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合理的配慮って?
一昨年、第30回社会福祉士試験において、下記の問題が出題されました。
問題文です。
問23
「障害者差別解消法」(2013年(平成25年))及び「基本方針」(2015年(平成27年)2月閣議決定)に規定された行政機関等及び事業者による社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的配慮の内容に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 配慮の対象は、いわゆる障害者手帳の所持者に限られる。
2 障害の種類ごとに定められた配慮事項の遵守を義務付けている。
3 障害者から社会的障壁の除去を必要とする旨の意思表示があった場合、その実施に伴う負担が過重でないときは、配慮が求められる。
4 社会的障壁の内容は、具体的場面や個別的状況を考慮して決めてはならない。
5 障害者と障害者でない者とを比較して決めることは禁止されている。
障害者差別解消法【合理的配慮の提供等事例集】という平成29年11月に内閣府が作成した資料に
『障害者差別解消法(第7条第2項、第8条第2項)は、行政機関等及び事業者に対し、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮を行うこと(合理的配慮の提供)を求めています。』
とあり、正解は3。
3 障害者から社会的障壁の除去を必要とする旨の意思表示があった場合、その実施に伴う負担が過重でないときは、配慮が求められる。
もし実際、法文の上っ面を舐めただけなら、
『障害者から意志の表明がない場合』
『その実施に伴う負担が過重な場合』
は、行政機関等及び事業者は
『配慮をしなくてもかまわない』
違法ではないかもしれませんが、当該障がい者にとって、非常に不適切な解釈を招く危険があります。
障がいを持つ方が、「何が自分にとって不都合なのか」を理解して、現実にある社会的障壁の存在、除去方法、除去を必要としている旨の意思表示に至るまでのプロセスに、何らかの『合理的配慮』が必要なのは明らかです。
順序として、その実施に伴う負担についても、過重にならない実施方法、他の方法も併せて検討する『合理的配慮』が必要です。
また、『合理的配慮』について誤解されやすいのは、この法律の条文(障害者差別解消法(第7条第2項、第8条第2項))は事業者に向けたもので、
障害者に対して、事務・事業を行うに当たって『合理的配慮』の提供が義務づけられており、その義務の範囲を示している
のであって、
障害者差別解消法に盛り込まれた障害者への取り決めが、『合理的配慮』そのものではありません。
この法律は『ソーシャルインクルージョン』という概念による『合理的配慮』の在り方全てを示してはいません。
むしろ義務の範囲(上限)を示しているのです。
本来『合理的配慮』は障害の有無によるものではありません。
全ての人の人権を守るための、個々に生じる社会的障壁を取り除く調整や変更なのです。
ですから、この問の5の選択肢はあながち間違いとは言い難い引っかけ、あやふやこの上ない設問です。
日本が批准している『障害者の権利に関する条約』で『合理的配慮』は、
「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう」(出典:外務省ホームページ障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)
ここで、障害者からの意思の表明が常に記されるのは、この条約の成り立ちに、障害者の人権について決めるのに障害者(当事者)を抜きにするな!という主張からきています。
くといようですが、意思表明が無かったら何もしなくて良い、のではありません。
また、残念ながら、今の日本では
個々に、それぞれの特徴により、それぞれの場面で、どんな困難があって、どういう調整・変更をしていくか…
とはならず、
障がいが、有るか、無いか? 重さは?…
そして
『障害者として認定されているかどうか?』
が、最重要視されています。
『安全のため』なんて言葉を使いながら、でも本当は、健常者の邪魔にならないように『障害者』という別枠に入れておけばいい…
『触穢思想』は、今も顕在なのです。
結果、認定されていない人、グレーな人は、相も変わらず、邪魔者、厄介者のまま。
『ソーシャルインクルージョン』
まだまだ、遠い話のようです。