Art Outbound Digest Vol.11
1:東京芸大の油絵科の二次試験問題
先週バズってたネタを拾ってみます。令和2年度の東京藝大の油絵科の二次実技試験が3日間で「絵を描きなさい」だったという話。
これについての日本語世界の反応は「さすが芸大」「よく出来ている」など、肯定的なものが多かったようです。
一方で、欧米の美大の入試との違いすぎる発想に疑問を持つ人もいました。
ドイツで活動している現代アート作家の荻野さんの意見。
たしかにそうなんです。
こちらはロンドンにあるゴールドスミス・カレッジという、超名門大学のFine Art専攻BAの入試。どれだけ名門かというと東京藝大なんかもう比較にもならないくらいとだけ。ダミアン・ハーストとか出てるとこですね。
まず国際バカロレアでAAA取ってきてくださいという
更にこちらのコースも終えてきてねと。いい成績で。
Art and Design Foundation diplomaというのはUKのあちこちの大学で開設されている1年間のコースで、まずはここで実技の基本を一通り身につけて来てってことですね。その名の通り。
例えばこういうの。これはUniversity of Arts LondonのADFコース。
具体的に何をやるか。
Diagnostic modeとSpecialist modeを選べて、後者は更に
という具合にコースが細分化されている。
なるほど面白いですね。ちなみに息子が通っている都立産業技術高等専門学校も1年次は基礎を幅広く学んで、2年に上がる時にどんな専攻かを選ぶカリキュラムでした。
日本だとこの部分が美大受験予備校なんですよね。
デッサンとか死ぬほどやらされるらしいですが、なんかもうそこからして違うジャンルの勉強だなあ。もちろん絵描き職人の育成なら死ぬほどデッサンは正解なんでしょうけど、今は手描き以外の絵描きもいくらでもアリ。AI支援のドローイング/ペインティングツールはこれから凄い勢いで発展するでしょうから、まあ手描きの鬼になるのも良いですけど
「それって19世紀の半ばくらいまででヨーロッパでは終了した発想では?」
というのは思います。本物そっくりに描けるアカデミズム絵画は写真の出現で終わり、印象派から後期印象派、野獣派やキュビスムの時代そして抽象絵画やコンセプチュアル・アート、リレーショナルアートなど、どんどん「手先も大事だけどアタマもね!」の世界になっていったわけですよ。
もちろん、イメージした画像を「これですこれ」というようにして現実化する手先の技も引き続き必要なのは間違いありませんが、UKの入試のようにそれはあくまでも入学前の予備コースでやっておいてくれれば良いよ、くらいの扱いの時代なんだと思います。
なにしろ現代アートのルールを作っているのは欧米ですからね。
そして最後はこれ。
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