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アメリカでの転職 1on1ミーティングを最大限に活かす戦略

僕はアメリカの製薬会社で働く日本人研究者です。10年間働いたカリフォルニアの大きな会社を辞め、東海岸ボストン近郊にある小さなスタートアップカンパニーへ転職しました。転職してもしばらくはカリフォルニアからリモートで働いています。転職後、新たな会社でうまく仕事に馴染んでいくためにとても重要となる1on1ミーティングについて、僕が使っていて非常に効果のある戦略を書きます。

入社してから4週目に突入し、以前に記載したFirst 90 Days計画(最初の3か月間で転職後のトランジションを完了させ、成功させ、会社に貢献できる位置づけになる)を進めているところです。

これまでの会社でも上司や同僚との1on1ミーティングはたくさん経験してきましたが、転職後は、特に新たな会社のあらゆる情報を効果的に学んでいく上で、1on1ミーティングはとても有効かつ重要なものだと思います。

転職後、最初の3週間のうちに
・直属上司との週1回の1on1ミーティング
・自分のグループの部下との週1回以上の1on1ミーティング
・他部署のキーパーソンとの1回限りの1on1ミーティング
などを行ってきました。

上司や部下との1on1ミーティングを劇的に有意義なものにするミーティングアジェンダ

直属上司や部下との1on1ミーティングで特に有効となることが、ミーティングアジェンダを作り、ミーティング前に送ることです。
・ワードファイル1ページ程度に要点だけをまとめたごく簡単なものでOK
・タイムリーなアップデートにすることが重要なので、ミーティングの前日
 か当日早朝に仕上げて、前日の午後か朝一番に送る
 (何日も前に作成しても、タイムリーな最新情報が盛り込まれていなけれ
  ば意味がない)
・相手が事前に読む必要はなく、重要な点はミーティング中に説明する旨を
 伝えて、相手に安心してもらう
などが、労力をかけず、とても効果的な1on1ミーティングにするコツです。
例えば、僕の上司との1on1ミーティング当日の朝一番に送ったワードファイルが以下のようなものです。

1on1ミーティングのアジェンダの例

カツ 9月10日アップデート
転職後のトランジション (現在3週目)
・各プロジェクトのコアチームミーティング、各部署のキーパーソン、
 コンサルタントとのミーティングを一通り終え、順調に
 トランジションを進めている
自分のグループの運営
・部下・チームメンバーとの仕事配分
・コンサルタントの使い方
プロジェクトA
・試験A-1
  位置づけ:プロジェクトを進めるために必須の最重要試験
  進捗状況:評価の最終段階、スケジュール通り
・試験A-2
  位置づけ:プロジェクトを今後拡大させていくための可能性を探る試験
  進捗状況:試験計画段階 ドラフト案を他部署に提示して賛同を得る
プロジェクトB
・実施中の試験なし
・臨床で問題となっている副作用について非臨床からサポートできること
  進捗状況:現在検討中。2021年中にアクションアイテムをまとめる予定
プロジェクトC
・試験C-1, C-2, C-3
  位置づけ:最重要試験C-4の試験デザインに必要な予備検討
  進捗状況:試験結果はすべて入手済み。10月末までにレポート完了予定
・試験C-4
  位置づけ:プロジェクトを進めるための必須最重要試験
  進捗状況:試験計画段階。9月中に計画を最終化し、試験を開始
       12月中に結果入手。1月中にレポート最終化
チームメンバーの育成
・部下Aの社外学会Aへの入会・教育コースへの参加のサポート



ミーティングアジェンダを効果的なものにするコツ

・大から小へ
当然ですが、全体的なハイレベルな項目から始め、徐々に詳細なひとつひとつのプロジェクトの内容に進めます。転職して間もない僕の場合でしたら、自分の転職後のトランジションが順調に行っているかどうか、自分のチームの全体的な運営についてから始め、その後、各プロジェクトへのアップデートへ移ります。
・優先度の高いプロジェクト・アクションアイテムから
これも当然ですが、優先度の高いものから順番にアジェンダに組んでいき、重要な項目を話し合うのに十分時間が取れるようにします。
・チームミーティングのアジェンダよりも、すこしアップデートを加える
チームミーティングでは、アジェンダは検討項目だけを記載しますが、上司や部下との1on1ミーティングの際には、それより少しだけ詳しく自分のアップデートも入れます。そうすると、聞く側の相手もどんな内容について話し合いたいかが大変わかりやすくなり、感謝されます。ただし、2ページ以上に及ぶ長文にしてしまうと、メール連絡やレポートと変わらなくなってしまいますので、極めて簡潔にすることが大切です。ミーティングの前に相手が読み込まなければならないような複雑なものではなく、ミーティング中に何のことかがパッと分かり、話し合いや理解の助けとなるものにしないといけません。

1on1ミーティングアジェンダを作ることのメリット

1on1ミーティングで、このようなアジェンダを作ることのメリットははかり知りません。
自分自身の1on1ミーティングへの準備となる
まずは、何よりも自分自身のミーティングへの準備となります。そのミーティングで自分は何を達成したいか? 何を決めなければならないか? 上司から何の了解・許可を得る必要があるか? 部下に何を伝え、何を指示することがあるか? アジェンダを作れば、これらすべてが否が応でも明確になります。
同時に、ミーティング中に傍らに置いておくと便利な資料などもはっきりと分かり、さらに準備万全にできます。
時間配分も事前に把握できます。最悪の場合でも、最低限決めるべきこと、了解を得るべきこと、指示すべきこと、などをアジェンダの初めに持ってきて、必ず達成できるようにできます。
そして、これが最も重要なことかもしれません。この大切なミーティングのイニシアティブを自分がとることができます。相手に振り回されて、自分が得たかったことが何も得られないミーティングになるリスクを劇的に減らせます。

・相手から感謝され、相手に安心感も与えられる
このようなアジェンダを事前に送れば、相手の方には、僕がこの1on1ミーティングをとても大切に考えていることが伝わります。自分のことを重要視されて悪い気を持つ方はいません。相手の方は、こちらの真摯な態度に感謝してくれるし、相手の方も1on1ミーティング自体をいっそう大切に考えてくれるようになります。
また、事前に1on1ミーティングで話し合うことになる内容が分かるので、相手の方は大いなる安心感を持ちます。
このスタイルのミーティングをやり続けると、上司であれ、部下であれ、僕とミーティングをすると、ミーティング中に重要なアップデートを知ることができ、重要な決定事項を予定通り決めることができ、充実した時間を過ごせるようになると思ってくれるようになります。

・時間:効果を爆上げできる
以前に上司から、「(僕の同僚に当たる)別の部下との1on1ミーティングでは、近況や問題を支離滅裂に話し合うだけで、いつも時間をオーバーしても対策も何も決まらないまま終わってしまう。結局、ミーティングの時間中、何を話してのかよく覚えていないし、何も得られないまま時間オーバーしてしまう」などと愚痴を聞かされたことがありました。1on1ミーティングでは部下が抱えているチャレンジや問題点を把握するのも、上司の重要な仕事なので、このようなざっくばらんな会話で、部下の不安・不満・率直な気持ちを理解することも大切かもしれません。でも、上司から高い評価を得たいと思うのなら、このようなミーティングを続けていては難しいでしょう。
僕のアジェンダを使った1on1ミーティングでは、時間切れになることはほとんどありません。ほとんどの場合、アジェンダに書かれた項目をすべて伝えられ、決めるべきことを決めて、余った時間に少し世間話などをして、予定より早く終われます。使った時間に対して、得られる効果がとても高い充実したミーティングにすることができます。

・重要事項を共有し、ギャップを埋められる
チームで働いている以上、プロジェクトのゴールや重要なアクションアイテムを、上司や部下としっかり共有することが極めて重要です。特に僕のように転職して間もなくの場合、注意が必要です。陥りやすい失敗として、「過去の経験から独りよがりで、プロジェクトのゴールやアクションアイテムを自分勝手に決めつけ、それにまい進した挙句、実はそのゴールやアクションアイテムは上司が期待していたものとは全くかけ離れたものだった」のようなケースがあります。
1on1ミーティングの際に事前にアジェンダを送り、ミーティングでもそのアジェンダを使って話し合えれば、上司や部下と同じゴール・アクションアイテムを共有できているか? 何かギャップがあるかどうか? がより明確にできます。上司は、自身が考えている重要項目が、僕が作ったアジェンダに入っていなかったら、すぐに指摘することでしょう。アジェンダを作る前からコミュニケーションをしっかりとり、そのようなズレを作らないことが理想的ですが、100%完璧にすべてを共有することは難しいでしょう。そんな時、上司あるいは部下とアジェンダを見ながら、次の重要なアクションアイテムについての認識について何かギャップがないか?を確認し合うことで、大きなギャップを持ったまま、突き進んでしまうリスクを大きく減らすことができます。ギャップが見つかった場合は、ミーティング中に二人で確認しながら修正し、認識がしっかり一致したゴール・アクションアイテムを言語化することができます。


一度限りの他部門のキーパーソンとの1on1ミーティング

僕のように転職して新たな会社でスタートする場合、あるいは、自分が新たなプロジェクトに加わったり、自分のプロジェクトに新メンバーが加わる場合など、挨拶をかねて一度限りの1on1ミーティングをキーパーソンと行うことが多々あると思います。僕も今回の転職後、最初の3週間で10名以上の他部門のキーパーソンやコンサルタントと1on1ミーティングを行いました。このような1on1ミーティングは、上記の自分の部門内の上司や部下、同僚との1on1ミーティングとは、目的が全く違うので、もちろん進め方も違います。アジェンダなどは作らず、最も大きな目的は、相手の方の話をしっかり聴き、その方の人となり、仕事の内容、プロジェクトへの関わり、自分の部門への関わりなどを理解することだと思います。このため、このような1on1ミーティングでは、自分からミーティングの進め方を提案するより、相手の方の意向に沿うように努めています。僕の方から自己紹介を始める場合もあれば、相手の方が自己紹介や会社・プロジェクトを進んで説明してくれることもあります。

ただ、それでも事前にできることはあります。相手の経歴(入社日、部署、肩書など)は、通常、社内用のホームページなどで事前に確認できると思います。また、LinkedInで、今の会社以前の経歴なども確認できるでしょう。できるだけ、相手の方のことを知っておくことで、話が弾みやすくなりますし。相手の方も、自分との1on1ミーティングを大切に考えてくれて、事前に調べてくれたことに悪い気はしないと思います。

また、相手によっては、こちらのバックグランドをしっかり知った上でしか深く親密に仕事ができない用心深い方もいます。自分の自己紹介は、オープンにいつでも話せるようにしておくように心がけています。幸い僕の場合、アメリカで働くことを夢見て、日本から移ってきたことなどユニークに話せる部分があるので、自己紹介はしやすいです。また、今回の転職によって近い将来にカリフォルニアからボストンへ大移動する必要があるので、リロケーションを口実にして、相手の方の住んでいる地域や通勤事情など、普段はあまり立ち入れないプライベートな話へも入りやすい状況です。

他部門のキーパーソンとの定期的1on1ミーティング

業種によるかもしれませんが、同じ会社内でこれからプロジェクトを進めるにあたって、ずっと密なコミュニケーションをとっていく必要なあるキーパーソンは、自分と同じ部門・部署だけでなく、他部門にもたくさんいると思います。僕は、最初の一度限りの他部門のキーパーソンとの1on1ミーティングの際に、相手の方の仕事内容、自分の部門との関わり方なども、しっかり聴くようにしています。ミーティング後、今後の関わり方の重要度を分析し、重要だと判断すれば、2週に1度、月に1度などの定期的な1on1を今後もお願いするようにしています。最初の1on1ミーティングが終わったら、なるべく早くにThank-you emailとして、下記のような内容を伝えます。
・最初の1on1ミーティングで楽しく充実した時間を過ごせたことへの感謝
・今後も定期的に1on1ミーティングを持てたら、自分にとってはとても
 有用だと感じたこと
・なので、今後しばらく2週に1度、月に1度などの定期的な1on1を
 持たせてほしいこと
・(相手の方が忙しいことは分かっているので)今後の定期的な1on1では
 自分が事前にトピックを用意しアジェンダを送ること
・十分なトピックがない場合には時間を無駄にしないようにミーティングを
 キャンセルすること
・相手に別の重要な予定が入った場合は、自由に時間を変更してよいこと
などを伝えて、今後も1on1ミーティングを続けたい旨をお願いします。

このようなお願いをすると、僕が相手の方をとても重要な存在として考えていることが伝わるので、相手の方が嫌な気を持つことはまずありません。ほとんど100%快く今後も定期的な1on1ミーティングを引き受けてくれます。

こうなったら、こちらのものです。自分の上司や部下に行っているようなアジェンダを駆使した1on1ミーティングを継続し、信頼関係を築いていくことができます。


まだ、The First 90 Daysに従って、新たな会社へのトランジションを成功させる転職後90日間の挑戦の3分の1に差し掛かったところですが、今回紹介しました戦略的1on1ミーティングをこれからも続けて会社のキーパーソンとの信頼関係を築いていきたいです。





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