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西田精麦さんありがとう、おいしい麦を売ってくれて

麦飯に至る道

飯が好きだ。
納豆飯などマジで美味い。
卵かけご飯も良いな。
ずっと食していられる。

そんな私だが、血糖値が気になるお年頃になってしまった。
一度に米を一合以上食べるとなんだか気分が悪くなる。
脅かされる健康。
ちらつく糖尿病の影。
深まる懊悩。

そこで最近は麦飯を食すようになった。
どこかで、麦飯は血糖値が上がりにくいという記事を読んだからである。

最初はおとなしく米に麦を混ぜていた。
しかし最近は麦100%で炊いている。
これも麦への愛ゆえである。
違うか。

麦を知る

麦飯一代男となった私は、麦に色々あることを知った。
知らなかったが麦飯の麦は小麦でもライ麦でもなく大麦であった。

一般的にスーパーではもち麦と押し麦というのが売られている。
これらはどちらも大麦で、もち麦は品種改良でもちもちの食感を獲得した大麦である。
押し麦は大麦を平たく加工して火が通りやすくしたものである。

なんかいろいろやらんとおいしくならんのだな、麦は。
こんなところにも麦業者のみなさんの努力・心遣いがうかがえる。

ただ単に麦と思って買っていた自分が恥ずかしい。
麦袋をちゃんと眺めてみる。
胚芽押麦と書いてあった。

そうか、私の麦は袋に詰める前にローラーで押しつぶしたやつなんだな。
しかも胚芽がついている。
そして食物繊維が玄米の24倍らしい。

レモン100個ぶんのビタミンCみたいなキャッチフレーズ。
健康の守護神みたいな風格を感じる。

麦と生活

私はフライパンで飯を炊いている。
米だとだいたい25分はかかる。

これが麦だけだったら10分弱で炊けてしまう。
時空のマジシャンかよ。
思わずツッコんでしまうぐらい早い。

理由を調べてみたら、押し麦は平たくする前に一度、火を通して柔らかくしているようだ。
アルファ米みたいなもので、一度火が通っているからすぐ炊けるのだ。
科学である。

あと麦は炊くとめっちゃ増えるので、米よりもオトクな気分になる。
麦100gで米一合と同じぐらいの量になる。
錬金術である。

麦雑話

歴史的フレーズとして「貧乏人は麦を食え」というものがある。
麦飯食ってるよと父親に報告した際、真っ先に返ってきた答えがこれであった。

池田勇人元首相がまだ蔵相だったときに、
「所得に応じて、お金がある人は米を食う、お金がない人は麦を食うというような、自然な経済の原則に沿いたい」
みたいなことを喋った。

米価が高騰しているけど、価格統制はしたくない、的な意味のようである。

そしたら
「じゃあ貧乏人は麦を食えということか!」
と周りが炎上、新聞も騒ぎ立てたために生まれた台詞らしい。

当時の人には「米最高! 麦は貧乏人の食い物、くさいし」という認識があった。

一方、宮本常一「忘れられた日本人」に出てきた農村の人によれば、
「戦前は粟を食っていたが、戦後は役所の人の指導のもと、米にひき割り麦を混ぜて食うております、米だけだと健康に悪いそうなので」
とのことであった。

農村の人としては粟より麦飯のほうが上等だったかもしれない。

ひき割り麦というのは押し麦と似たようなもので、炊けやすいように大麦を石臼で粗くひいたものらしい。
島崎藤村「破戒」でも、主人公が、共に苦学した友人のことを「いっしょにひき割りの臭いを嗅いで育った仲」などと呼んでいたと思う。

自分は鼻が悪いからか、麦飯を臭いとは思わない。
しかし親父は麦飯が嫌いで、臭いからだと言っていた。
人によっては受け付けないのかもしれない。

なんだってすこし個性的なほうが魅力的なものである。
私はこれからも麦LOVE勢でありつづけるだろう。

麦礼

私がいつも買っている麦を精麦してくださっているのは、西田精麦さんというところである。
熊本にある。

本稿は西田精麦さんに捧げるものである。
いつもありがとうございます。

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