができた.

結果,企画自体の高い満足度とは裏腹に,約5割以上が一度のマイボトルの使用で断念してしまっていたようである.

1本100円での販売は,無料だとすぐ使わなくなってしまうかもしれないので,100円払うことによるサンクコスト効果を狙っていた.

スムージー原価52円,ステッカー付きマイボトル原価788円で,一本当たり840円のところを100円で販売したので,赤字であるが,収支はここでは問題としていない.

また,ここで配布したマイボトル以外でも割引が受けられるように,知るカフェのステッカーも配布した.

知るカフェ+でのビラ.

こうした働きかけにより,多くの人を巻き込むマイボトルのムーブメントを目指した.

報告書作成

最後に,企画の背景,手法,実施前後のアンケートの結果を含めた,活動報告書を作成した.

白鳥にしかできないこと

この活動は白鳥がこれまでに構築した大学,地域,学生とのネットワークをフルに活用した.

SOIL&SOULと同様に,ほとんど1人での活動が多くしんどいことが多かったが,「これは白鳥にしかできないことかもしれない」と自分に言い聞かせて,乗り越えることができたと思う.

誰かが常にプレイヤーに

この取り組みは大学の記事として取り上げてもらった.記事内で結構キャッチーなコメントができたので,引用しておきたい.

地球にも財布にも優しくホットな夏をクールに乗り越えてほしい.

Katsuya Shiratori

また,後に実働で協力してくれた友人(記事内写真左から1番目)くさつFarmer's Marketというイベントを始めた.

くさつFarmer's Marketはコロナ禍を経た2025年現在も継続している.

おわりに

「地元野菜を食べること」と「不要なペットボトル使用やフードロスを減らすこと」などは一定の共感が得られやすい.

しかし,その共感を一つの活動に統合,昇華する役目はいつでも大変であり,その分やりがいが感じられる.

これまでの学生活動の集大成として,数々のステークホルダーを巻き込みながら,これまでにないことを徹底的に実行したつもりである.

企画の最終目的は「草津野菜を持続可能に消費する、そしてマイボトルの使用が続くサステイナブルキャンパスのモデル立案」であったが,これはプレイヤーが変わりながら,達成されるべきものだと信じている.

最後に,この活動に共感して参加してくれた多くの方々に感謝したい.

白鳥正課外活動編 The End.

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集