いかにして私はラーメンのことをフランス料理と呼ぶようになったか
紳士をひきつけてやまない食べ物としてラーメンが挙げられる。
もちろん私も大好きだ。
どれくらいかというと、健康診断の「お医者さんに健康について相談できるコーナー」で、開口一番「あんた、ラーメンやめなさい。早死したくなければね。」と言われたことがあるくらいにはラーメン好きである。
まだ何も言ってなかったのに。
当然ながら、紳士の嗜みとしてSUSURU TV.のYouTubeをフォローしている。
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生きるのが辛いときや、自主的な褒美が必要なときは、1人で、またはラー友と連れ立ってラーメンを食べに行く。
活力を充填するのである。
ところが我らが行くのは「家系・二郎系・蒙古タンメン中本・背脂チャッチャ系」であり、どれも不健康の極みみたいなイメージがある。
いくら「家系は海苔増ししてるから栄養バランス取れてる」とか、「もやしが大量に乗ってるからゼロカロリー」とか、「中本は野菜の甘みを感じる店だから」とか言い訳しても通用しない。
自然と自信がなくなり、いつしか卑屈になり、ラーメンのことを「食べる希死念慮」などと言うようになっていた。
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このままではラーメン屋さん・ラーメンファンの同志・ラーメンをおいしく食べている自分・SUSURU TV.と全方向に失礼である。
あらたな呼称を発明し、自分の中でラーメンを復権しなければならない。
私はラーメン屋に行って観察することにした。
すると店員さんがせっせと、炊いているスープの固形成分を手笊で濾している。
あれはフランス料理でいうところのパッセ、手笊はシノワではないか。
してみればスープはあきらかにフォンである。
ラーメンは中華だと思っていたが、さにあらず、日本式フレンチだったのだ…!
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これは発見だ。
「昨日ラーメン食べました」というとなんとなく不健康だが、
「昨日フレンチ食べたザマス」は優雅な感じがする。
私は決意した。
これからはラーメンはスープ・ド・ヌイユ、ラーメン屋はビストロと呼ぼう。
「アフター5ですか?
今日は、行きつけのビストロに行くんですよ。
ざっかけない店だが、ヌイユが絶品でね。
いっしょにどうです?」
なんともおしゃれさんではないか。
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【参考】