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輝き姫
むか〜しむかし、君たちの知らない世界のお話し。
あるところに、と〜っても我儘で自分勝手なお殿様がいたんだって。
そのお殿様は、美しいもの、珍しいもの金銀財宝が好きで、ありとあらゆるものを家来達に集めさせ、気に入らないものあれば、
殿『こんなものいらぬ!すぐに新しいものを持ってまいれ!』
と、我儘放題。
殿『全てわしのものじゃ!』
と、自分勝手。
家来達は、呆れ果て、だーれも殿様を好きなものはおりませんでした。
そんなある日のこと、ある村に、月の輝きのようにとてもとても美しい、輝き姫という女性がいるという噂がありました。それを聞いた殿様は、家来に命令し、すぐに輝き姫を連れてくるよう命じ、
城へと連れてこさせました。
殿『よく参った、そなたは今からわしのものじゃ』
と、また始まったと言わんばかりに、家来達は、呆れました。
すると、
姫『わかりました』
と、答えました、家来達はびっくり!
殿様も、あまりに素直な答えに、驚きました。
姫『一つだけお願い事があります。』
殿『な、なんじゃ??』
姫『わたしに、【愛】というものをくださいな。』
殿『愛とな!?そ、それは、どういうものじゃ!何処に、いけば買える?何処を、探せば見つかる?』
姫『さぁ〜、それはわかりません、愛とは、とても優しく柔らかく温かく、キラキラとしたもの。とびっきりの愛を私にくださいな♥』
殿『よーし、わかった!皆のもの!愛を探してくるのじゃ!見付けたものには、この城の金銀財宝好きなものを褒美とする!』
と、張り切った殿様は、家来達に命令しました。
次の日から、沢山の愛のようなもの(笑)が家来達に、より届けられました。
キラキラした宝石、
高級な布、
中には、何処で見つけてきたのか、黄金に輝く龍の大きな像までも!
ありとあらゆる、愛のようなものが集められました。
殿『どうじゃ?輝き姫よ、沢山の愛が揃ったぞ!満足か?』
姫『少し、散歩に、でませんか?』
と、殿様を散歩に連れだしました。
殿『どうした?気に入らなかったか?何が、不満じゃ?』
と、二人の前に、傷付いた一匹の雀がおりました。輝き姫は、その雀を手のひらに乗せ、殿に言いました。
姫『可哀想なコ、どうかこの雀を救ってやってください。』
すると、殿様は、
殿『そのような小汚いものは、放っておけ、すぐに、立派な鷹でも姫にやろう!』
それを聞いた姫は、しくしくと泣き始めました。そして、
姫『なんと、可哀想な。この子は一生懸命生きようとしています。この子は、一人ぼっち、どこかの誰かに似ておりませんか?』
殿『な、何を言っておる、放っておけばいずれは死ぬ。わしには関係ない。』
と、いきなり輝き姫は、殿様の頬をピシャリ!とはたきました。
殿『何を無礼な!』
姫『無礼なのは、貴方様です!この子の命は、かけがえのない命、どんな命にも放っておいて良いものはないのです。』
殿『もうよい、散歩はやめじゃ!わしは帰る!』
姫『おまちなされ!このまま帰るのならば、私はもうあなた様の傍にはいません、わたしの村に帰らせてもらいます。』
殿『な、な、ならぬ!わかったから、その雀の手当を、、する。だから、わしから離れるな。』
姫『ふふふ、そんなあなた様、好きですよ。』
と、殿様の、顔は、みるみるうちに真っ赤かになりました。
殿『さ、か、かえって手当じゃ(汗)』
と、城に、帰り二人で雀の手当をしました。
家来達は、殿様のその様子を見てとてもとても珍しがりました。
そして、次の日も、その次の日も、殿様は、輝き姫と散歩に、出かけるようになりました。
それから、殿様は、虫も草木も生きている事、花に水をやらなければ枯れてしまう事までいろんな事を姫から教わり、その度に、殿様のトゲトゲしていた心は柔らかになっていきました。
殿『わしには、味方などおらんかった。そして、わしは、いつも一人じゃった、幼き頃に父上母上に先立たれてからは、家来達に甘やかされ、我が儘に育ってきた。こんなに温かな日々を過ごすのは初めてじゃ。』
姫『そんな事はないのですよ、あなた様には沢山の仲間がおります。あなた様が心を開かなかっただけ、こんなにも温かな優しき心をお持ちではありませんか、あなた様の心がこの子を救ったのですよ。』
と、殿様の肩には、手当され元気になった雀が乗っておりました。
殿『かわいい子じゃ♥』
姫『そんな、あなた様もかわいいですよ。ふふふ。』
殿『な、からかうで無い。わしは、そなたと出逢い、心がなにやら、とても優しく柔らかく温かく、キラキラとなった気がする。そうじゃ!そなたの言っておった【愛】とやらは、いったいなんじゃ、家来達もまだ見つけられずにおる。』
姫『あら、それならもう私は、あなた様から受け取っておりますよ。』
殿『ん?どういうことじゃ?さっぱりわからん!またそのような、難しい謎解きを、いったいどういう事じゃ?』
姫『ささ、私はお腹が空きました、城へ戻りましょう。』
と、二人は城へと戻りました。そして次の日、殿様は輝き姫を、散歩に、誘おうとしましたが、姫の姿がありません。
殿は、家来達と、共に姫を一生懸命に、さがしました。
殿『姫ーっ!輝き姫っー!』
と、ありとあらゆる場所を、姫のいた村にまで行きましたが、何処にもおりません。
途方に暮れ、家来達と城に戻りました。
そして、どこからともなく、一つの手紙をくわえた雀がやってきました。
殿『なんじゃお主、どこへ言っておった?ん?それは、なんじゃ?』
と、殿様は、手紙を開き読みました。
姫
『愛しき愛しき殿様へ、
勝手に居なくなり、お許し下さい。と〜っても我儘で自分勝手なお殿様のお噂、届いておりました。いつかわたしの元に来られる事も分かっておりました。私は、月の使者、月の光の中へと、戻らなくてはなりません。私はね、ずっとあなた様に、会いたかったの。きっと、と〜っても優しく柔らかく温かく、キラキラとした心を持っていると、感じていたから。
そして、わたしと同じ一人ぼっち。わたしも、一人で、生まれ、ずっと一人でいたから。あなたと出逢うこと、わたしの使命だったの。
そして、いずれ別れる事も。
許してね、お殿様。あなたの悲しむ顔はみたくなかったから。
あなたは、これからも、優しく柔らかく温かくキラキラとしていてね。
約束ですよ。
最後に、
さようならと言えなかった事、ごめんなさい。
心から、愛しております。』
と、手紙を読んだ殿様は、家来達の目もはばからず、泣きました。涙が溢れて溢れて止まりません。それを見た家来達もまた、泣きました。雀も殿様の肩の上で泣いていました。みーんなで、わんわん泣きました。
殿『今なら分かる、これが、そうなのじゃな。この優しく柔らかく温かくキラキラしたものが。わしは、そなたに出逢い、とても幸せじゃった。わしも、愛しとる。』
と、見上げだ、夜空には、まんまるお月さまがキラキラ輝いておりました。
少し微笑んだようにも見えました。
おーしまい。