日銀トリック
以前にも話題にしたことだが、
昔、とある警備会社でアルバイトをしていた時、
ベテランの先輩が語っていたこと。
その先輩が現金輸送のために日銀へ行った時、
裏庭の一角に、一万円札が山のように
大量に廃棄されていたという。
喉から手が出るほど、拾って帰りたかったと。
そんな紙幣とはいったい何なのか?
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貨幣創造の「現場」は日銀ではない。
「現場」は、あくまで市中銀行である。
もちろん、貨幣創造のきっかけは、
政府による国債発行なのだが、
この段階では貨幣はまだ登場しない。
紙幣とは、ご存知「日本銀行券」であり、
「日銀の印刷物」である。これを束にして、
警備会社が現金輸送で市中銀行へ運び入れる。
さて、
たとえば、われわれが銀行のATMで
預金を引き出す。
預金を引き出すということは、当たり前だが、
「銀行預金」の減少であり
「現金」の増加(発生)である。
ここで初めて、市中銀行内に待機していた
「日銀の印刷物」は、「ただの紙切れ」から
「紙幣」に昇格し、市中に出回るのだ。(※)
日銀トリック
当たり前のようであるが、
紙幣を世に出す方法は基本、これだけだ。
市中銀行こそが、日銀とわれわれ実体経済との
橋渡し、インターフェースになっている。
(※ )逆に銀行に現金を預けると、
「銀行預金」が増加し、「現金」は消滅する。
紙幣の「形」だけ残るが「ただの紙切れ」に
降格する理屈だ。そうでないと、計算が
合わなくなる。だから、廃棄処分も
可能になる。
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では、市中銀行の銀行預金とは何か?
どこから生まれるのか?
そのきっかけは、国債と併せて政府が発行する
政府小切手である。
たとえば政府が◯◯企業に新規事業を発注する。
「学校を建ててよ」
「護岸工事たのむ」
「新規プロジェクトよろしく」‥‥‥みたいに。
そして、政府小切手を◯◯企業に渡すのだ。
◯◯企業は、これを市中銀行へ持ち込む。
すると市中銀行は、◯◯企業の預金口座に
指定の金額を打ち込む。
それだけだ。
銀行預金という貨幣が新たに創造された。
市中銀行にとって、政府小切手とは、
「貨幣発行許可証」なのだ。
・国債の発行:日銀当座預金の増加
・政府小切手:市中銀行預金の増加
この二つの手続きが同時進行でなされる。
どちらも、ただ数字を打ち込むだけだ。
(補足:よく誤解されていることだが、
日銀当座預金のお金が、われわれの実体経済
に流出することはない。日銀当座預金は、
・日銀
・政府の預金口座
・市中銀行内の特設の日銀当座預金口座
この三者の間をグルグル回っているだけの
いわば〈閉じた系〉だ。)
明治期以来ずっと、このやり方で、
わが国は、貨幣流通量を数百倍に増やしてきた。
実際に流通している貨幣の大半は銀行預金で、
現金は全体の10%もないらしい。
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お金を「富」だと思うと、
日銀が「富」の打ち出の小槌に見えてしまうが、
お金とは、われわれ国民が互いの勤労成果を
交換し合うための「整理券」
もしくは「貸し借りの記録データ」にすぎない。
以前投稿した、お金を理解するための記事↓
これも合わせて、ぜひ参考に‥‥‥。
「税は財源ではない」を理解するために
https://note.com/katoyamato/n/nbb44b0f982b9
2025.01.02. 一部補足