Art Outbound Digest vol.22 「日本の伝統美術を本気で現代アートに持ち込むマーケティング」
今日は、日本人アーティストのアウトバウンドのマーケティングの戦略について考えてみたいと思います。
日本の美大芸大は卒業までは蝶よ花よと褒めそやしてもらえるが
この2-3月、もしかしたら皆様のSNSのタイムラインを国内有名美大・芸大の卒展の画像が占拠しておられたかもしれません。
日本人がツイッター大好きすぎるのか、学生スポーツみたいなものなのか、ともかく欧米の有名美大芸大の卒展の画像なんぞほっとんどSNSには流れないのに比べると、すごいです。日本。
良いことだと思います。とにかく露出の機会はあった方が良い。
その頃、俺は彌彦神社の宝物殿にいた
でですね。
ちょうど3月の終わりかな、私、新潟県に行っていたんです。で、彌彦神社にも参拝して、ついでに宝物殿を見てきました。
これが意外に面白かったんです。
1階は主に郷土出身のアーティストが奉納した作品の展示です。画壇系の洋画や彫刻が多かったです。画壇系の抽象絵画や抽象彫刻もいっぱいありましたよ。そんな有名な人たちじゃないんですけど、作品だけ見たら立派なもんです。これは本当に。
考えてみたら画壇の画家たちもフォーヴィスムは大好きで、そっち経由で輸入された抽象絵画を独自に発展させてきていますから、現代アートとはいえないけれど優れた20世紀抽象絵画はいっぱいあります。むしろヘボい現代アートの抽象絵画よりよほど画面構成や色彩に優れたものが画壇洋画にいっぱいあるんだなあという発見ね。
足りないのはコンテクストだけじゃないのかこれ、と。
そのうち突然の画壇ブームが外国で巻き起こるかもなあ、ともちょっとは思いました。
少なくとも1枚の画面として見たら、春先に大量に「これすごい」ってツイートされて回ってきた国内卒展の学生たちの絵より良かったです。じじむさいのかもしれませんけどね、私の感覚が。青春の滾りと迸りみたいな絵にはもう、さほど惹かれません。
とまあ、ここまではマクラです。
こっからが本題。
本題は2階にあった。
2階はですね、もっと古いものがありました。1057年に源義家が奉納した鞍とか。
刀剣類とか。仏具とか。神仏習合時代に使ってたんでしょうね。
このブログに色々出てますね。
まあ、こんな感じのところです。彌彦神社は歴史上何度も火災や略奪でやられてるので、あんましお宝は残ってません。
問題はそこじゃなくてね。
私はここでその、かろうじて残った工芸品を見ながらずっと考えてたんですよ。
今、日本の現代アートでこういうところをリソースにしているものってどれくらいあるんだ? って。
マンガやアニメも良いけれど、歴史をディグっているのがトップティアだけってのはあかんじゃろ
いや、問いの形を別のもんにした方が良いな。
大和民族のアーティストが作った現代アート作品をポンと大和民族以外のオーディエンスの前に置いて話をする。ほほう、これはどんなコンセプトで作られたんですか? なるほど、日本のマンガやアニメのキャラクターをそうやって取り入れているわけですね。ところで私、古い方の日本文化も大好きなんですよ。先週は鎌倉に行ってきました。前回日本に来た時は奈良に行きました。国立博物館すばらしかったです。
ところでこちらの作品は、そういった古い時代の日本の文化とはどうつながっているのでしょうか?
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どうです? 思いつきます?
あるいは、あなたの絵、あなたのオブジェ、あなたのメディアアートはどないです?
あるにはあるんですよ。
杉本博司の護王神社とか。
村上隆も2005年の「宇宙の産声」あたりから仏教美術の影響を取り入れていって、2015年の「五百羅漢図」はその頂点になりました。私も見に行きましたよ。
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