亀山トリエンナーレ2022 無事に展示を終えることができました!
三重県亀山市で今年10月〜11月に行われました、亀山トリエンナーレ2022に、作品を展示させて頂きました。その振り返りを行います。(作品やキャプションに対する説明は、作品を見て感じて頂きたいためここでは書きませんので、ご承知ください。)
まずは展示の様子をご覧ください。(※写真の無断使用を禁止します。)
作品のタイトル:『HARMONY』
キャプション:コロナ禍になり2年以上が過ぎ、私たちは本当に多くの恐れを耐えてきました。そして今、世界に目を向けると人間が人間を傷つける行為が行われています。ただ、それは今に始まったことではなく、私たちが生まれるずっと前から世界の色んな場所で行われていたのです。
だけど、私たちはこのコロナ禍でも、誰か大切な人や自分自身の無事を心から願っていたはずです。だから、困難な時でもきっと人間は、人や自分を大切に想える愛のある生き物ではないかと、私は思います。人が自分や相手を傷つける時、大切に想う気持ちをどこかに置いてきてしまっているんじゃないかと思うのです。
この亀山の地で生まれた飯沼慾斎さんは、人々の暮らしのため、未来の私たちのために、晩年に非常に多くの植物を、正確に描き表しました。私は、これまで雑草を描き続けてきましたが、生きている雑草と向き合う時間は、癒され、心がとても満ちていくのを感じ、雑草が私の全てを受けいれてくれているような、そんな感覚になるのです。
私も飯沼慾斎さんのように雑草を丁寧に描くことにより、雑草の温かな想いを描き表せないか試みます。
(参考文献)
○生誕230年 学び続けた飯沼慾斎 〜日本植物学の夜明け〜(大垣市・大垣市教育委員会、H25年)
○近代植物学の開拓者 飯沼慾斎(大垣市、H24年)
こんな様子で展示を行いました。それでは、振り返っていきます!
今回の展示で、飯沼慾斎さんという方を知り、私にとって貴重な出会いでした。
私は雑草をデッサンするとき、雑草の生きている場所で描くようにしています。鉛筆でデッサンをするだけでも何時間も掛かるため、雑草と長時間も対話しているような感覚になります。キャプションでも述べたように、その時間はとても豊かです。そして吹いてくる風や虫がいることに気付くなど、どんどん感覚が研ぎ澄まされていくのを感じます。きっと、飯沼慾斎さんも植物を描きながらこんな感覚になったのだろうと想像しました。飯沼慾斎さんは晩年に多くの植物を描いています。人生の色々なことを経験されたのち描かれたのだろうと思うと、今の私よりもっと多くの事に気付き、様々なことを思い考えていたのかもしれません。私は歳を重ねたら、どんなことを感じながら描くのだろう…?と、未来の自分が少し楽しみになりました。
そして、今回の制作を行う中で、私にとって大きな気づきがありました。
私は長らくボタニカルアートを描いてきましたが、発表する場は現代アートを選びました。でも、現代アートのフィールドで発表をしていっていいのか常々疑問を感じていたんですね。なぜかというと、私の絵は一見するとボタニカルアートのように見えるからです。(ボタニカルアートとは、ありのままに植物を正確に描くアートで、植物図鑑に載っているような絵をイメージすると分かりやすいです。)私は、植物のつくりを表したかったのではなく、植物が発しているメッセージのようなものを表現したく現代アートを選びました。(でもはじめた当初はこの気持ちすら気づいておらず、やっていく中で気づけた思いです)
ただ、私はボタニカルアートのように雑草をありのままに描きます。写実的に描くためには、その対象物をよく観察しなければ描けません。描く行為は何時間も掛かります。この長い時間があるからこそ、雑草の放つメッセージのようなものを受け取れているように感じるのです。だから、写実的に描きます。そのため、現代アートなのに「そのままだね」と言われることがあり、結構傷つきました。(苦笑)
そして、今回トリエンナーレでお世話になったキュレーターのCake Haraさんとのやり取りの中で、こんなことを言われました。
複数の人が対象物をよく見て描くと、人それぞれ発見する事が違う。その差は多様性の根源ではないか、と。
そうであれば、私の目で雑草をよく見て、私が写実的に描くからこそ表現できる事がきっとあるはずだ。そう思ったら、この選択は間違いでは無いと自信が湧きました。
そして、今回も制作にとても時間がかかりました。他の予定もあり、気づいたときには過密スケジュールとなっていました。そのせいか、制作期間中にひどい偏頭痛にあい、また搬入が終わってからもしばらく体調を崩してしまいました。
良い作品を作る上で、もしかしたら健康は関係ないのかもしれません。ただ、私は自分が元気で心地よく描きたいですし、おばあちゃんになっても制作をしていたいため、今から無理をしてはいけないと、つくづく考えさせられました。休むことも制作の一つ!ということです^^
そして当たり前ですが、絵を描く以外にも、どういった展示をするか(展示台を使用するか?大きさはどうするか?照明は必要か?などなど)を考えなければなりません。今回展示した、加藤家屋敷は画鋲等は一切使用禁止であったため、その辺りもどう対応するか。そして、これらをどう運搬するか。費用についても考える必要があります。苦手なところであるので、かなり悩み時間を消費してしまいましたが、家族や知り合いの協力を得て、なんとか完成、搬入搬出も無事に終えることができました。ご協力くださった皆様、ありがとうございました!!
そして、少し余談ですが、今回使用した水彩紙はアルシュのロールを使いました。
初めてロールを使用しましたが、これがすごく取り扱いが大変でした…汗。
丈夫な水彩紙がロール上になっているため、跳ね返りがひどく、紙を裁断し平らにするだけでも一ヶ月ほどかかりました…。もし使われる方がおりましたら、時間に余裕を持って作業するのがポイントかと思います!
最後に、ご支援・ご協力くださいました全ての皆様、大変お世話になり、本当にありがとうございました!!心から感謝申し上げます。
今後の展示予定もちらほら決まっており、ぜひまた私カトウマキの作品を観てくださると幸いです!よろしくお願いいたします。
亀山トリエンナーレ2022
2022年10月30日(日)〜11月19日(土)
ホームページ:http://kameyamatriennale.jp