光文社古典新訳文庫についての認識を改めた
光文社古典新訳文庫という文庫がある。
名前は聞いたことあるけど読んだことないような翻訳小説が多数ラインナップされている。
カバーがマットな質感なのと、表紙がやたらゆるいのが特徴だ。
当該Wikipediaをご覧いただくとわかるが、この文庫は「カラマーゾフの兄弟」や「赤と黒」でやらかし、界隈に紛争を起こした。
そこで、私はよくわからないまま、光文社古典新訳文庫はダメ、漢はだまって岩波文庫と知ったかぶるようになった。
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ただ考えてみれば、翻訳の成否を議論できるのは、両方読んだ者だけである。
読んでいない自分があれこれと騒ぐのは愚の骨頂であった。
読んでみて、翻訳が気に食わなければ別のも読んだらいいのである。
古典なんて、こんなんなんぼあっても良いですからね。
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光文社は営業力がすごいのか、小さい本屋だと岩波文庫よりたくさんおいてあったりする。
私が通っているミニ図書館にも多い。
またAmazonでいうと、光文社古典新訳文庫はKindle Unlimitedの読み放題に多数入っている。
知ったかぶらずに容認すれば、読書の幅が広がるというものだ。
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そもそもひどい本を読むことは無価値なのかという問題もある。
ひどい体験というのは話のネタになる。
つまらない映画を見たという話だけで、2時間ぐらいしゃべられる人は多いだろう。
これが面白い映画の話になると、「おもしろかったよ、オススメ」の一言で終わってしまう。
よしんば光文社古典新訳文庫の翻訳がひどかったとしても、そういう死線をくぐってきたという体験は、読書人間としての懐の深さにつながるのではないかと思うのだ。
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