将来の自分の上司をジョブインタヴューで選ぶ ー アメリカでの転職
僕はアメリカの製薬会社で働く日本人研究者です。10年間働いたカリフォルニアにあるビッグファーマを去り、東海岸ボストン近郊にある小さなスタートアップバイオテックカンパニーに転職し、最初の5週間を過ごしました。転職してもしばらくはカリフォルニアからリモートで働いています。3時間の時差があるため早朝6時に仕事開始で奮闘中です。早くボストンに引っ越したい。。。
転職先は100名ちょっとのスタートアップカンパニーのため、僕が入った8月末以降もどんどん新たな人が入り、入社後1か月たてばもう新参者面して「色々教えてください」などと悠長なことは言ってられない状況です。これまで僕の上司はChief Scientific Officer (CSO)という研究開発部門のトップの方でした。しかし、さらに人が増え組織が膨張していくため、CSOと僕の間にSenior Vice President (SVP)を採用して、新たに入るSVPが僕の直属上司となる予定です。
今回は、自分の将来の上司をジョブインタヴューするという貴重な経験したので、それを書きます。
計3名の候補が、Senior Vice Presidentのポジションに応募してきました。インタヴューアーとなるのはCEOはじめ各部門の代表と、この新たなSenior Vice Presidentの直属の部下となる僕ともうひとりで、合計で10名でした。
応募されてきた候補者は3名とも、世界でも有数のビッグファーマで、かなりの数の部下を率いる部門のリーダーをしているそうそうたる方たちでした。僕も1か月前にビッグファーマから小さなスタートアップカンパニーへ転職したばかりなので、どんな理由で彼らが応募してきたのか興味津々でした。
最初のひとりは、カナダ人の女性。おそらく自分よりも5歳以上は年下。インタヴューした3人の中で最も切れ味がある才女。ビッグファーマから小さな会社でのリーダーまで経験豊富。もし会社に入ったら、自分の部署だけでなく、他の部署にもいろいろ働きかけられるやり手のリーダーになるなと感じました。ただし、僕自身もしっかりしたパフォーマンスを発揮していかなければ、早々に見放されてしまうかもしれないと、厳しい上司になる予感もしました。
2番目の応募者は、何と僕の前にいた会社の直属の上司。打ち合わせたわけでもなく、本当にすごい偶然で、僕の転職した会社に応募してきたのです。以前の会社での僕との関係は大変良好。僕も彼の下で気持ちよく働き、最後のプロジェクトを大成功に終わらせ、晴れて惜しまれながら、エールを送ってもらいながら転職できました。インタヴューの時には、このあまりにもの偶然に驚きましたが、僕とまた一緒に働けるかもしれないことに彼もさらに喜んでくれました。もちろん、僕もまた彼の下で働けたら、以前と同じように気持ちよく働けるなと感じました。
最後の応募者は、僕とほぼ同じ年齢の男性。アメリカ人としては珍しくこれまでは全く転職せず、ずっとビッグファーマ内で部署を移動しながらキャリアを積み上げていった方でした。もちろん素晴らしいキャリアを積み上げている方なのですが、3人の中では、僕にとってはもっとも目立たない存在でした。
もちろん詳細な応募理由は3名とも異なりますが、誰もが、ビッグファーマでは味わえない、小さなスタートアップカンパニーならではのダイナミックでエキサイティングなプロジェクトへの関わりに飢えて、応募してきたと感じました。実際の僕の転職理由もそれに重なるので、よく理解できました。
インタヴューアーである10人が全員、応募者3人のインタヴューを終えた時点で、ビデオミーティングを開いて感想を言い合いました。僕は、カナダ人女性を1番、僕の元上司を2番、そして最後にインタヴューした男性を3番と順位付けしました。自分の元上司が、もう一度、今の会社でも上司となったら、やりやすいことはやりやすいですが、自分の成長のためには転職した意味がなくなってしまうと感じました。一方、カナダ人の女性が上司となったら、いろいろなチャレンジが自分に降りかかるかもしれないとは思いました。でもその分自分の成長の機会もあると思えました。会社の成長にとってももっとも貢献できる上司になるだろうと思えました。
意見はインタヴューした10人の間でかなりバラバラになりましたが、僕と同じランク付けをした人が若干多くなりました。おそらく僕の上げた順でジョブオファーを出していくことになりそうです。今後、誰が僕の上司として入ってくるか、ハラハラドキドキです。