私はALPS処理汚染水の海洋放出に反対です。
私は少なくとも、過去に生じた公害問題に取り組んだ市民運動や、国内外の開発による被害に取り組んだ市民運動の先達たちの話を聞き、その教訓を引き継いだものとして、今回の福島第一原発事故による汚染水をALPSで処理をしたとされるもの(以下、ALPS処理汚染水)の海洋放出には賛成できない。
今回のALPS処理汚染水の海洋放出に際しても、海洋放出を正当化する立場から多くの科学的根拠とされるものが提示されるが、これは、過去の公害や開発による被害の際も同様で、科学的根拠とされるものは常に、公害を否定したり開発を推進する立場で「利用」されてきたし、実際に被害が生じても、その事実を否定したり、原因は別にあるのではないかと疑義を生じさせるために用いられて、結果、被害の拡大を招くということが多くあった。
また、最初から「風評被害」と喧伝するのもおかしなことだ。これも、仮に実害があっても言い出せない雰囲気を作るプロパガンダとして機能する。同じようなことは、過去の公害問題や開発被害においてもあったことが知られている。
ALPS処理汚染水を巡って、皆が「科学的根拠」の正しさに躍起になり、それがあればなんでもできる、と言わんばかりである。しかし、このことで影響を受ける人々の人権、権利を基盤に考えてみれば、政府の単なる説明だけで十分な当事者のコンセンサスを得られたわけでなく、被害があれば金銭賠償するだけというのは、そもそも当事者の人々の尊厳と権利を踏みにじる行為だ。ちなみに、金銭賠償では人の命や健康、損なわれた生活を取り戻すことはできず、上述の「過去」の公害や開発の被害で未だ、多くの人々が苦しんでいることも付言しておく。
ゆえに、人々の命や健康、自然環境をあたかも「実験台」にして、何かあれば金銭を宛てがってやればいいではないか、とでも言わんばかりの今回の海洋放出には、全く賛成することができない。