惑星コンビニ
コロナ禍での入院生活は行動範囲が制限されている。
自由に出歩けるのはエレベーター前のロビーまでで、他の階には17時以降にしか移動することができない。
出歩くにしても特に目的なんてないから、運動不足を解消するために毎夜院内に2つあるコンビニをぶらぶらと巡っている。
同じようなルーティーンを持っているであろう人達と毎回すれ違って通り過ぎていく。
昼間は大勢の人がいる待合室で、パジャマ姿でぽつんと一人お茶を飲む人。
カフェ席でせわしなく色んな人に電話を掛けたり切ったりしてる人。
両手に杖を持って廊下を往復して訓練してる人。
この中の誰とも会話したことないけれど皆知っている。
向こうも僕の方をゆらゆらとコンビニを往復する負傷兵みたいなやつくらいに思っているだろう。
それは別に何も特別なことではなくて、普段の生活でも色んな人と大した干渉もなくすれ違っている。
ただあまりにもガラガラで非日常な空間だったから、惑星同士が引力でバランスを取りながら運動し続けるみたいに意外とウチらコミニュケーションをとってたんじゃね?と思えてきた。
そんなことを考えていたら明日、退院することが決まった。
一足先に惑星軌道から抜け出すことになった。
これがきっかけで宇宙が崩壊してしまうかもしれないな。
この生活ですれ違ったすべての者たちに幸多かれと祈った。