Art Outbound Digest Vol.3 2022/09/27
雑感 NFTアートについて
今回はNFTアートについて。
日本でNFTアートがバズったのは去年の9月に草野絵美の長男の小学生がZombie Zoo Keeperとして発表したNFTアート作品がきっかけでした。
ちなみに草野絵美のツイッターアカウントのフォロワーが3.4万人(2022/9/25時点)。
父親も著名人で大学の専任教員。その辺はあまり語られていませんが、万単位のフォロワーがいる、そしてビジネスドメインも同じツイッターアカウントからの援護射撃が最初からあるプロジェクトがNFTアート投機ブームのピークに上手くマッチして数百万円まで(一瞬)高騰した、というのが実情だと見ています。
あ、毎度の話ですがビジネスなのでチャンスを掴んで80万円の売却益を手にしたのは立派な成果であって、個人的にはもうちょっと稼いで所得税を納めるとこまで行ってほしかったです。
親の社会資産を活用したスタートアップなんてどこの業界でも当たり前だし、ちょっとした地主の子供で生まれたら、生まれた瞬間に人生勝ち確定だったりもするんで、Zombie Zoo Keeper氏にはもっともっと作品を売って稼いで外貨獲得していっぱい納税してもらいたいです。
ですが、ZZK氏のインスタフォロワーが1644人(2022/09/25時点)
最近の販売価格は300ドル台後半。今のレートだと5万円台ですね。
では、日本国内のウェブメディアでは最もバズれるアートコレクティブのChim↑Pom from Smappa!Groupが発表したNFTアートはどうでしょうか。
日本語ウェブメディアでは目一杯の援護射撃がありましたが。
全く売れてません。最寄り駅まで1日1本しか走らないバスで3時間かかる山の中の分譲地みたい。山ヒルやマダニやクマが出ないだけ安全ではありますが。
何でこうなるのか。
理由は幾つもあります。
まずNFT自体が暗号通貨ブームに乗り遅れた人たちのためのセカンドチャンスに見られて、瞬間的には投機マネーが流入したこと。
しかしながら、NFTってのは作品の所有権や独占的利用権じゃないですからね。SBIアートオークションのNFTアートセールはNFTアートと言いつつも実際売っていたのは所有権や独占的利用権であって、NFTは従来はペーパーメディアで出されていた譲渡証明書代わり。
ZZK氏も結局はエディション付き・無しのアクリルプレートを売ってマネタイズする流れ。つまりリアル空間で所有できるものです。
結局のところ、何かの表現を所有するということに人がお金を払うのは、絵画のように複製不能なものであれば現物を自分の管理下に置ける権利に対して。複製芸術なら最低でもその利用権(CDやBDやストリーミング)。ネット上に転がっていて誰でもいつでも見られるようなものにお金を払うのは、それがどこかのバカに近い将来転売出来て差益を抜ける期待がある時か、作家への投げ銭の手段がそれに限られているか、それくらいでしょう。
そして、我々にとってはもっと大事な話。
ZZK氏はアーティスト・ステートメントもなにも発表していない、どちらかと言えばpixivあたりのウェブ絵師に近い存在ということです。NFTというツールが表現行為の中でどんな意味や役割を持つのかを考えて自分なりの答案を出している、というわけではない(それはそれで良いのです。問題ありません。単に我々のスコープ外の活動ということです)。
その辺を一応はケアした村上隆のNFTアートはさすがに平均1800ドル前後で取り引きされていますが(2022/09/25時点)、お値段はやはり右肩下がり。ちょっと引いた目で見れば村上隆の花柄が付いたヴィトンのバッグのバッグ抜きバージョンみたいなもんなんで、所詮はアーティストグッズですよこれも。
なので、投機筋が剥がれ落ちていけば、投機筋相手の「NFTアート」は遅かれ早かれ終わると私は予想します。表現そのものが創作の目的になっていないNFTアートはね。
NFTアート以外の活動での知名度が高い人ほど値段は粘るでしょうが、まあ時間の問題かと。少なくとも投機目的では手を出さない方が良いです。NFTアートを買っていいのは、その作品に心底惚れ込んでNFTに絶対に自分の名前を刻みたい時か、作家に投げ銭してあげたいときだけ。でもほとんどの作家はデジタル作品以外にリアル作品も売ってるんだから、そういう動機で買うならそっちですな。
ではNFTはアートでは用無しなのか?
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