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今からでも遅くない、みんなでFIREをランティエと呼び替えようぜ
今もあるのか知らんが、以前「ランティエ」という雑誌があった。
ランティエとは永井荷風みたいな人のことである。
つまり労働をせず、地代とか、配当とか、利子とかで生活している階級のことだ。
今風にいうとFIREしてる人である。
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FIREという言葉が流行ったときに、ランティエで上書きしてやろうと思って、しきりと吹聴して回ったのだけど、結局ランティエは流行らなかった。
私のインフルエンサー・パワーの不足である。
一言で人を操るような人間でありたいものだ。
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日本に戦後、独特な文化(皆結婚とか、貧富問わず労働すべきという価値観とか)が生まれて、20年前ぐらいから徐々に消えていっている。
自分はそれが日本だけの話だと思っていた。
ところがFIREなどと言い出して、ホコリがかぶった古い階級を引っ張り出そうとしているのを見ると、同様の傾向というか、流れというか、倒したはずの大魔王が復活する感じというか、これは先進国と呼ばれていたことのある国全般に存在するのだろう。
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夏目漱石の「それから」に、現代と似たようなことが書いてあった。
六の四あたりである。
最低限の資本家が、二割三割の利回りを目論んで、なけなしの元手をボロい賃貸物件に投資しているという。
今でも市井の労働者は、お金ができたらまずは株を買い、もっとお金ができたら不動産か金を買う。
またボロ物件投資のYouTubeは大いに再生回数を伸ばしている。
そのボロ物件の住人が脳みそに投資して、その脳みそから利息を得ようとしてボロ屋に逼塞しているという。
これも資産のない人が、資格を取ろうだとか、ホワイトカラーになろうだとかしてあがいている感じが出ていて身につまされる。
というか主人公の代助くん自体が高等遊民というやつであり、みんな大好きFIREの先を生きる者であった。
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テクノロジーが進化して、いくらスマホだのAIだの電気自動車だのが幅を利かせても、人間の脳みそは5万年このかた変わっていないのだから、我々がハムスターのごとき回し車まわしに堕さざるを得ないのも道理なのだな。
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