虹色の雨
むか〜し、むかし、キミ達の知らない世界のお話。
雨の降らない、干からびた世界のお話。
あるところに、いつも泣いている男の子がいたんだよ。
その子の名前は太郎。
太郎はね、今よりちょっと昔に、お外で遊んでいる時に、犬のしっぽを踏んで犬に噛まれ、
太郎『えーん、痛いよー、えーん』
と泣き。続けて、カラスに頭をつつかれ、
太郎『痛いよ、やめてよ、えーん、』
と泣き。転んで毛虫にさされ、
太郎『やだー、キモイよ痛いよ、えーん』
と、立て続けに泣いたら、
ショックで、涙が止まらなくなったんだって。それからずっとずっと、泣いていて、何を言われても、何をされても、涙が止まらなかったんだってさ、
太郎『なんでだよー、涙が止まらないよー(T_T)』
初めは心配だった家族もお友達も、今では、みんなから『泣き虫太郎』って呼ばれて嫌がられて、いじめられ、そのうち、『おーい太郎』と呼ばれただけで泣いていたんだ。
太郎『もうこんな自分やだよ。』
そんなある日、いつものようにお外で、一人で太郎が泣いてた、その時!!お空が、七色に光りました。
太郎『こわいよー、なんなんだよー、えーん』
と、太郎は、泣いてしまった。
すると、お空から、
綺麗な綺麗な七色の着物を着たお姫様が、降りてきました。
太郎『えーん、綺麗だよー綺麗な女の人だよー、えーん』
と、泣いていたら、
七色姫『あなたの涙、私にちょうだいな。』
太郎『え、ほんとに。』
七色姫『そうよ、あなたのその美しい涙がほしいのよ。』
太郎『なんでー、えーんえん(T_T)』
七色姫『私はね、七色姫、七色の虹の神様、太郎が生まれた時から私はあなたをお空から、ずっと見てきたの。』
太郎『えーん、ストーカーだよ、えーん、』
七色姫『すとーか?ま、そんな、事はどうでも良いの、あなたの、その涙は、とっても綺麗ね。』
太郎『えーん、ありがとう、そんな事言われたの、初めて』
七色姫『あら、そう?』
太郎『うん、ぼく、いつも泣いてばかりで迷惑かけてみんなからイジメらているの。』
七色姫『あら、それは、可哀想に、けどね、私はあなたのその涙、とても美しくて、愛おしい。』
太郎『ぼくは、泣き虫で、みんなから邪魔者扱い、えーん、生まれてこなかったらよかったんだよ、えーん』
七色姫『そんな事はないのよ。太郎、あなたは、『使命』を持って私の目の前にいる。あなたにしかできない事があるの、必要のない人なんかいないのよ。』
太郎『シメイ?』
七色姫『そう、使命、あなたは、神様に選ばれたの、太郎がこの世界でしなければならない事があるの。』
太郎『なーに?』
七色姫『私と一緒に、世界中の空から涙を降らすのよ。』
太郎『え、ぼくの涙を降らす』
七色姫『そうよ、あなたの涙が必要な人達が沢山いるの。』
太郎『ぼく、人の役に立てるの?』
七色姫『そう!私と世界を、周る旅へ行きましょう。』
太郎『えーん、えーん、行くよー、ぼく誰かの役に立ちたいよ』
七色姫『では、おいで、あなたの涙で
私や沢山の人達を虹色に照らしてあげて。』
太郎『うん』
そういうと、太郎は、七色姫の差し出した手を握りしめ、空高くへと飛んでいきました。
すると、
七色姫『さあ、太郎、沢山お泣き、だれも怒らないし、困らないのよ、だから沢山お泣き。』
太郎『えーん、嬉しいよ、えーん』
すると、
太郎の涙が、七色にひかり、沢山の量の涙が地上へ降り注ぎました。
雨の振らない世界に、太郎の涙が雨となり、
降り注ぎました。
雨の振らない干からびた地に潤いができ、沢山の作物ができました。
太郎は、楽しそうに楽しそうに泣き、
その後には、必ず、綺麗な七色の虹が出るようになりました。
太郎『えーん』
七色姫『あなたは、必要なの、この世界に、必要なのよ、もう誰も役立たずとは言わないわ。』
と、太郎のお陰で、世界中が潤い、虹色に照らされ、彩り、沢山の作物が育ち、皆が笑顔で幸せになりましたとさ。
おーしまい。